ポケモン不思議のダンジョン~大空への祈り~ - 第二章 時の声と新たなる仲間
第六話 悪い予感
「それじゃあ。どのお尋ね者を捕まえるか選ぼうか」

「……そうだな。」

そう言ってわたしは掲示板を見る。
それにしても、思ったよりお尋ね物の数って多いんだな……。これも時が狂って、悪いポケモンが増えてるからってことだったけか。
悪いポケモンか…………。
ふとさっきの映像の事を思い出す。

『言うことを聞かないのなら痛い目に遭わせるぞ!』

『た……助けてっ!!』

…………いや。今はお尋ね者を選ばないとな……

〈情報を更新します!危ないですので下がってください!情報を更新します!危ないですので下がってください!〉

「うおっ!?」

「え!な、何!?」

わたしとマヒルがお尋ね者を選ぼうとした瞬間。辺りに警報が響き渡り、その後掲示板がひっくり返る。

「どういうことだ?急にひっくり返って……」

「ああ、これは情報の入れ替えでゲスよ。こうやって掲示板をひっくり返してグラウンが掲示板の情報を新しいのに書き換えているんでゲス。」

わたし達が突然の事で驚いていると。後ろからベレーが説明してくれた。

「へえ〜そうなんだ……って」

「「ベレー!どうしてここにいるの!?/いるんだ!?」」

いつもならこの時間は弟子達は依頼に行ってていないはずだよな……

「実は二匹がトレジャータウンへ行った時、ヒビキさんに二匹のお尋ね者を選ぶのを手伝うように言われたんでゲス。だから二匹が戻ってくるのを待ってたんでゲスよ。」

「そうだったのか……ありがとな。ベレー」

「へへっ、どういたしましてでゲス」

〈更新終了!危ないですので下がってください!更新終了!危ないですので下がってください!〉

そうベレーと話しているうちに掲示板の情報の更新が終わったらしく、また掲示板がひっくり返ってお尋ね者のポスターが見れるようになった。

「っと更新が終わったみたいだな。それじゃ、改めてお尋ね者を選ぶか」

「うん。そうだねアカツ…キ……!?」

「ん?どうしたマヒル?」

「ア、アカツキ……。あれ……見てよ……」

「なっ……!?」

そう言ってマヒルは震えながら掲示板の一番左上を指差す。わたしはそこに書かれていた物を見て言葉を失った。
……そして、一度深呼吸をした後、その内容を読み上げた。

「………お尋ね者……リーム・バサルト……」

「ああ。そのお尋ね者は高ランクのお尋ね者でゲスからもう少し下のランクのーー」

やっぱりあいつはお尋ね者だった……!そうだとしたらランは!

「マヒル!行くぞっ!!」

「うん!早くしないとランちゃんが危ないっ!!」

わたしとマヒルは急いで梯子を登って行った。

「あっ、ちょっと二匹とも急にどうしたんでゲスか!?何処に行くんでゲスか〜!?」

~~~

わたし達は大急ぎでギルドから出て、階段を下っていた。
ソウとランがわたし達と別れてからあまり時間は経っていない。だから、まだ遠くには行ってないはず……!
階段を下り終わる頃、十字路にソウ“だけ”が立っているのが見えた。

「ソウくん!ランちゃんとリームさんはどうしたの!?」

「マヒルさんにアカツキさん!それが、あのあと三びきで落とし物を探してたら、リームさんがランをどこかにつれていっちゃって……」

「それで!リームは何処に行ったんだ!?」

「こ、こっちです!ついてきてください!」

~~~

わたし達は十字路からソウに案内されて、ランとリームが消えた場所へと走って行く。そして、着いたのはまるで棘の様に鋭く尖った岩に覆われた山だった。

「ソウ。ここなのか?リームがランを連れていったのは」

「はい、この辺りにリームさんがランをつれていったんです!」

行く途中でソウに聞いたがここはトゲトゲ山というらしく中はダンジョンになっているらしい。

「ソウ君、聞いて。実はリームさんはお尋ね者なんだ」

「えっ……!?」

マヒルの言ったことを聞いて、ソウの表情は一気に不安から恐怖の物へと変わっていった。無理もないか、信頼していた相手が自分の妹を誘拐して、しかも、お尋ね者だったらのだから。

