燃える心
「疲れた…」
今日もオラシオンは仕事をこなし、ヘトヘトになりながらもギルドへとたどり着いた。
「今日の夜ご飯は何?」
「今日はオレンの実と…」
「マゴの実ですよ!」
そうシノとフウに問いかけたのはフィーアである。最近は彼女もギルドに慣れてきた。
そして、
「おっ、美味しそうだな…フィーア、甘いもん好きか?」
と言ったのはライガ。あの日以来、この二人の仲は悪くなることこそ無かったが、とても微妙な距離感を保っていた。
「…普通。というか辛いほうが好き」
「あはは…じゃあ明日はフィラの実にしようかな」
というやり取りをしていると、突然ひどく煩い声が聞こえた。
「なんだと?」こんな大声を出せるのは一人しかいない。
「で、でもバクさん…ホントにそう言ってるんですよ…」
消え入りそうな声がバクが覗く穴から聞こえる。
「どうしたの?」
シーアが聞くと、バクがこう言った。
「なんでも、怪しいもんがここに来てギルドに入れろというらしい」
「あの〜…」「え…なにそれ…なんか因縁つけられてるんじゃないの?」
「そんな訳ないじゃないですか!!」
「ちょっと…」
「大体、マスターがそんな恨まれる人に見えます!?」
「すいませーん!!!!」バクに負けないくらいの声に、皆は静かになった。それを見計らって、
「あの、僕達はフェリルの友達なんだ。だから、入れてくれないかな?」
「あっ…そういうことでしたか!じゃあ、今すぐ!」
しばらくして、3人のポケモンが入ってきた。1人は髪を後ろでポニーテールにしたメスのピカチュウ、もう1人はぐっすり眠っているリオル。そして最後は、そのリオルを浮かばせる念力を持つドーミラー。この地方では珍しいポケモンでは無かったが、なにせその組み合わせが珍しかった。
「やぁ♪久しぶりだね♪シュエル、ネスラ、カッチン!」
「本当だよ〜。あ、そういえばフェリル、はいコレ!」
シュエルが取り出したのは大きな、夕食でもでない大きなリンゴだった。
「わぁ!セカイイチだぁ〜♪」
そのセカイイチというリンゴをフェリルはがつがつとたいらげていく。
「ふぉふぉふぉへ、ふぁひひにひふぁふぉ?」
「いつもどおり、分からない。フェリル」
「ふぉふぇんふぉふぇん」
フェリルがゴクリとリンゴを飲み込み、もう一度言った。
「ゴメンゴメン♪ところで、何しに来たの?」
「ああ。それは…そうだ!まだ自己紹介してないよね!?」
「起きて。ネスラ」
先程カッチンと呼ばれたドーミラーは浮かせているリオル―ネスラ―を下に落とした。
「……!!」
「ネスラ。自己紹介だよ?」
「…腹が減ったな…」
「僕はシュエル。よろしくね」
「カッチン。よろしく」
「…ネスラ・カナサスだ。なぁ、そこのお前」
「はぁ?」
「腹が減った。何か食べ物をくれ」
ドンッ腹が減った、と連呼するネスラになのか、それとも命令されたことになのか、なにせイライラしていたフィーアの渾身のパンチが目の前の青犬を襲った。
「いてぇ…」
「ネスラが悪い」
「それはともかく、僕達は探検隊〈ブレイズハーツ〉だよ。僕達の目的は、とあるダンジョンがあってね。そこに調査しに行きたいんだ」
「それで、誰かを連れて行きたいというわけだ」
「なるほどね〜♪それなら、思い当たる節があるんだけど…」
と言いつつ、シーア達の方を見るフェリル。それを悟った彼女の口がわなわなと震える。
「もしかして…私達、の…事でショウカ?」
「うん♪頑張って行ってきてね♪」
「「「ええええええええええ!!!!!??」」」こうして、(半強制的に)シーア達の初めての冒険が始まったのです…