03
《ということでまだまだ帰れそうに無いの。いつ帰れるか分からないから、しばらくは自分でやっててね。》
翌朝、おばさんから届いたメールだ。何でも、台風が思ったより西側を通ったからあっちは大雨。交通網は麻痺しているんだってさ。
僕は《了解》とだけ打って返信した。まあいい。こっちのほうが調査しやすいし。
「ん‥おはようコウキ。」
ベッドで僕の横で(というか僕が隣で寝てたのか?)ブイが目をさましたようだ。姿はまだイーブイだ。
「あ。ちょっと待って。」
と言うと、体から光を放つ。そして、ニンゲンの姿になった。
「こっちの姿のほうが動きやすいよね。で、今日は?学校に行かないの?」
「うん。今日は土曜日だからね。学校は休みなんだ。で、今日はちょっと行きたいところがあるんだ。」
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「ねえ。僕たちはどこに向かっているの?」
時刻は午前9:30。僕たちは新幹線に乗っていた。
「この電車は新潟に行くんだよ。」
「新潟?」
「うん。何でもジュンを引き取った人は新潟に住んでるんだって。何か知ってるかなって思って。さ、朝御飯食べよう。これを食べさせたくて家で朝御飯食べなかったんだ。」
東京駅で買った駅弁の包みを開ける。
「あっ!おいしい!」
そのあと僕たちは新潟に着くまでの間を話したりしながら楽しんだ。
トンネルを抜けた。流石米所新潟。辺り一面の田んぼの緑が綺麗だ。
「そういえば‥。昨日こんなところ通った気がする。」
ぼそっと言ったブイの言葉は、僕の耳にも届いていた。
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「嘘でしょ!?」
「本気で言ってるの?」
メモに書いてある住所の場所にやって来た。そこは空き地だった。雑草が鬱蒼と生い茂ってる。
「新潟県新潟市〇〇区×××‥。うん。やっぱりここだよ。」
「まさか‥ね。」
僕たちは言葉を失った。
「まさかここまでつけてくるとは思いませんでしたよ。」
背後から声をかけられる。聞き覚えのある声だ。
「ねえコウキ。さっき『昨日もこんなところ通った気がする』って言ったよね。それ、何でか分かったよ。テメエのアジトがこの辺だからな!」
僕たちが振り返ると.そこには‥
『S!』
「まったく‥。厄介ですね。まあ丁度いい。今日はあなた方に我々の仲間を紹介致しましょう。《宇宙の民》として我々と共に戦う者です。コードネームJ。こっちに来なさい。」
そう言われて、ワゴン車から降りてきたのは‥
『ジュン!!!』
僕の《嫌な予感》は見事に的中した。
「う‥嘘‥だよね?ジュン‥‥‥」
――だめだコウキ。アイツ、完全に自分を失ってる‥
「そ‥そんな‥‥‥」
僕は地べたに座り込んでしまった。悔しくて悔しくて‥。弟を目の前にして泣きそうになる。
「コウ‥キ‥」
「なあS。そこの国道を渡ったらさ、広い砂浜が広がってるんだよ。そこに場所を移さねえか。そんでブイ。戦闘体勢に入れ。シンクロする。」
「ほう。私たちとやる気ですか。良いでしょう。受けてたちます。」
「コウキ‥本気なの?」
「絶対にジュンとまた一緒に暮らす。アイツを絶対に死なせない。アイツは僕の大切な仲間だ。そして‥」
一呼吸を置いて叫んだ。
「俺の大切な家族だ!!! 」
生まれて初めて「俺」って言葉を使った。
「‥‥わかった。」
ブイが右手を差し出した。その右手を僕の左手で繋ぐ。
トクン‥トクン‥トクン‥‥
ブイの鼓動と僕の鼓動が段々合わさってくる。
『うぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁ!!!』
ついにシンクロしてしまった。この世界では絶対やらないって決めてたのに。でも、僕は戦うだけ!
「しょうがない。J。行きなさい。」
コクンと頷くと、黙って前に出てきた。首から下げてるペンダントが光って‥凛とした鬣、鋭い爪。レントラーにシンクロしたようだ。
「ユウキ、仕事だ。」
――ったく、お前キャラが違うぜ。なんか全然僕キャラじゃねえよ。で、どうするんだ?
「どうしても試したいことがある。シャワーズを頼む。」
(!?正気なの!?)
――馬鹿野郎!テメエそれじゃ負けるぞ!
「シャワーズは‥アイツの好きなポケモンなんだ。ゲームで通信対戦するときシャワーズ良く使った。何か思い出してくれるかなって思ってね。」
――わかった。どうなっても知らんがな。
「サンキュ!流石だな!」
体から光を放つ。そして、イーブイの姿からシャワーズの姿へと進化した。
「久しぶりにポケモンバトルするな!」
「‥‥‥‥」
「僕は《蒼の戦士》だ。この姿になった以上、僕は手加減しないで戦う。そして、ジュンとまた一緒に暮らす。」
「何をしている。始めなさい。」
Sの一言でジュンは動き出す。《かみなりのキバ》を繰り出した。僕はギリギリのところでかわす。
「僕は絶対負けない!」