第七話 反撃の篝火
「「え!?」」
「何っ!!」
突然放たれた炎にわたしはもちろん、マヒル、リームも驚いていた。
炎が放たれた方向を見るとそこには、銀色のスカーフを身につけたヒトカゲが立っていた。
「カガリ!お前、どうしてここに!?」
「いや。ダンジョンに行こうとしたら、おまえ達が何か急いで走って行ったのが見えてな。ついて行って、ここの入り口にいたソウに事情を聞いて今に至る」
「なるほどな。……ともかく助けてくれてありがとな」
「別に構わない。……それよりも、今の状況は?」
そう言ってカガリはリームの方を見る。
リームはカガリに警戒しているからか、攻撃してくる様子はなかった。
ただ、ランはいまだにリームに拘束されたままだった。
「それが……ランちゃんがリームに拘束されて迂闊に手が出せなくて……。それにリームには予知夢もあるし……」
「なるほど……」
そう言いながらカガリは腕を組んで何か考え始める。
とにかく今の状況を何とかするには、ランをリームから助けないといけないが、リームには予知夢がある上、もし予知夢を無視できたとしてもランが盾にされちゃ意味が無い……。カガリが来てくれたのは助かるがどうすれば……
「……マヒル、アカツキ。俺に一つ考えがある」
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「……よし。行くぞ」
「「ああ!/うん!」」
カガリの“考え”を聞いた後、わたし達は一斉にリームの方へと走って行く。
リームもわたし達の様子を見て、再びランを自身の手元に引き寄せる。
「スピードスター!」
わたしは前方に向けて複数の星弾を放つ。
放たれた星弾はリームに向かって飛んで行くが、予知夢でわかっているのかリームは避けようともしなかった。
だが、わたしは星弾に向けて爆裂の種を投擲する。投擲された種は星弾達の中心辺りで爆発する。
「何っ!?」
爆裂の種の爆発によって軌道を変えられた星弾達はリームには命中せずにその周辺に着弾し、辺りに砂煙が舞い上がる。
そして、リームはやはり予知できずに、動揺していた。
「手助け……。カガリ!」
「メタルクロー!!」
「……ちっ、金縛り!!」
「ぐっ……!」
手助けで強化されたカガリの技が当たる瞬間、リームは念力を解除してカガリに金縛りを使い動きを止める。
更に追撃と言わんばかりに、念力を使わたし達を吹き飛ばす。
「ぐあっ……!」
「無駄だ。お前らの技はオレには当たらない。どうする?今見逃せば命は助けてやるが」
リームは念力を再び放つ準備をしながらわたし達にそう提案してくる。
「ふふっ」
「……?何がおかしい」
「……確かに“わたしとカガリ”の攻撃は全てお前に凌がれた。けど、わたしらは“お前に技を使わせられれば”それでいいんだよ!」
「……!まさか!!」
リームが気づいた時にはもう、マヒルが念力の拘束が解かれたランを助けていた。
「大丈夫。今は安全な所に隠れてて」
「う、うん……!」
「……作戦成功だな!」
そう言いながらわたしはさっきのカガリの“考え”を思い出す。
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「考え?」
「そうだ。今優先すべきなのはランを救出することだろう。だからまず、俺とアカツキで攻撃をして気を逸らし、あいつに技を使わせる。そして、あいつが技を使って拘束が解かれた時にマヒルがランを助ける……そんな感じだ」
「なるほどな…確かにそれだったらランを助けられるかもだが、予知夢はどうすんだ?いくらリームの気を逸らせられても予知されちゃ意味無いだろ?」
そう、仮にわたしとカガリがリームの気を逸らして技を使わせたとしてもリームが次の行動を予知したらまたさっきのようになるだけだ。マヒルは何故かリームの予知夢があっても攻撃を当てることはできたが……
「大丈夫だ、スリープの特性予知夢は相手が自身に放ってきた技を予知する特性だ。だから通常攻撃や道具、普段の行動は予知する事は出来ない」
「そっか!だから僕の攻撃はリームに当たったんだ。それに、そうだとしたらランちゃんを助けられるよ!」
「そうだな……よし!それで行こう。カガリ、タイミングは任せる」
「了解した」
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わたしは無事、ランが隠れられた事を確認した後、リームに話かける。
「さて……と、これで正々堂々戦うことが出来るな、リーム!」
「クソッ……!念力っ!!」
「「真空波!!/スピードスター!!」」
リームの放った念力をわたしの星弾とマヒルの真空波で相殺する。
そして、続けてカガリが攻撃を仕掛ける。
「……弾ける炎!!」
「ちっ……!!」
「だったらこれだ!スピードスター!!」
カガリの放った炎をリームは上にとんで回避する。そこを狙ってわたしが星弾を放ったが、放った星弾は全てリームの念力によって防御される。……だが
