第七.五話 嵐の森に駆ける者
強い風と雨が吹き続ける森の中、一匹のポケモンが駆け抜けて行く。
「嵐になるとは聞いていたが、まさかここまで強くなるとはな……」
嵐か……“アイツら”は無事だろうか……あの時に散り散りになってからずっと会っていない。
それにアイツらは……
「……いや、アイツらはきっと生きている……」
……今はそうだと信じて俺は俺のやるべき事をやるだけだ
そう言ってポケモンは再び嵐の中、森を走り始める。
道を遮る敵ポケモン達を全て倒しながら森の奥へと進んで行くと、突然少し開けた場所にたどり着いた。今まで感じていた敵ポケモンの気配も一切感じない……恐らくここが最深部だろう。
そして、その奥に二本の基礎に守られているように囲まれた、美しくそして、神秘的な光を放つ翡翠色の歯車があった。
「これが……時の歯車……」
その美しさにポケモンは言葉をもらす。そして、ポケモンは躊躇い無くその歯車に手を伸ばし、掴み取る。
「
……まずは一つ目……●●●●、●●●、無事でいてくれ……」
そんなつぶやきもかき消すかのように大きな雷鳴が辺りに響く。
……そして、その雷の音を最後に森は静寂に包まれる。
そこにはもう、そのポケモンの姿は無く、ただ色と音を失った森が広がっているだけだった。