第一章 交差する運命
第四話 探検隊活動開始!
「それじゃあ。探険隊になった君達に、ボクからのプレゼントだよ。」

そう言ってサギリは小さな箱を取り出して、わたし達の前に置いた。

「これは……?」

「これはポケモン探険隊キット。探検に必要な物が入ってるんだ!さあ開けてみて!」

そう言われ、箱を開けて見ると中には羽のついた丸いバッジや茶色い鞄などが入っていた。

「じゃあ説明するね。まずは探険隊バッジ。」

そう言いながらサギリは箱の中から羽のついた丸いバッジを取り出した。

「これはボク達探険隊の証で、ランクが上がると色が変わるんだ!それに、ダンジョンの中から外に自分やメンバー、依頼主とかを転送出来るよ。」

へぇ、自分達の身分証明の他にも、ダンジョンから出るための道具にもなるのか……。
まあ探険隊の仕事の事を考えればあってもおかしくはないか。てか転送するって一体どんな技術だよ……。

「次はトレジャーバッグ。君達がダンジョンで手に入れた物を仕舞っておけるんだ。また、君達の活躍によってバッグの中身がどんどん大きくなる不思議なバッグなんだよ♪」

何というかすごいな。さっきの転送といい……このバッグといい……ここの技術は。

「そして……。ってもうこんな時間!残りの道具は後で君達で確認して♪ヒビキ。二匹を部屋に案内してあげて。」

~~~

「ここがお前達の部屋だ♪明日から忙しいから夜更かししないようにな。」

「ああ。」

「はーい。」

ヒビキに連れられてこれからわたし達が過ごすことになる部屋に案内された。
部屋にはベッドか2つ敷かれていて、窓から入る光と壁に掛けられたランプの光が部屋を照らしていた。

「それじゃ、残りの道具を確認するか。」

「うん。じゃあまずはこれから。え~となになに……。」

そう言ってマヒルは地図のような物と、いかにも手作り感のある説明書を取り出した。

「『これは不思議な地図。君達が地図の雲のある場所を探検すると、その場所の雲が晴れるとても便利な地図なんだよ♪』……だって、探検したら雲が晴れるって不思議だね~。」
 
「そうだな。じゃ次のを……ってなんだこれ?」

箱の中には透明な色をしたスカーフが二枚、鞄の中に入っていた。

「え〜と、そのスカーフはスカーフに触ったポケモンの波動の色がわかるんだって。」

「そうか……なら触ってみるか。」

「そうだね。」

そして、わたし達はスカーフを触ってみた。
すると、スカーフの色がすぐに変化し、わたしはライトブルー。マヒルはオレンジに色が変化した。

「マヒルの色はオレンジか……なんとなくだけど、マヒルに合っているな。」

「ありがと。けど、アカツキもその色が似合ってると思うよ。」

「そうか?」

「うん!とっても。」

即答か……まあ、この色は嫌いじゃ無いしいいか。

「アカツキ。明日は早いみたいだし、早く寝よ?」

「そうだな。じゃ、おやすみ。」

「うん、おやすみ〜」

~~~

「ん……朝か……。」

窓からは朝日が差し込んでいて、部屋が明るくなっている。
ふと、外を見てみると海面が朝日に照らされて、キラキラと輝いていた。

「すごい……!」

気づいたらわたしは窓から身を乗り出して外の光景を眺めていた。
うん?何でわたしはこんなに興奮してるんだ?
確かに記憶を失くしてから初めて見る朝日だけれど、記憶喪失になる前、人間の時は見ていたと思うのに……。

「うーん……。」

そんな事を考えていると、ドゴームというポケモンが部屋に入ってきた。
すると、ドゴームはその大きな口を開けて息を吸い始めた。
まさか……これって……。
それにデジャブを感じたわたしは急いで耳を手で塞いだ。