「ダイジョブだ。ランは絶対にわたし達が助けてみせる。約束する。だから、ソウはここで待っててくれ」

「けど……!」

「大丈夫、僕達を信じて」

そう言ってわたしとマヒルは山に入ろうとする。すると後ろから

「……アカツキさん。マヒルさん。ランを……妹をお願いします!!」

「「ああ!/うん!」」

そして、わたし達はトゲトゲ山を登っていった。

~~~

「アカツキさんとマヒルさんが入ってからもう一時間……おふたりは、ランは無事なのかな……」

アカツキさんとマヒルさんがランを助けに一時間が経ったけれど、特に変わった様子もなくただ時間だけが過ぎて行く。
本当にアカツキさんとマヒルさんはランを助けてくれるのかな……。そんな気持ちが段々とわいてくる。
………いや、アカツキさんはランを助けるって約束してくれた。マヒルさんは自分達を信じてって言ってくれた。だからきっとだいじょうぶ………。

「アカツキさん。マヒルさん。お願い……!」

「………なあ、一つ聞きたい事があるのだが、いいか?」

「…………!?」

~~~

「真空波!!」

「スピードスター!!」

わたしとマヒルの攻撃がニドリーノとイシツブテに直撃する。それによってイシツブテは倒せたが、ニドリーノはまだ体力が残っていた。が、その直後にマヒルの電光石火によって倒された。

「ふぅ。……だいぶ登ってきたけど、リームさんとランちゃんはいないね……」

「だな。わたしの予想だが、二人はこの山の頂上に居ると思う。あの映像、どこかの山の頂上みたいな景色だったんだ。それにこの山、映像の景色とよく似ているんだ。だから間違いないと思う」

「そっか、なら頂上まで急ごう!」


「ここ?リームさん?」

「……そうだ。」

ランの質問を返すリームの顔からは笑みがこぼれている。

「けど、ここいきどまりだよ?落とし物、どこにあるの?」

辺り一面岩に囲まれているここでは自分の探している物は見つかりそうに無い。
そう思ってランはリームに聞くとリームは低い声で答えた。

「落とし物はな……ここには無いんだよ」

「えっ?……それじゃあ、お兄ちゃんは?お兄ちゃんはあとからすぐくるんでしょ?」

「いや、お兄ちゃんは来ない。実はな、オレはお前のことを騙していたんだよ。」

リームはさっきと変わらないトーンで淡々とランに話す。
そしてまた、トーンを変えずにランに話かける。

「……お前の真後ろに小さな穴があるだろ?そこには、ある盗賊団が財宝を隠したって噂があるんだ。だから……その穴に入って取ってきてくれないか?」

ランの目の前にいるリームはトレジャータウンで会った頃とは別物だった。

「……だいじょうぶ。言うことさえ聞けば、ちゃんと返してやるからよ」

「イ、イヤッ!!」

もうランの頭の中は恐怖の二文字で支配されていた。
リームから急いで逃げようとするも、直ぐにリームに捕まってしまう。

「全く……言うことを聞かないのなら痛い目に遭わせるぞ!」

「た、助けてっ!!」


「待てっ!!」

「な、何でお前達がここに!?」

リームはわたし達を見てリームの表情は余裕そうな様子から一転して焦りの表情が浮かんでいる。

「お、お尋ね者リーム・バサルト!お前を捕まえにきた!」

そう言ったマヒルは自分の言った言葉とは裏腹に、お尋ね者と対面した恐怖からなのか震えていた。
そんなマヒルの様子を見たリームの顔には余裕が戻っていた。

「……なんだ、探検隊だと思って焦ったが、お前らまだ新米だろ?そんなお前らにオレを捕まえられるのか?」

「いけるか?マヒル」

「………うん。大丈夫、やってみせるよ」

「……よし。なら、行くぞ!」

そう言ってわたしはリームに向けて電光石火を放った。が、リームはギリギリのところで回避した。

「……はあっ!!」

「ふっ」

マヒルの放ったフェイントもリームは回避し、そのままマヒルに念力を食らわす。
……それなら必中技で!

