少し前
「……なあ、シエル。旅に出てみたくはないか?」
義父であるアグレがシエルにそう問いかけたのが事の始まりだった。
「え?どうして急にそんなことを聞くの?」
「お前ももう14だ。こんな人里離れた所でただ暮らしているより、世界の広さをもっと知った方がいいと思ってな。……どうだ?」
「……でも、おじさん1人置いて行けないよ」
アグレはあっはっはと大声で笑う。
「そんなことお前が心配するようなことじゃあない。……前から言っていただろう、カロスの隅々まで自分の眼で見て回りたいって。」
確かに、シエルは常日頃からカロス地方の様々な場所へ行ってみたいと口にしていた。
どんな場所にどんな人がいて、どんなポケモンがいるのか、それを自分の眼でみて感じたかったのだ。
「……本当にいいの?」
シエルが聞くと、アグレはまたあっはっはと大声を出した。
「ああ!いいとも。お前は昔から自然とかポケモンが大好きだったからなぁ、楽しんで来るといい。……リゲルも一緒にな!」
気づけばリゲルがシエルの隣に来ていた。
このリゲルはシエルにとって幼い頃からずっと一緒にいる、家族のような存在だった。リゲルも一緒なら、心強い。
「なら、一緒に旅に行こうか、リゲル?」
シエルがリゲルに問いかけると、リゲルはしばし首を傾けていたがシエルの笑顔をみて、納得したように「アグルゥ」と鳴いてみせた。
「うん、私、旅に出るよ!それで、様々な場所へ行って、人やポケモンと出会っていろんなことを体験してくるわ!」