The Last Hope 〜最後の希望〜
Prologue 〜闇に包まれた地方〜
〜いつもの1日のはずだった〜
ここは、ポケモン達の楽園ともいえる地方、エンパ地方。
  ポケモンのみが住める不思議な地方であった。
   毎日が豊かで、争い事も起きないとても珍しい地方であった。




ソープとクレアの家

「おはよう。今日もいい天気だな。」ソープがクレアを起こし、カーテンをバッと開けた。日差しがまぶしい。今日も平和な朝だ。


「おはよう、ソープ。」クレアがベッドから起き上がった。目が細く、まだ眠い様子だった。


「今日は…そうか、食品の半額デーか。」ソープはカレンダーを見て言う。


今日は5月17日。年に2回しかない食品の半額デーだった。
ソープとクレアはいつもこれを逃さず、食べ物を購入して生活している。
もちろん、半額じゃない日のときも食品は買いに行くが。


「ってもうすぐセール開始じゃない。急がないと遅れるわよ!」クレアがソープを急かす。


「わかってるって。」ソープは急ぎ、財布をバッグに入れて、万全の態勢を取った。


ソープとクレアの家は、ラッキーな事にその半額セールを実施する店の丁度裏側にあり、一番乗りは常連だった。今日も一番乗りを獲得し、2人は上機嫌だった。


そのあと、続々と人が集まってくる。たった2分で既に100匹は軽く超えていた。周りがどんどんうるさくなる。


「もうすぐだ……ダッシュで行くぞ。」ソープがダッシュの体型を取る。


「そんな慌てなくても取れるわよっ。」クレアはソープに言った。


「それでは、間もなくセール開始でーす!」店長が群衆に向けて叫ぶ。いよいよカウントダウンだ。


そして、10秒まえのカウントダウンが始まった。刻一刻と迫る。


5…4…3…2…1……


0!……の直後だった。突如地方アナウンスが警報音を鳴らしたのだ。


「え、な、何…?」クレアがとっさに振り向く。


周りのポケモンも突然の警報音に驚きを隠せていなかった。この地方では警報音は確実にヤバイことが起きたという意味である。


しかし、今回の警報音はかなり特殊だった。確実に相当ヤバいことが起きたのは確定的で、ソープとクレアに不安が走る。


そして、スピーカーからアナウンスが大音量で響き渡る。

『緊急避難命令!悪党らしき黒い服を着た人間とポケモンが地方に侵入!現在、ポケモンを誘拐しているという情報あり!これは訓練ではない!繰り返す、これは訓練では無い!!』


その言葉に周りのポケモンが一斉にざわめきだす。黒い服を着た人間……過去に聞き覚えがあるような言葉だが、思いつかない。何が理由でこの地方に……?


「ク、クレア……」ソープの不安が一瞬でピークに達する。


「逃げましょう……私、すごく嫌な予感がするの。」クレアが言う。


クレアのいう事は大体本当になるから余計ヤバい気がする。しかも「すごく嫌な予感」とか言ったな……あと1分もしないうちにここに来るんじゃないのか?


ソープは一瞬で判断し、周りのポケモンに向かって叫んだ。


「皆!逃げろ!!1分もしないうちに奴らはここに到達するかもしれない!!」限りなく叫んだ。


それを聞いたポケモンは縦横無尽に逃げ始め、安全地帯を求めて四方八方に散らばる。


同時に、上空に何かがいるのを発見した。


「まずい!上だッ!!上から攻めてくる!!」ソープが叫ぶ。


「ソープ!!このままじゃ私達も浚われるわ!逃げましょう!!」クレアがソープに一緒に逃げるように言う。


「……チッ、小癪(こしゃく)な手を使いやがって……!クレア、逃げるぞ!!」ソープはクレアを抱き、全速力で逃げ出した。


何を理由でこの地方を襲撃してきたかは全く不明だが、とにかく今は逃げるしかない。
しかし、なぜこんな中途半端なタイミングで攻撃を仕掛けてきたのか?


「今日はチームの休業日……全チームが定期休暇の日だ。……まさかとは思うが、この日を狙って来たかもしれない。」


ソープの推理は、ほとんど真実だった。こんなタイミングで攻めてくる敵はなかなかいない。もしかするとこの地方のどこかにスパイがいて、こちらの情報を抜き取っていたという可能性は否定できない。人間が入れないなら、ポケモンで入ればいい、という作戦である。


「他のメンバーは大丈夫なのかしら……」クレアが不安そうに言う。確かに、突如の奇襲でメンバーが誘拐されている可能性があるかもしれない。メンバーだと分かったら命を奪われるかもしれない。奴らは計画の脅威だと感じたポケモンは優先的に誘拐し、自分の計画のために働かされる。極悪非道の極みであることをソープは知っている。


そもそも、あの「ブラック・グリフォン」は何故復活を果たしたのか?数年前にチーム・オーロラが完全に壊滅させたはずだ。よほど自分の計画を果たしたくて少しずつ勢力を増やしていったのか?復活の理由は謎のままだ。


そして、今に至るのだ。


クレアを抱えて全速力で逃げるソープは、はっとして、急に方向を変えた。
「そうだ……クレア!あの森に身を隠そう!」ソープ正面を指す。少し遠くに森がある。しかもかなり深い森だ。ソープは絶好の隠れ場所がある所を知っているらしい。


「あの洞穴……かしら?」クレアが問いかける。


「ああ、そこに身を隠すしかない!ここじゃ完全にばれる!」そう言ってソープは森に向けて全力で走って行った。





深い森・ナイトフォレスト


森の中に足を踏み入れたソープとクレアは、洞穴を目指してただひたすら走っていた。仲間を心配しつつ、ひたすら走った。


特に心配していたのは、リーダー、スイクンのクリス・オーロラだった。彼の事だから絶対に逃げ切っているはずだが、数で襲い掛かられて誘拐されてしまった可能性もあり得る。そんなことは絶対に無いと信じたい………。


「…!見えた!あそこだ!」ソープが洞穴を発見した。かなり広い入口で、少し歩いただけで完全に姿を隠すことができる奥底があるとソープは言う。


ソープは身を隠すため、洞穴に足を踏み入れ、奥底へ向かった。だが、洞穴からほんのわずかだけ光が灯っていた。既に誰かがいるようだが……。


「誰かいる。敵かもしれない……」ソープは小声でクレアに言う。


奥底にいたポケモンが音に気づき、入口を見た。すると、ソープとクレアを迎えるかのように、中に入れと言わんばかりに手を振っている。あれは……レクサス!?


「レクサス!?逃げ切ったのか!!」ソープが言う。


「当たり前じゃねえか!俺の足の速さを甘く見るなって!」レクサスは笑いながら答えた。


「あと、クロウもここにいる。俺達、2人でこの洞穴に逃げてきたんだ。」と、レクサスは言った。


「ほかの仲間は…?」クレアが聞く。


「ほかは……わかんねえ。まだ安否不明だ。」レクサスは答えた。聞く限り、ほとんどのメンバーが今回の騒ぎで一瞬にして行方不明になったのは確実だ。リーダーの安否が特に心配だ………


「とにかく。今はここでじっとするしかない。」ソープはクレアを降ろしながら言った。

→2ndへ続く
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清流クリス・オーロラ ( 2013/04/26(金) 19:00 )