02 試合開始!
「大変長らくお待たせいたしました。本日の試合、《コトブキファイターズ》vs《ミオスターズ》の試合、まもなく開始でございます。まず、守備につきます‥‥」
スタジアム全体にアナウンスが鳴り響く。何度でも言うが、開幕したんだと実感する。
「ボールバック!!」
俺は全力で叫んだ。そしてセカンド送球、1.2の‥
「《ジャイロボール》!」
ボールはリフィルに向かって一直線。
「《エナジーボール》!」
スゲエ。あんな使い方あるんだ‥。じゃなくて!
「1回!3人で抑えるぞ!」
「1回の表、《コトブキファイターズ》の攻撃は、1番 センター ロズレイド。」
「プレイっ!」
アナウンスと審判の声が響く。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
まず初球の入りかた。これは、ピッチャーが一番投げたい球を要求する。それでさい先よくストライクをとれれば流れは掴んだも同然だ。
――アウトコースにスライダー。細工は要らないぞ。
俺の出したサインに頷くエド。振りかぶって一球目を‥投げた。
「《どくづき》‥うゎっ!」
以外に手を出してくれた。『こつん』と先っぽで引っ掛けた音。これを慌てずにエドが処理する。ピッチャーゴロで1アウト。
次のバッターはリーフィア。リフィルと同じ攻めかたでいいかな。
――外いっぱいの《シャドーボール》。ボールになって構わない。
長身のエドの真っ直ぐは変化球派のピッチャーにしてはなかなか速い。そんなピッチャーに対してリーフィアは予想通りセーフティバントを仕掛けてきた。
「《でんこうせっか》!」
ボールをうまく転がしてリーフィアはベースに向かって一直線。しかし、転がしたところは
キャッチャーの目の前。俺は落ち着いて処理をする。
「《ジャイロボール》!」
ゴンのミットをめがけて送球する。
「アウト!」
審判のアウトコールが高々と響く。これでツーアウト。
「3番 キャッチャー フシギバナ。」
このバッターは大きな一発が怖い。
――様子見だ。外の真っ直ぐ。
これでストライクをとれれば万々歳。エドが投げる球に対してフシギバナは‥
「《ギガインパクト》!」
カキーン!
打球は高々と上がった。
「センター!」
「任せろ!」
流石ボルト。すぐに落下地点に入って捕球した。センターフライでスリーアウト。たった3球で1イニングを終わらせた。
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「よくやった!」
「この流れ切らすなよ!」
口々に皆エドを誉める。
「さあ、今度は攻撃だ。大量点を狙うな。」
『はい!』
監督からの指示。そう。うちのチームはホームランバッターばかりが揃っている訳ではない。だから大量点は期待できない。故に1点をとりにいくのだ。
「1回のウラ、《ミオスターズ》の攻撃は、1番 サード ピカチュウ。」
そうこうしているうちにライトが打席に入っている。
相手ピッチャーはダーテング。投球練習を見る限り変化球に絞ったほうが良さそうだ。
初球、ダーテングは期待通りのカーブを投げた。しかし、わずかに外れてボール。
続く2球目も変化球。今度は落ちる形の球のようだ。これにも手を出さずボール。
3球目。ダーテングに焦りが見えてきた。
「《タネマシンガン》!」
ダーテングが投じたのは真っ直ぐ。《タネマシンガン》で威力も上がっている。しかし、ボールが浮いている!
「もらった!《アイアンテール》!」
ジャストミート!
打球は左中間にぐんぐん伸びていく。センターのロズレイドがやっとのことで追い付くと、ライトは既に2.3塁間を走っていた。楽々スリーベース。いきなり先制のチャンス!
こうなると、得点パターンは固まってくる。監督はオールの打力を信頼しているのか、サインは出さない。
ダーテングは2球目を投げる。
「《つばさでうつ》!」
スカッ!
初球は大胆な空振り。でも、タイミングはバッチリだ。
続く投球。ボールは真っ直ぐ。だが‥
「《つばさでう》‥危ない!」
咄嗟の判断で技を止めた。
ボフッ、と言う音。
「デッドボール。」
「へっ!んなもん痛くも痒くもねえよ!」
オールはそう言って1塁ベースに向かった。
ノーアウト1.3塁。絶好のチャンス。ここでバッターは3番のゼル。監督は勿論ノーサイン。
初球だった。ど真ん中の《タネマシンガン》の真っ直ぐ。狙ってたのかは分からない。でも
「《きあいパンチ》!」
カキーンっッッ!!!大きな当たり。
打球はセンターの頭上をぐんぐん伸びていく。ぐんぐん伸びてバックスクリーンに飛び込んだ!先制のスリーランホームラン!
「ウォッシャア!!!」
ベンチのボルテージは試合開始早々MAXだ。
「OK!ナイスバッティング!」
俺とゼルはベンチ前ではいタッチを交わす。
「さい先のいい新生《ミオスターズ》だな。」
「それはお前が活躍してからだにとっとけ!この回絶対お前に回るんだからな。」
危ない危ない。すっかり忘れてた。ヘルメットを被ってネクストバッターズサークルからゴンの打席を見守る。
初球、カーブが良いところに決まりストライク。
2球目はシンカー。バットが空を切る。あっという間に2ストライク。
運命の3球目。ダーテングが勝負しようとしたたまはアウトコースの真っ直ぐ。
「《きあいパ》‥うゎっ!」
完全にタイミングをずらされ、空振り。これで漸く1アウト。
「ごめん。」
「良いって!次の打席に魅せてくれよ!」
すれ違いざまにお互いに声を掛け合う。
「バッターは、5番 キャッチャー バクフーン。」
俺の名前を呼ぶアナウンスが鳴り響く。俺はゆっくり打席に入る。