「起きろおおあお!!!!朝だぞおおおおお!!!!!!」

「うるせぇ!起きてる!起きてるから止めてくれ!」

わたしは大声を出しているドゴームに聞こえるように叫んだ。
けど、何だよあの大声。昨日のサギリ程じゃ無いが何つー声だよ……。

「何だ。起きていたなら先に言ってくれ。」

「いや!わたしが言う前にはもう叫んでただろ!」

「そうか?とにかく、サギリ親方の逆鱗に触れない内に来いよ!」

そう言ってドゴームは部屋から出ていった。
あいつ、収集大声だったな。けどあの声どっかで聞いたような……。

「まあいいか……。」

「ふあぁ……おはよアカツキ……何かあったの?」

「まじか…………。」

「…………?」

~~~

その後、寝ぼけていたマヒルに説明してから、わたし達は急いで広間へと向かった。
広間にはギルド弟子だと思われるポケモン達がいた。もちろんその中にはさっきわたし達を起こしに来たドゴームもいた。

「遅いぞ!新入り!」

「お黙り!……まあいい。リビルド、自己紹介だ。」

「は、はい!」

わたしとマヒルは弟子達の前に立つ。
こう見ると、意外といるんだな弟子……逃げ出す奴もいるって言ってたが。
マヒルを見ると緊張してたから、わたしからすることにした。

「じゃ、わたしから。チームリビルドのアカツキ・ムンストラだ。よろしく。」

「お、同じくチームリビルドのマヒル・サンルトルです。よ、よろしくお願いします!」

「よし。次はお前達の番だ♪」

ヒビキがそう言うと、ピンクのスカーフを身につけた向日葵のようなポケモンが話始めた。

「ではわたくしから。わたくしはキマワリのソール・ルマリアですわ!二匹共、これから宜しくお願いしますわ!」

テンション高いな……。
そして、ソールの自己紹介に続いて、残りの弟子達も順に自己紹介をはじめた。

「ワシはドゴームのボリス・スモークオだ。主にグラドと見張り番の仕事をしている。よろしくな。」

相変わらず声が大きいな……てか、どこかで聞いたことがある声だと思ったらわたしが穴の上に乗った時に聞こえてた声か。

「ボクはディグダのグラド・フローラムです。さっきボリスさんが言ったように、ボリスさんと一緒に見張り番の仕事をしています。」

で、あいつがあの時、わたしとマヒルの種族を言い当ててた奴か。

「あ、あっしはビッパのベレー・ペルドートでゲス。宜しくでゲス。」

あっしとゲスって、これまた濃いキャラだな。

「ヘイヘーイ!オレはヘイガニのハイド・シトリムだ!宜しくな、お前ら!」

これは、さっきのソールとは違った感じでテンションが高いな。
というかこのギルド、キャラが濃い奴が多くないか?

「私はチリーンのミスズ・リマールよ。みんなのご飯作りを担当しているわ。よろしくね。」

まともだな……それに今までの奴らを見てると余計にそう思う。

「ワタシはダクトリオのグラウン・フローラムだ。宜しく頼む。」

ん?グラドと同じ名字ってことはグラドとは親子か?

「ワシはグレックルのポディス・コアイズだ。よろしくな。グヘヘ……」

「何か……変わったポケモンが多いね……。」

そうマヒルがわたし以外には聞こえないような声で話してくる。
確かにそう思うけど、それ、声に出しちゃ駄目なやつだろ……。
そして、最後のポケモンの自己紹介に移る。

「……ヒトカゲのカガリ・シルバールだ。」

いや、短いな!
他の奴らも短かったが、あいつは一番短かったぞ。

「よし。全員の自己紹介も済んだな。では、これから朝礼を行う。」

いや、自己紹介こんなでいいのかよ!
そう言おうと思ったが、また面倒くさい事になりそうだったので止めた。

「それでは親方様、一言お願いします♪」

ヒビキの言葉に合わせて弟子達の視線がサギリに集まる。一体、どんな事を言うのかと思って、わたし達もサギリを向いた。
しかし……。

「……ぐうぐう………」

聞こえたのはサギリのねいきだけだった。しかも、目を開けて立ったままで。

「……ねえ、もしかして寝てる?」

「……ああ、もしかしなくても寝てるだろうな。」

そんな事を話していると、ヒソヒソとわたし達以外の話声が聞こえてきた。

「(相変わらず、サギリ親方って凄いよな……。)」

「(ああ、起きてるように見えて、実は目を開けて寝てるんだもんな……。)」

やっぱり、サギリは目を開けたまま寝ているようだ。
それに、あいつらの話し方からして毎日こんな感じぽいし……大丈夫かこのギルド……。

「……コホン。親方様ありがたいお言葉ありがとうございました♪それでは、朝の誓いの言葉始め!」

「何だ?朝の誓いって?」

「ごめん、わからない……。」

そう話しているとわたし達を置き去りにして、弟子達は声を揃えて言い始めた。

「「「ひとーつ! 仕事は絶対サボらなーい!」」」

「「「ふたーつ! 脱走したらお仕置きだ!」」」

「「「みっつー! みんな笑顔で明るいギルド!」」」

「さあみんな♪仕事にかかるよ♪」

「「おーーーっ!!」」

そうして、朝礼を終わり弟子達はそれぞれ持ち場へと散っていった。
かく言うわたし達は何をすればいいのかわからず、その場に立ち尽くしていた。すると。

「アカツキ、マヒル、何をしている?お前達はこっちだ♪」

~~~

ヒビキに連れられ、二階の端の方へやって来た。
壁を見ると看板があり、そこにはいくつかの紙が張り付けてあった。

「お前達にはまずは、この掲示板で依頼を受けてもらう。最近、悪いポケモンが増えているのは知ってるな?」

「うん。確か時が狂い始めた影響で悪いポケモン達が増えているんだよね?」

時が……狂い始めてる……?どういうことだ?時が狂うなんて………。
そして、時が狂ったせいで悪いポケモンが増える……。
一体。どういうことなんだ?

