VS.ユメル
トゲトゲ山、山頂。そこには、向かい合う二人のポケモンが居た。一人はリル。もう一人は、ユメル。そう。シーアが夢で見た事が、ここで本当の事となっていたのだ。
「言う通りにすれば、すぐに返してやるから」
「いやだっ…」
リルは必死に逃げようとするが、すぐに捕まる。
「まったく…言う事を聞かないと、痛い目にあわせるぞっ!?」
「た、助けてっ!」
ユメルがリルに襲いかかる。が、しかし、そこへ声が聞こえてきた。
「待ちなさいっ!リルちゃんを放してっ!」
二人は声のする方を見た。そこにいたのは、シーア、ライガ、フィーアの三人だった。
「お尋ね者、ユメル!お前を捕まえに来た!」
「な、何故ここが…分かったんだ!?」
突然の事に驚くユメルだったが、その向かいに立っていたライガを見るなり、焦りをなくした様子で、
「…って、お前…もしかして…」
と呟いた。そう。ライガはこのお尋ね者、ユメルを前に震えていたのだ。
「はっ、お前ら新人なんだな?…いいだろう。捕まってやるよ…」
「えっ…?」
「お前らが俺に勝てるならなぁ!」「……まれ」
「あぁ?聞こえねぇぜ?」
「…黙れ」
「なっ…お前、いつの間に…」
「お前みたいな最底辺のポケモンにいちいち怯えてられるかぁっ!!」
「ライガ!」
「すいませーんワタシ空気ー」
ライガの怯えはすっかり無くなり、全員が戦闘態勢にはいる。
―さあ、戦いの始まりだ―
「はさむ!」
先手をうったのはフィーア。しかし、ユメルは間一髪で避けた。
「くぅっ…やっぱりまだ…」
「行くぞ!電気ショック!」
次に技を出したのはライガ。ユメルの腕に直撃だった。だが、ユメルもやられっぱなしでは無かったようだ。
「クッ…催眠術!」
催眠術。特定の相手を眠らせる技だ。ユメルが向けたのは…
「なっ…」
黄色い体が静かに倒れる。ユメルはライガに催眠術を仕掛けたのだ。眠ってしまったライガへ、ユメルの激しい攻撃がはいる。
「ライガ!」
助けようとするシーアも、ユメルの念力で飛ばされてしまう。それは、フィーアも同じであった。
「このままじゃ…どうしよう…って、シーア?」
フィーアは呆気に取られた様子でシーアを見る。フィーアが不思議がるのも無理はなかった。何故なら、シーアの左目が薄桃色に輝いていたからだ。
「嘘…シーア…」
「電光石火っ!」
「えっ!?」
次の瞬間には、ライガは起き上がり、ユメルへと攻撃していたのだ。よく見ると、先程まであった傷も、目立たなくなっている。
(癒しの波動)
その場に居た殆どのポケモンがそう思ったが、本来ならチコリータは癒しの波動を覚えないはずなのだ。
「グラスミキサー!皆、もうすぐ倒せるんじゃないかな!?」
シーアの言葉で考えるのをやめ、三人で一斉攻撃を仕掛けた。
「はっぱカッター!」
「アイアンテール!」
「かみつく!」
「ぐわああああああああ!!!」
流石にユメルも耐え切れなかったのか、その場に倒れ込んだ。
「ユメルはワタシがどうにかするよ。それより、あのルリリを…」
「分かった」
シーアとライガはリルのもとへ駆け寄り、言葉をかける。
「大丈夫?」
「怪我はないか?」
その問いに、彼女は、
「うん!大丈夫!ありがとうございます!」
と答えた。ちょうど、フィーアがやって来て保安官さんに待ってもらっている、と聞いたので、ユメルを連れて山頂を後にした。
「コノタビハ、オタズネモノノタイホ、アリガトウゴザイマス」
「読みにくっ!漢字ぐらい使えないか?」
「コレカラモ、ゴ協力オ願イシマス!」
「話の分かるジバコイルはいいね」
「報酬ノ9000ポケデス」
「「………」」
シーア達がユメルを引き渡した横では、マルとボルトがリルと話していた。
「うわああん!お兄ちゃーん!」
「リル、大丈夫だったか?怪我はないか?」
「見たところ目立った傷はないよ。…それにしても、凄いね。二人は」
「う〜ん…まぁ、半分はフィーアのおかげかな」
「そうだな。だがとりあえずお前達の取り分だ」
「うわっ、いつから居たのペリル…」
「さあ?いつからだろうな?ホレ、900ポケだ」
「まだそんだけマシ」
そんなほのぼのムードの中で、フィーアがとある事を言ったのだった。