第一部
ほうさくのかみ



今は昔、_____と呼ばれし国の小さき国に一つの神がありけり。

その神は雨を降らせ、日を照らせ人々に崇められたり。

その体は異国より伝わりしものよりも遥かに硬く、そして摩訶不思議でいたり。







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………………………ここは、どこだろう

………………………自分は、なんだろう



ふと目を開けると、そこにはこちらを向いて驚愕の表情を貼り付けた者達が、好奇心、警戒心、畏怖……………あらゆる心情を向けていた。



………………………何で、こっちを見ているのだろう


自分はそう思いつつ、何故こういうことになっているのか目覚めたばかりの頭脳で考えているとこちらを見ていた者達が、何やら紐みたいなものを持ってきて周りに何か話しかけていた。

何やら嫌な予感がしたが、体を動かすことが出来なかった。

何とか動こうとするうちに彼らは、自分を縄で二重、三重…………………と縛りあげていく。
何重にしたか分からなくなるほどに縛った後、彼らは5.6人で自分を何処かへと運んでいった。











しばらくして、自分は暗く、所々明かりがついている部屋に置かれた。
いつの間にか縄は解かれているが、やはり体は動かすことは叶わなかった。



「_____様、こちらでございます」

誰かがこの部屋に入ってきた。

一人は質素な服を着ていて、もう一人は所々に派手な装飾を着け、冠を頭に乗せているところから、権力者と付き人であることが容易に想像出来た。
その権力者はこちらをじっと見つめて、何やら呟いていた。暫くすると、

「………これには何か得体のしれぬものが憑いている」

得体の………しれない……………もの?



一瞬思考が停止した。




「こ、こんな道具に……………ですか………………?」

「あぁ、これには他の道具とは違い怪しげな気を感じる」

「どのような……………気でしょうか………………?」

「これ自体が、まるで生きているかのような………獣や我々と同じように呼吸するような呼応までも感じ取れる」

「そうは言っても、ただの銅で出来たものがそういう様な気を纏うものでしょうか?」

「分からない、ただ私はこれを次の儀式で使ってみようと思う。そうすれば何かが分かるかもしれない」




………………………………………………………………………………


それから一月程たった日、この辺りは猛烈な日照りに襲われた。
そうだと分かっていても動くことが出来ないのでその場でじっと耐えるしか無かった。
だからあの時権力者の発言についてずっと考えて気を紛らわせていた。



その日から数日後に、自分がいた部屋にオトコが6人入ってきた。
彼らは自分を担ぐと、この辺りの広場と思われる場所の中央に向かって歩き出した。
その道中には、庶民と思われる人々が何人か見かけたが、その殆どが不安そうな表情をしていた。
それもそうだ。
この一月、ここまで日照りが続いているならば、不安にならない方がおかしい。
そんなことを考えているうちに、広場の中央に着いたことに気が付かなかった。
オトコ達は、中央に自分を降ろすと足早にその場から去っていった。



一体何が始まるのだろう………………



太鼓の音が響いてきた。
その音は広場全体に広がり、ザワザワと騒いでいた人々が水を打ったように静まり返った。

その後ろから、例の権力者が自分の方へと歩いてきた。そして、間の距離がどんどん縮まっていき一歩手前で歩みを止めた。

権力者は何やら呪文の様なものを唱え始めた。


「_________よ、この日照りを止め恵みの雨を降らせたまえ……………」



雨を…………………………降らす…………………………………?



その言葉を聞いた途端、自分の中で何かのイメージが渦巻いているのが分かった。それはモヤモヤしててよく分からないものだった。

「何卒___________この地に恵みを………………………!」











心でモヤモヤしていたものが急に形を作り出し_____________________それは一つの穴となった。








その穴のイメージを強く思い浮かべた次の瞬間、今まで静かだった広場にいた人々の何人かが悲鳴を上げていた。
自分が思い浮かべた穴が、広場はおろか、この辺り全体を覆っていた。
そしてそこから、一滴水が落ちてきた。
それを皮切りに、辺りに恵みの水が地面に染みこんでいった。

これを見た人々が騒ぎ、踊り出し、権力者は自分の方向を見て、

「これは……………………………………いや、あなたは神が私達に恵みを与えるべくこの地に現れた使いだったのですか………………?」

と、言ってきた。



自分にはどういう事かがあまり理解していなかったが、一つだけわかるのが『この雨は自分が降らせたものだ』という事だった。











それからしばらくの間、この土地には豪雨、日照りなどが襲ってきたが、その度に自分は穴を開け、天候を操っていた。
人々には神の使いだと祀られていたが、最近では『豊作の神』という風に変わっていた。

まあ、そういう扱いは悪くなかった。





しかし、ある日突然、他の土地からきた人々に侵略を受けた。彼らは土地を広げるべくこの地を狙ったようだ。
この土地の人々は必死に抵抗したが、向こうは圧倒的な人数と武器でこちらを蹂躙していった。
遂に、この土地の権力者が、彼らに降伏を宣言したのが侵略開始から二月程だった。
侵略者は、権力者を含めた男達を殺め、女には農業をやらせた。







そして自分は___________________________________









土 に 埋 め ら れ た

















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そして今、その______は、とある工事現場で掘り起こされました。
大昔そこは、一つの小国が存在していましたが、他の国に滅ぼされたました。
しかし、_______はその国の生き残りが、それに似た道具を作り、それを信仰して知ったそうです。
そしてそれは、今もどこかで祀られているそうです。














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『べつせかいへの あなを あけて そこから あめを ふらしていた。そのため ほうさくのかみ とされる。』




『_______に いのりを ささげると あめが ふり さくもつを そだてると こだいの ひとびとは しんじていた。』











■筆者メッセージ
作者の織田秀吉です

しばらく諸事情で忙しくなるので更新頻度が落ちます。
ご了承ください
織田秀吉 ( 2017/08/01(火) 16:47 )