ポケモンバトル
シエルが身体を起こすと、そこには水色のパーカーに短パンを履いたシエルよりも5〜6歳年下の少年がいた。
「ねぇ、いいでしょ?」
上目遣いでそう聞いてくる。
「いいよ。……そのかわり、私が勝ったら道を教えて欲しいの」
シエルがそう言うと、少年はきょとんとした。
「おねぇさん、道に迷ってたの?」
「そうなの、この辺に来るのは初めてで。……君はこの辺、詳しいのかな?」
「うん!この辺はぼくの庭みたいなものだからね。いいよ、おねぇさんが勝ったら道を教えてあげる!」
少年が胸を反らして得意げに言うのを見て、シエルは微笑んだ。
「ありがとう。……じゃあ、さっそくバトルはじめようか?」
「そーこなくっちゃ!言っておくけど、ぼくのポケモンは強いよ!!」
少年は威勢良くそう言ったかと思うと、ぱっと駆け出してシエルから少し距離をとった。
「使用ポケモンは1体の真剣勝負だよ!!準備はいい?」
シエルは少年の声に口元に手を当てながら応えた。
「いいわよーー!」
「じゃあ、いっくよー!いけっコフキムシ!!」
少年が勢いよくボールを投げる。ボールから光がもれ、中からコフキムシが出てきた。
「リゲル!旅の初戦、絶対勝とうね!」
シエルがそう言うと、リゲルは前に出ながら「アグルゥ!」と元気よく返事をした。
「コフキムシ!たいあたりだ!!」
少年の指示どおり、コフキムシは真正面からたいあたりをしてくる。
「リゲル!かわしてサイコカッター!」
リゲルはコフキムシのたいあたりをひらりとかわすとサイコカッターを繰り出した。
「ああ!コフキムシよけろー!」
少年がそう叫ぶが、たいあたりをかわされたことで体勢を崩したコフキムシにリゲルのサイコカッターをよけることは不可能だった。
「コフゥッ!」
コフキムシにリゲルのサイコカッターがもろにあたり、コフキムシは倒れ、目を回した。
これがひんし状態だ。ひんし状態になったポケモンはそれ以上戦うことはできない。
「ううっ、戻れコフキムシ!」
少年はコフキムシを自分のボールに素早く戻した。
「よく頑張ったなコフキムシ。おねぇさん、すごい強いね!」
「リゲル、頑張ったねお疲れ様。そうかな?君のコフキムシはスピードがあって良かったよ」
「ふふ、ありがとう!」
少年は素直に喜んでシエルの元へ駆け寄ってくる。
「じゃあ、おねぇさんの勝ちだから道を教えてあげるね。」