「はあっ!!」
「しまっ……!!」
電光石火で距離を詰めたマヒルの一撃がリームに命中する。
元々空中にいたため、リームは避けることができず、大きく吹き飛ばされる。
「グハッ……!」
「今だよ!アカツキ!!」
「ああ!これで終わりだ!スターマインニ連射ッ!!」
放たれた二つの大型の星弾は鏡合わせのような軌跡を描いてリームへと飛んでいく。
そして、二つの星弾はリームの近くで弾け、そこから放たれた幾つもの星弾がリームに命中する。
「ぐあぁぁぁっ!!!!」
通常のスピードスターの倍以上の数の星弾を浴び、リームは地面に打ち付けられ、そのまま意識を失った。
「ふぅ……これで終わり……だな」
「だね、後はジバコイル保安官に連絡して……と、ランちゃんもう大丈夫だよ」
マヒルがそう言うと、地学の岩影からランが姿を見せた。
どうやら岩影からわたし達の戦いを見ていたみたいで、リームが倒れているのを見て安心している様子だった。
「アカツキさん、マヒルさん。それにカガリさんも助けてくれてありがとうございます!」
「どういたしまして。お兄ちゃんが待ってるから早く帰ろう!」
「はいっ!」
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「コノタビハ、オ尋ネ者ノ逮捕ニ協力シテクダサリ、アリガトウゴザイマス」
「くっ………!」
「サア。クルンダ」
そう言って保安官はリームを連れて行った。
「……カガリ、今日は助けてくれてありがとう!」
「別に構わない。……それに、またあの二匹が会えたからな」
そう言うとカガリはソウとランの方を見る。
ソウはランが無事だったことに、ランはソウに会うことができてお互いに泣きながら抱き合っている。
「また、ソウ君とランちゃんが会えて本当に良かったよ……」
「ああ、そうだな」
その後、わたし達はソウとランが落ち着いたのを見て、二人をトレジャータウンまで送って行った。
そんな事もあって、わたし達がギルドに帰って来たのは夕方頃になっていた。
地下に降りるとお尋ね者ポスターの前にヒビキが立っていた。ヒビキはわたし達の姿を上機嫌な様子でこっちにやって来た。
「おお、お前達今日はよくやったな♪まさか高ランクのお尋ね者を捕まえるとは思わなかったぞ♪
……それにしてもカガリ、お前が手伝うとはな」
「……別にいいだろ。それは……」
「まあいい……これが今回の報酬だ」
そう言ってヒビキは報酬の入った袋をわたしとカガリに手渡した。
「それでは明日も頑張るように」
ヒビキがそう言って戻ろうとした時。ヒビキの背後からサギリがやって来るのが見えた。
「やあ、みんなちょっといいかな?」
「お、親方様!?どうしてここに!?」
「いや、ちょっとリビルドとカガリに話したい事ががあってね」
「話したい事?」
話したい事って……突然どうしたんだ?わたし達とカガリに話したい事って言うと……今日の依頼についてか?
そんな感じに首を傾げているとサギリが話の続きを話し始めた。
「うん。ジバコイル保安官から聞いたよ、アカツキ、マヒル、カガリ。高ランクのお尋ね者の討伐お疲れ様♪」
「あ、ありがとうございます!」
「うんうん。それでねボク、この話を聞いていいことを考えたんだ!」
「いいこと……ってなんだ?」
わたしがサギリにそう聞くと、サギリは無邪気な……いや、イタズラを仕掛けた子どものような笑顔を見せた後、それを話した。
「ふふっ、それはね……。カガリ。君をリビルドの一員にするって事だよ♪」
「「「え?」」」
唐突に予想外な事を言われてわたしとマヒル、カガリは同じ言葉を口にする。
そんなわたし達の様子を様子を見てサギリは先ほどと変わらない笑顔でこっちを見ていた、
「ど、どういう事なんだ!?俺をリビルドの一員にするって!」
「どういう事も何も、カガリがリビルドのメンバーに加わるってだけだよ?……元々カガリには他の弟子達とチームを組んでもらおうと思ってたから、アカツキとマヒルはカガリと歳もそんなに変わらなそうだから丁度いいかなって」
「そ、そうですか……」
いいことってカガリがリビルドに加わるって事だったのか……。確かにカガリが加わってくれるならこっちは助かるが……。
それに、当のカガリ本人は理解はしたが、納得はしてないって感じだしな……
「よーし、それじゃあいくよ~登録♪登録♪……」
「え!おい、待っ……」
「たぁーーーーーーーーーーっ!」
そんなカガリの静止の声もむなしく、サギリのハイパーボイスがギルド中に響き渡り、大きく揺れる。……いつか壊れるんじゃないかこの建物……。
「さあ、これでカガリも今日からリビルドのメンバーだよ♪明日からもがんばって、それじゃあ!」
そう言ってサギリは梯子を降りて自分の部屋へと戻って行った。
サギリが去った空間は、妙に静かで気まずい雰囲気が漂っていた。
「……え、えっと……カガリ。改めて、これから宜しくね?」
「…………ああ」