勝負の後にはお茶の時間を - 第一部
第5話



ハクダンの森で見事、初めてのポケモン『ポッポ』の捕獲に成功したエリカは、旅の同行者ヒュウガと、一つ目のジムがあるハクダンシティを訪れるために、早足で森を抜けようとしていた。

歩いている途中、エリカは鼻歌を歌いながらスキップしていた。彼女の周りには何故か花畑の光景を見ることが出来る。余程初ゲットが嬉しかったのだろう。ヒュウガはそんなエリカを見て一言。

「〜〜〜♪、〜〜〜〜〜〜♪」

「そんなにはしゃいでいると、転びますよ」

「ヘーキヘーキ! そう簡単に転ばないって!」


彼女が誰でもわかるほどのストレートなフラグを建築したその時、
森の奥から鳴き声が聞こえた。小さくか弱い声が。それは複数聞こえてくる。まるで助けを求めているようにも思えた。

「………! 今のはn」

それに気を取られたエリカは、案の定道に飛び出していた木の根に躓き、ギャグ漫画を連想させるような転び方をして、地面に倒れ込んだ。

「いたたた、今の声は一体……………?」

自分が聞いた声は、とても高く、弱々しい音だった。それはどう考えても人のものではない。そう考えると、行き着く答えは一つしかない。

「ヒュウガ、今の……………」

「ええ、私にも聞こえました」



そう答える彼は、いつもよりも厳しい表情で声の聞こえた方向を見つめている。その手にはいつ取り出したのか、一つのボールが握られている。

「エリカ、私から離れないでください」

その忠告をすると、声が聞こえた方へと足を踏み入れていく。気がついた時には10m以上離れていた。このままでは彼を見失うので、エリカは急いで後を追いかけていく。



後を付けている影に気づかないまま………………










森の奥は薄暗く、木影にはパラスやモロバレル等のキノコ系ポケモンが、その上にはホーホーやボクレーと言った日の差し込まない場所を好むポケモン達が見られる。

突如訪れた2人の侵入者を見つけると、森の住人達は威嚇をしたり、何処かに隠れたりなど………………非友好的な仕草を取っている。

「なんか、ここ怖くない……………?」

スピードガール、エリカは一瞬でヒュウガに追いついたものの余りにも薄暗いため若干恐怖を感じていた。一方、ヒュウガの方は声の聞こえた方へとどんどん進んでいく。実際このような森はこれまでにも調査の為に訪れていた為、彼にとっては普通の光景同然だった。エリカは薄々、そうなんだろうな、と思っていたのですんなり理解は出来てはいたものの、やはり心の底では納得出来ていなかったりもするが。


どうして先にスタスタと歩けるの?


エリカが小さな声でそう呟こうとした時、道で聞こえた声が、またも耳に響いてきた。
しかし、その声は先程と比べて格段に大きい。思わず周りを見渡してみると、今までと変わらない木々の大群…………………………と思っていたが、彼女の真横にある草むらが、大きく揺れた。その直後、また声が聞こえる。

「……………どうやらここのようですね、エリカ、一応ハリマロンとポッポのボールを持っておいてください」

「う、うん」

エリカがボールを取り出している間、
ヒュウガが声のした方へ向けて草むらを掻き分ける。
1〜2分ぐらいの間、草の中を進んでいくと
その中にあったのは…………………………………………







コラッタやキャタピー、ピカチュウ等のおよそ20体前後のポケモン達が、傷だらけの体で辺りに倒れていた。その中の比較的傷の浅いポケモンが、弱々しく声を上げたり、草むらを揺らすなどして助けを求めていたのだろう。しかし、皮膚が裂けて出血しているものもいれば、酷い火傷を負っているものも見られた。この光景を見たエリカは、思わず言葉を失った。

一体、誰がこんな酷いことを………………?


彼女は全く予想がつかなかった。

しかし、ヒュウガにはもう犯人の目星は付けているようだった。


「……………………誰がやったのかは大方予想できますね」

「誰が、どうして……………?」

エリカの問いにヒュウガは最善の回答を示す。彼は、先程手に持っていたボールを上に小さく投げる。
そこから出てくるのは、遠く離れた南の地域に多く住むと言われている、
おおはしポケモンの『ドデカバシ』。

ドデカバシはヒュウガの目の前まで羽ばたくと、笑顔でその顔に種族特有の大きな嘴を擦り付ける。しかし、周りの惨状を一瞥してから一変、目つきを鋭くなり嘴を赤くしている。

