02
「S!テメエ何でここにいる!」
「何でって‥。我々の仲間を迎えに来たんですよ。まあ、おまけもついてきましたけどね。ほら。」
持っていたiPadである映像を見せる。それは‥
「‥‥マジかよ!」
目隠しをされて両手を拘束されたジュンとブイの姿。
――ジュン!ブイ!!
「貴様‥ジュンとブイを何処へやった!」
「ご安心を。彼らなら我々のアジトに監禁してますよ。まあ、肉体的にどんな危険が待ってるかは知らないですから。」
「テメエふざけてんじゃねえぞ!」
僕の身体がSに右ストレートをかます。
「やれやれ‥‥。やる気なんですね。メタモン!」
指をパチンと鳴らすと、偽ブイが光を放ちながら姿を変える。
「派手にやっていいんだな!」
「勿論。さあ、思いっきり暴れなさい。」
メタモンはリザードンに姿を変えた。
――マズイ!この世界ではポケモンはテレビやゲームの中の存在でしかない!こんなのが街中に居たらパニックどころの騒ぎじゃ済まされないよ。なんとか落ち着かせないと‥
「でもどうやってだ!《でんこうせっか》程度ならまだしも、ポケモンの技を生身のニンゲンが喰らったら死ぬぞ!」
「ならばポケモンである私が!」
飛び出したのはオルだ。
「私は波動使い!
ニンゲンの姿になっても波動は自由自在に操れる!喰らえ!《はどうだん》!」
右手から強力なエネルギーが発射される。しかし、メタモン――リザードンはそれをひらりとかわす。そしてその《はどうだん》は‥
ドカーン!
空で爆発を起こした。
「‥‥なんて破壊力‥‥。こんなのが着弾したら街は‥」
――この辺に広い場所なんて無いよ!
東京近郊のベッドタウンとして位置するこのまちは、右も左も辺りを見渡せば住宅ばかり。戦いを止めさせ、ブイとジュンの居場所を聞き出さねば‥。
「オイ!何だあれ!」
そのときだった。誰かが僕たちの戦いに気づいたようだ。
「‥仕方ありません。メタモン、一時撤退です。」
そう言うと、メタモンはニンゲンの姿に《へんしん》した。
「あ、待てコラ!」
ユウキが止めようとしたが一歩遅かった。煙幕を張ったかと思うと次の瞬間、もうそこにはいなかった。
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――クソッ!あの野郎今度あったらただじゃおかねえ!
僕たちは家に戻ってきた。今後の作戦を練るためだ。
「でも‥ジュンとブイはどこ?手がかりも何もないのに‥。」
その時、『ガチャ』と玄関のドアが開いた音がした。かと思うと、『バタッ』と何かが倒れる音がした。何かと思って見に行くと、そこには傷だらけのブイが倒れていた。
「ブイ!大丈夫?」
「その怪我、一体どうしたんだ!?」
「あ‥コウキ‥‥。ごめんね。ジュンを守れなかっ‥‥」か細い声。最後の一言まで言い切ることなくぐったりとしてしまった。そして、力を使い果たしたのか、イーブイの姿に戻ってしまった。
「治療をするぞ。すまんが手伝ってくれないか。」
持っていたカバンに入ってた救急セットを巧みに使ってブイの治療(というよりちょっとした手術)を進める。
「この傷‥。ポケモンにやられてできた傷というより、ニンゲンに殴られたりしてできた傷だな。」
オルにそう言われて、ふと嫌なことを考えてしまった。
さっき見た映像‥昨日の夜のジュンの目‥そして、この世界にやって来たS‥。ダメだ。こいつらが頭のなかでスパークする。そうあって欲しくない。でも、心のどこかでやっぱりそうなんじゃないかな、って思う自分がいて‥。
「治療終わったぞ。」
オルは治療で使った道具を片付けに部屋を出た。
「ブイ‥ごめんね。守ることが出来なかった。相棒なのに‥」
包帯を身体の至るところにぐるぐる巻きにされてるブイを僕は思いっきり抱きしめた。