05
「どうだ?サンダース。超楽しいだろ?」
「うん!スッゲー楽しい!」
「そう。良かった!」
キャッチボールを終え、俺はある確信を持った。
サンダースはベンチに座る。
「これ飲むか?」
俺はミックスオレを買ってきた。
「どこかでやってたの?」
「部活でやってた。ポジションはセンター!」
「やっぱりね。」
俺はボソリと言う。それでも、サンダースの耳には届いていたらしく、
「えっ?」
聞き返した。
「今日、201番道路で助けてくれたのってお前だろ?」
サンダースは動きを止めた。
まさに「図星」だと言わんばかりに。
「‥そう。俺だよ。どうして分かったの?」
「捕球の瞬間さ。下半身のプレスが強くてね。
広く動けてたから、あの崖位だったら跳べるかなって思ったてね。」
「さすがプロ野球選手。視るところが違うね。」「いやぁ。それほどでも‥」
ほめられてちょっぴり嬉しい。
それはそれで置いといて、話を続ける。
「お前みたいな選手を探していたぜ。」
そう言って、フローゼルは真新しいユニフォームを取り出した。背番号は8。
理由はもちろんセンターだから。
「‥へっ?」
サンダースはちょっと驚いたようだ。
目をまん丸にして、いかにも「何で俺なの?」って言いそうな顔をした。
そりゃそうさ。話が唐突過ぎるからな。
「そんな‥どうして僕が?」
「お前の《すばやさ》が俺たちのチームには必要なんだ。」
「す‥《すばやさ》が?」
サンダースはまだ驚きを隠せないようで、言葉が震えている。
「まあ、これ飲んで落ち着け。」
さっき買ってきたミックスオレをイッキ飲みして、
「ふう〜〜〜〜〜〜っ」
大きな深呼吸をついた。
「で、何で俺なんかが?」
「お前の持つ《すばやさ》、つまり《機動力》が《ミオスターズ》に必要なんだ。」
「《機動力》?」
だんだん落ち着いてきたようだ。オロオロしている目から、いつしか真剣な眼差しに変わっていた。
「ただでさえ打てないチームなのに、出塁できても後が続かない。ならば、盗塁して、バントして、きっちり点をとる野球をすることが俺たちが勝つ為に必要なんだ。」
「しかも、落下点にしっかり裏から入れている。
裏から入れているということは、そのあとの安定した送球と、守備でのリズムにつながる。
つまり、安定した守備を期待できるってこと。
そんなやつにセンターラインの要になってほしい」
「‥‥‥‥」
サンダースは黙っている‥いや、涙を流している。
「‥‥こんな俺でも、チームの役にたてるなら。
その話、喜んで受けさせていただきます!」
そう言うと、フローゼルが持つユニフォームに袖をを通した。
『やったあ!』
俺とフローゼルはハイタッチを交わした。
「よし!サンダース、お前は《ミオスターズ》の一員だ。バックホームの送球、期待してるぜ!」
「これから辛い事があるかもしれない。
でも、一緒に乗り越えて行こうぜ!よろしくな!」
俺たちはガッチリ握手した。
「‥さあ、家に帰ろう。みんなが心配するから」