そして、トレーナーが指示を出した。

「ドデカバシ、あの方向に『ロックブラスト』」

ヒュウガが示したのは、2人がここに来るまでに通った方向だった。

嘴を大きく開け、先程から貯めていたエネルギーを瞬時に固める。

そして、そのエネルギー弾を十数個に分裂させると示した方向に連続で放っていく。



ドデカバシの攻撃が、炎に包まれて爆発した。

草むらに当たったわけでもない。当たっていないのに爆発するのは明らかに異常だ。研究者はそれに答えを出す。



「そろそろ出てきたらどうです?」


そう言い放った瞬間、『ロックブラスト』が爆発した近くの草むらから、黒いサングラスにスーツを着込み、胸には業火を象った真紅のエンブレムが付けられている一人の男が現れた。

その男の足元にいる通常よりも遥かに黒いヘルガーがこちらを睨みつけている。あのヘルガーが、技が爆発した原因だろう。

「なるほど? よく気がついたな?」

「あそこまで気配が消えてない尾行はそれと呼びませんよ」

男は口では笑っているが、目がサングラスで隠れているため判断がつきづらいのが現状である。向こうのポケモンも口から黒炎を吹き出している。

「………そのエンブレムで大方分かりますが、一応聞きましょう、あなたは何者ですか?」

ヒュウガは男とヘルガーの動きに目を配りつつも正体を聞き出そうとする。ドデカバシはエリカが攻撃されないようにエネルギーを貯めつつ彼女の真横に陣取っている。

「俺かァ? ははっ、答えてあげるが世の情と言うらしいから名乗ってやるぜェ、俺の名はディアーブル。全てを黒く燃やし尽くす悪魔だぜぇ!! 世界をもう1度創造し直す『ネオフレア団』の幹部だ!!!」


本人は大真面目だとは思うが、その場にいた2人は一瞬体がむず痒い感覚を覚えた。


正直、痛い。もちろん精神的な意味合いで。
そんな事を本人が知る由もなく、勝手に話を進めてくれた。


「今回、俺がここに来たのはこの我が組織の作ったダークポケモンの強化形態『ネオダークヘルガー』の戦闘能力テスト………………要するに試験をする為にこの森を訪れたんだぜェ!」



『ダークポケモン』

かつて、オーレ地方という場所で闇組織
『シャドー』がポケモンの自我を抑え、戦闘能力を増強するという、残虐極まりない実験の産物である。

今では、とあるトレーナーの活躍によってその組織は潰され、シャドー化されたポケモン達も殆どが元の状態に戻った。

闇組織で有名とされている、『ロケット団』でさえ、ダークポケモンには手を出すな、と戒められているほどである。そんな禁忌の技術を、別の組織が利用しているという事は……………………


その事実は、例えその組織の者の性格や言動が痛くとも、それらのイメージを簡単に塗りつぶす。


「………道徳的な考えさえも失ってしまったのですか。………………哀れなものです」


「………世界を作り直せば、それらも関係なくなる。…………………………そうだろォ?」


ヒュウガとディアーブル、両者の間では、何者も入り込めないような緊迫した空気がそこら中を満たしていた。しかし、ディアーブルがフッと口角を上げると、こう言ってきた。

「本当はここで処分しても良かったが、生憎ヘルガーの体力も減ってるんでなァ、今日はここで引き上げさせてもらうぜぇ?」

次の瞬間、悪魔とネオダークヘルガーはその場から手品のように消え去った。
恐らく、後ろにテレポートが使えるポケモンを待機させていたのだろう。

相手の気配が完全に消えた事を確認すると、ヒュウガはエリカにあくまで冷静に指示を送る。


「エリカ、今から走ってハクダンシティに行ってください。そこで警察とポケモンセンターの協力を仰いでいただきたい。いいですね?」

今さっきの事があったから頭の中の片隅に追いやられていたが、倒れているポケモン達の中には重症を負っているものも多くいる。それを考えると、口よりも行動を起こしてしまうエリカは、返事をする事なく猛スピードで街の方角へと走っていく。




彼女が走り出したのを確認したヒュウガは、一つ溜息を吐くと、


「………………さて、とりあえず応急処置をして置かなければ……………………」


と呟きながら、バックからキズぐすりと包帯、復活草等を取り出す。ヒュウガはポケモンたちの方へと向き直り、即席緊急治療を開始した。






















某所 ネオフレア団 アジト


『ディアーブル、テストの結果は』


「ひとまず、一次試験合格ってとこだなァ、あそこのポケモン共は平均的にレベルが低いからなぁ、第一ステップには丁度だろォ?」

『……………明日から次のテストを開始しろ、それまでの間、ネオダークヘルガーはこちらで調整をしておく』

「了解だぜェ。そうそう、そういやァテストの後、2人のトレーナーが居たんだぜェ? 潰しといた方がいいかァ?」








………………………………………………カロスの影で、新たな闇が動き始める…………………………………………
















■筆者メッセージ
更新を忘れていました!失礼しました!!
織田秀吉 ( 2017/09/12(火) 16:21 )