04
目を覚ますと、僕は電車に乗っていた。時刻は午後9:00。
『間もなくあざみ野です。市営地下鉄と‥』
車内アナウンスが聞こえる。そうか。もとの世界に戻って来たんだ。当然のことながらエリはいない。今ここにいるのは僕ひとり。
そういえば、むこうの世界に行ったときは寝過ごしたんだっけ。進んでいる方向は帰る方向だから、むこうの世界に行ったときに戻ってきたんだな。
「ここがコウキの住む世界かぁ。」
――あんまり俺たちの世界と変わらねえな。
‥‥‥へ?
僕は周りを見渡した。下り電車だけど、各駅停車だし、時間が時間だから案外空いている。強いて言うなら、僕の隣にはこっちを向いてニコニコしている同い年位の男の子が座っている。大体勘づいたが。
「コウキ、僕だよ。」
彼は僕の左手に何かフワフワしたものを握らせた。これで『勘』が『確信』に変わった。
「まさかブイ?」
「気づくの遅いよぉ」
見た目は完璧にニンゲンだった。でも、しっぽであったり、髪の毛がイーブイの体毛の色と全く同じ色だったりで、イーブイの面影を残していた。
「レックウザ様にニンゲンの姿にしてもらったんだ。一時的にだけどね。ついでにユウキも一緒にね。」
へぇ。そんなこともできるんだ。レックウザってすごいなぁ。
『間もなく長津田です。こどもの国線と‥』
「次で降りるよ。」
何だかんだでもう家に着く。久し振りの我が家は緊張するなあ。
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「ここがコウキの家?」
「そうだよ。」
僕の家(正確には僕の親戚の家)はマンションの5階だ。
「大丈夫。コウキはこの世界からいなくなった事にはならないから。」
「いや、それは良いんだ。問題はブイ。君だよ。見た感じからして柄悪そうだしさ、いきなり何日か泊めてって言い出せないよ。」
「まあそこはうまく考えるよ。」
「うまく考えるよったって‥まあいいや。ここが僕の家だよ。」
門を開けてドアの前に立つと、そこには張り紙が。
『大造じいさんが亡くなったので葬式に行ってきます。連絡ください』
大造じいさんとは、母さんの妹の旦那さんのおじいさんにあたる人。なかなか遠い関係だ。
「まあ、第一関門クリアだね‥(笑)」
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「うん。わかった。じゃあね」
「誰と電話?」
「伯母さんと。ブイを泊める許可貰ったりとか。そうだ。明日は僕は学校に行くから暫く家で留守番しててね。」
「ええっ!?」
ブイがブーたれる。
「何でさ!僕も連れてってよ!」
ブーと頬っぺたを膨らます。それは、イーブイのときと同じ仕草だった。
「まず第一にそのしっぽ。ニンゲンには付いてないって言うのもあるし、そもこの世界にはニンゲンしかいない。あり得ないニンゲンがいるとパニックになる。
第二に、そもブイは生徒ではない。学校にいてはいけない存在なんだ。だからダメだ。」
「‥わかった。不服だけど。」
「それでいい。じゃあご飯食べよう。何食べる?」
「何って?僕は‥」
「いつもポケモンフーズだと飽きるでしょ。せっかくニンゲンなんだもん。何か食べたいもの食べようよ。」
「じゃあ‥オムライス!」
「了解!今から作るから待っててね」
「え?コウキ料理するの!?」
「するよ!見てな!」
見栄を張って僕は台所に入る。オムライスは実は得意料理なんだ。
「はい。食べて食べて!」
「いただきます‥!おいしい!」
「でしょ!」
その夜。僕たち二人はなかなかに夜を楽しんだ。