「そうだ。後、時が狂い始めた影響なのかわからないが、不思議のダンジョンが各地に広がっている。」

「不思議のダンジョン……って言うと昨日、わたし達が入った洞窟みたいな所だったか?」

「お、行ったことがあるのか♪それなら話は早い。依頼の場合は全てダンジョンだからな。」

「そっか……それで僕らは何をすればいいの?」

「おっと、そうだったな。では……お前達にはこの依頼を受けてもらう。」

そう言ってヒビキは掲示板から一枚紙を剥がしてマヒルに渡した。

「えーと、何々……。」

初めまして。ワタシバネブーと申します。
ある日、ワタシの大切な真珠が盗まれてしまい、落ち着かなくて、もう何もできません!
そんな時、ワタシの真珠が湿った岩場という場所にあると聞きました。
ですが、そこは危険な所らしく、怖くて行けません。
なので、お願いします。誰か、ワタシの真珠を取ってきてくれないでしょうか?
バネブーより。

「……つまりは、落とし物を拾ってこいってことか。」

「そうだ、お前達はまだ新入りだからな。まずはこう言った依頼で仕事に慣れてもらうよ。」

まあわたしはこの体にもまだなれてないから別に構わないが……。マヒルは納得してるか?
そう思ってマヒルの方を見ると案の定、少し残念そうな顔をしていた。

「……わかったよ。行こう、アカツキ。」

~~~

「ここが湿った岩場か……。」

湿った岩場の名に偽り無く、空気がジメジメと湿っていて、あちこちに苔の生えた岩が
見える。

「やっぱり、ジメジメしてるね……。」

マヒルはまださっきの事を気にしているのか、暗い表情をしている。

「まさか、探検隊としての最初の仕事が落とし物拾いなんて……どうせならお宝を探したりしたかったよ……。」

「まあ、仕方ないんじゃないか?わたし達は探検隊としてまだまだひょっこなんだからさ。」

「そうだけど。ちょっとぐらい夢見てもいいじゃんか……。」

「だったら、この依頼をとっとと終わらせて、そんな依頼を受けれる探検隊になってやろうぜ。」

「……うん!」

そうして、わたし達は湿った岩場の探索を始めた。

そして、少し時は進んで地下6階。

「食らえ!スピードスター!!」

わたしの放った星型の弾幕が二匹のアノプスに命中する。しかし一匹は当たり所が良かったのか、倒れずにマヒルの方へ行った。 

「悪い。一匹そっちに逃した!」

「オッケー、電光石火!」

マヒルの一撃によって残ったアノプスも倒れた。

「ふう、この階でも真珠は見つからないか……。」

「そうだね。けどもう少しで奥地だと思うし、きっと見つかるよ!」

「……そうだな。」

最初は暗かったマヒルも、探索をしていく内に段々と元の調子に戻ってきた。
そして、これで6回目になる階段を降りると、今までの同じような外観とは違う部屋にたどり着いた。おそらくここがこのダンジョンの奥地だろうな。

「お、あれじゃないか?バネブーの真珠って。」

部屋の奥の方にはピンク色の丸い真珠が一つ、ポツンと置かれていた。

「そうだよ!……けどどうしてこんな所に……。」

「さあな。それは捨てた奴のみぞ知る。だな。」

そんな事を言いながら、わたし達は真珠を回収して探索隊バッジを使い、ダンジョンから脱出した。

~~~

「真珠を取ってきてくれてありがとうございます!これがないと落ち着かなくて……。本当にありがとうございました!」

そう言って依頼主のバネブーはいくつかの道具とお金を置いて嬉しそうな様子でギルドを去って行った。

「お前達、初めての依頼達成ご苦労♪……よしお前達は……このくらいかな♪」

そう言うとヒビキはバネブーが置いて行ったお金を回収して、その内の一部をわたし達に渡した。

「えっ!?どうして?」

「そうだ、どうしてこんなに取るんだ?」

「これがギルドのしきたりなんだ。我慢しな♪」

ヒビキわたし達の質問も一言で済ませ、下へと降りて行った。
あいつこの手の質問に慣れてるな……

「うう……。」

「……頑張ろうなマヒル。」

「……そうだね。」

そんな事もありながらも無事?わたし達は探検隊としての初日を終えることができた。

氷華 ( 2021/08/07(土) 19:09 )