見渡す限りの野原
見渡す限り、野原が続いていた。
時々むしポケモンのかすかな鳴き声が聞こえてくる。
野原には日差しが真上から降り注ぎ、くさタイプのポケモンがのびのびと日光浴をしている。
そんなのどかな野原の上でシエルは、野生のポケモン達と同様、日光浴をしていた。
「ふぅ。……見事に迷っちゃったなぁ」
寝転びながらそう言うシエルの口調からは、少しも疲労感は伝わってこない。
「アルゥ」
リゲルは、迷っているのにも関わず呑気に日光浴をしている主をみても短く返事をするだけで、先程と同じようにまたシエルの隣で眠ってしまった。
どうやら主の楽天的な行動には慣れているようだった。
「どうしようかぁ。リゲルー?」
柔らかな日差しの所為かシエルの声は普段よりゆったりしている。
「ここはどこなんだろうねー?」
シエルはアグレと別れた後、勢いよく走り出したのはいいが目的地をまだ決めていなかったことに気づいた。
それでアグレから前日に貰っておいた地図を広げたのだが、昔から山などで野生のポケモン達と駆け回っていたシエルにとって、地図を読むというのは難しいことだった。
とりあえず進んでみるも、結局は現在地もわからなくなってしまい、休憩として見晴らしの良い野原で日光浴をしているのだった。
シエルがぼーっと野生のポケモン達を眺めていると急に、とたとたと、足音が聞こえてくる。
「ちょっと、そこのおねぇさん!」
まだ声変わりのしていない、元気な少年の声だ。
「横に寝てるのおねぇさんのポケモンでしょ?アブソルなんてこの辺じゃ全然みないよ!ねぇ、ぼくとポケモンバトルしようよ!!」