「スピードスター!!」

わたしはリームに向けて星形の弾を放つ。
複数の星弾がリームに向かって飛んで行くがリームは表情を崩さずに右手を前に出す。

「無駄だ。」

リームに星弾が近付いた瞬間、念力によって星弾は全て打ち消された。

「なっ!」

「次はこっちの番だ。念力!」

「くっ!」 

リームの放った念力によってわたしは突き飛ばされる。

「アカツキ!……電光石火!!」

「ふん」

リームの攻撃の隙を狙ってマヒルが攻撃するが、またしても避けられる。……だが

「はあっ!!」

「何っ……!?ぐっ!」

マヒルはその勢いのまま、リームに回し蹴りを放つ。
リームはマヒルの攻撃を回避する事ができず、マヒルの蹴りが直撃した。
……!攻撃が当たった。なら……。

「電光石火っ!!」

「ちっ!」

わたしも続いて攻撃するが、リームに避けられる。

「くそ、あいつ、何でこんなにわたし達の攻撃を避けられるんだ?まるで技がくるのがわかってるみたいだ……」

「技かくるのがわかる?……!そっか!予知夢だ!だからこんなに避けられるんだ!」

「……予知夢?」

「うん。リームの種族、スリープの特性は予知夢って言って次に相手の出す技がわかるんだよ」

なるほどな……だからわたしとマヒルの技を簡単に避けられる訳だ……。
なら、それだったら……!

わたしは電光石火でリームの懐に飛び込む。そして……

「弾けろ!スターマイン!!」

わたしはリームにスピードスターよりも大きな一つの星形の弾を放つ。

「無駄なんだよ!念力!!」

「ふっ」

その星形の弾を先ほどと同じようにリームは念力で相殺しようとする。
しかし、星弾はリームに相殺されるよりも前に弾け、無数の星弾がそこから放たれる。
星弾はリームに直撃し、リームは上に吹き飛ばされる。

「何!?」

「今だ!かみつくっ!!」

「ぐはっ!!」

効果抜群の技を食らってリームは膝をつく。

「……技がくるってわかっても避けられなきゃ意味がないってな!」

「ぐっ……ならば!」

リームは再び念力を放とうとしたので、いつでも避けられるようにわたしとマヒルは身構えた。
……だが、リームの放った念力はわたし達には当たらなかった。……いや当てなかった。

「……きゃあっ!?」

「なっ!?」

そう、リームはわたし達ではなくランに向けて念力を放っていた。


「ランちゃん!今助けるから!」

「………」

そう言ってマヒルはもう一度リームに蹴りを放とうとする。
しかし、その瞬間リームは拘束していたランを念力で丁度、マヒルの攻撃が当たる位置に引き寄せる。

「……っ!?」

「……念力」

ランを盾にされ、マヒルが攻撃を止めた瞬間リームの放った念力が直撃し、地面に叩きつけられる。

「ぐはっ!」

「マヒル!!」

わたしは急いでマヒルの所へ駆け寄り、マヒルにオレンの実を食べさせる。
それで少しは回復したのかゆっくりと起き上がる。

「ダイジョブか……?」

「……うん。何とか、ありがとうアカツキ」

マヒルはそう言っているが効果抜群の技を食らった上、地面に叩きつけらていてダメージは多そうだった。
リームには予知夢があるから普通の技じゃ簡単に避けられる。かといって避けられないような攻撃をしようとしてもさっきみたいにランを盾にされると手が出せない、何故かリームの予知夢に関係なく攻撃できるマヒルも無理させることは出来ない……。くっそ、こんな状況どうすればいいんだよ……!

「……!アカツキ危ない!!」

「……え?」

マヒルの声を聞いて前を見ると、リームの放った念力がわたしの直ぐそばまでに迫っていた。
気がついたらわたしはマヒルを念力に当たらないように突き飛ばしていた。

「……!アカツキ!!」

「くっ……!」

「ふふっ……!」

目の前に念力が迫ってくる。少しでもダメージを押させるためにわたしは身構えた。
そして、念力が当たろうとしたその瞬間、わたし達やリームが居る場所とは違う方向から炎が放たれ、その念力を相殺した。

氷華 ( 2021/09/29(水) 17:50 )