06
「こちらです。」
警察署で案内された部屋のドアに立った。極度の緊張が僕に襲いかかる。今までどうしたんだろう。元気にしてたのかな。僕のこと覚えているのかな。
あれやこれや、色々な不安が頭をよぎった。その不安を払拭させようと無理矢理こんな言葉を口にした。
「まさか久しぶりにジュンに会う場所がここなんて思っても見なかったな。」
わざと明るくしゃべったけど、そんな自分が虚しい。そのとき、僕の右手を誰かが握る感覚を感じた。
「大丈夫!僕たちがついてるよ。」
ブイだった。やっぱりこういうときに後押ししてくれるのはブイの笑顔なんだよな。なんか不安が全部消えた気がする。
「うん。ありがとう。」
そう言ってドアノブに手をかける。
「行くよ。」
ドアを開け、中に入る。そこに居たのは‥
「‥!ジュン!!」
間違いない。髪を伸ばしているけれど、後ろ姿はまさしくジュン!
もっと話したくて僕はジュンに近づく。しかし、そんな彼から返ってきた言葉は残酷なものだった。
「‥それが俺の名前なの?」
僕の思考が停止した様に感じた。
「え‥何言ってるの?」
「ごめん‥。わからない。」
振り向き様に言うジュン。その瞳は昔の輝きを失っていた。
僕たちは何もできずにいた。
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「ひとまず家で預かります。」
そう言って警察署を後にする。パトカーで家まで送ってもらった。
「‥‥‥。」
僕も、ブイも、ジュンも帰ってきてからしばらくはずっと黙っていた。
「ねえ。」
均衡を破ったのは僕だった。
「本当に‥僕のことがわからないの?」
前にブイも同じことを僕に聞いていたが、やっぱり辛い。
「うん‥ごめん。わからな‥うっ!」
突然ジュンが頭を押さえ出した。なんかかなりしんどそうだ。
「えっ‥大丈夫!?」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
ジュンが叫びだす。マジでヤバそう。
「ジュン!大丈夫!僕がついてる!」
思わずジュンのことを抱きしめた。
しばらくして、ジュンはぐったりしだしたが、僕はまだ抱きしめていた。やり過ぎじゃないかと思われるぐらい。なんかこのまま死んでしまいそうな気がしたからね。
「‥うっ‥ううう‥」
『!』
ジュンの意識が戻った。
「ん?ここは‥?ってコウキ!久しぶりじゃん!って何でコウキいるの?って何でコウキ俺に抱きついてるの!?」
「‥‥えっ、僕のことわかるの?」
「当たり前だろ!お前、俺を誰だと思ってるんだよ」
「やっぱり‥ジュンだ!」
今度は思いっきりジュンのことを抱きしめた!胸に顔を埋めて泣いてしまった。
「おいおい‥何があったか知らねぇけど泣くなよ。」
「うん‥ごめん。」
涙を拭きながら、僕はジュンにこう言葉をかけた。
「やっと会えたね!」
このとき、ジュンの身に起こることなんて誰も想像していなかった。