09
「実は‥皆が戦っているのをちょっと見たんだ。そ
その‥俺、一度だけ目をさましたんだ。ちょうどヒートが進化する時だったかな。そのとき感じたんだ。コイツ俺の為に戦っているんだって‥」
ソウは右手でヒートの頭を撫でる。
その手にはもうすでに涙がこぼれ落ちていた。
「ヒート、お前には本当にすまないことをした。
ごめんな。きっとバチが当たったんだ。
初めて会った時、俺は正直お前が何を言ってるのかわからなかった。正直しつこかった。で、かっとなって手を出してしまった‥
本当にごめんなさい」
「ソウ‥そんな、泣かないでよ。あのときは僕も悪かったよ。しつこくし過ぎたと思ったよ。あそこまでされるのも当然だよ。だから‥」
ヒートはベッドに飛び乗って、ソウに寄り添う。
「いや、俺はお前を理解しようとしない、ケガさせてもごめんなさいを言わないサイテーな奴だ。
でも、こんなにサイテーな奴を信頼して、助けてくれた。もう一度話をさせてくれた。ありがとう。」
ソウはギュッとヒートを抱きしめる。
「‥ごめん。話がまとまらないね。
申し訳ないが、今ちょっと心の整理がつかないんだ。一晩考えさせてくれ。」
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その夜。
「皆寝たな。」
こっそり部屋を抜け出して、向かった先は病院。
「ソウ!お待たせ。」
「コウキ、夜遅くに呼び出しちゃってごめんな」
「ううん。全然平気だよ。それで、話って‥」
「こんなところで話すのも難だし、中へ行こうか」
手を引っ張られて連れてこられた場所はソウの病室だった。
「あれ?昼間と違うような‥」
「回復が早いから、救急病棟から一般病棟に移ったんだよ。うまくいけば今週中に退院できるかも。」
「へぇ。あ、飲み物買ってくるけど何飲む?」
「何でもいいよ。特に何かを禁止されてるわけではないから。」
僕は缶コーヒーを買ってきた。甘いやつ。夜を過ごすならこれでしょ。
「コウキ、サンキュ!」
そして話は本題へ。
「その‥話って何?」
「ああ。ヒートの事だ。」
ベッドに座ったソウは窓の外を見た。今日は満月。
「俺、実はこの世界のニンゲンじゃないんだ。」
‥へ?
「101番道路にいたんだ。コイツと一緒にね。」
腰のベルトから取り出したのは、ゲームやアニメでお馴染みの赤と白のボール――モンスターボールだ。確かに、こっちの世界では見たことがない。事実、僕もブイ達をモンスターボールに入れてない。
「出ておいで!」
ボールが開いて、
「ゴロッ!」
元気なミズゴロウが飛び出てきた。
「101番道路ってことはミシロタウンを出てすぐか。」
「そうだよ。コイツはこの間、オダマキ博士からもらったんだ!」
「すると、トレーナーになったばかりなんだね!」
「ああ。コウキはどんなトレーナーなの?」
「俺は‥トレーナーじゃないんだ。ただの高校生だよ。しかも、僕の住む世界にはポケモンがいない。
だから、ポケモンに接したことはこの世界に来るまでなかった。」
「こうこうせい?」
「そう。学校へ行って勉強するんだ。」
「へぇ。ポケモンに会ったことがないって不思議だな。俺は小さい頃、ポケモンと遊んでたぜ。
ってか、コウキもこの世界のニンゲンじゃないんだ!」
「そう。」
「それなのに《蒼の戦士》とかやってるの?なんで?」
「それは‥自分の過去のことを知りたいからかな?」
「?」
僕はここでコーヒーを一口飲む。
ちょっと一息ついたあと、話始める。
お月様がキレイに輝いている。