第三話 結成!探険隊リビルド
「……ねえ。もし、アカツキが良かったら……僕と探険隊になってくれないかな?」
「探険隊?」
わたしがそう聞返すとマヒルは目を輝かして話しだした。
「うん。簡単に言うと探険隊は不思議のダンジョンを探険することが仕事のポケモン達のことをなんだ。困っているポケモンの依頼を受けたり、お尋ね者を捕まえたり。後はまだ誰も行ったことの無い未知の場所を冒険したりするんだ!」
未知の場所を冒険。か、面白そうだな。それに、探険隊として活動していけばわたしがポケモンになった理由も分かるかもしれないしな。
「なるほどな……。やるよ、探険隊。」
「ホント!?」
そう言った瞬間、マヒルの顔がパアッと明るくなった。
……けどその前にひとつ聞いておきたい事がある。
「けどマヒル、おまえどうして今まで探険隊にならなかったんだ?」
「……僕は小さい頃から昔話や伝説とかが大好きでさ、そんな話を聞いてく内に僕もそんな所を探険したいって思うようになったんだ。それに、これを見つけてからより探険隊に憧れるようになったんだ。」
そう言いながら、マヒルは首に掛けていた欠片を見せてくれた。
「それってさっきあいつらに盗まれたやつだよな?確か、おまえの宝物だったよな。」
「うん、これは遺跡の欠片。って言っても僕が勝手に呼んでるだけだけどね。これ、一見ガラクタに見えるけど、よく見ると……ホラッ、不思議な模様が描かれているんだ!」
…………。確かに不思議だ。こんな石の欠片に綺麗に模様が描かれているなんて……。
それにこんな模様は見たことが無い……。
……まあ。わたしは記憶が無いからどうなのかわからないけどな。
「この模様にはきっと意味があるに違いないよ。この欠片が伝説的な場所や秘宝への鍵になっている……そんな気がしてならないんだ。……だから僕は一流の探険隊になってこんな欠片の謎を解き明かしたい!それが僕の夢なんだ。」
……なるほどな。だからマヒルはあんなにあの欠片、いや遺跡の欠片大切にしていて、探険隊になりたかったのか……。
「けど……僕、意気地無しでさ……。いつも肝心な時に勇気が出せなくて……。だからいつも探険隊に弟子入りしようとしても最初で逃げ出しちゃうんだ………。」
「そうか………。なら絶対に探険隊になってその欠片の謎を解かないとな!」
「え!?」
わたしの反応が予想外だったのかマヒルは驚いた顔をしてこっちを見ている。
「ん、どうした?そんな豆鉄炮を食らったような顔をして。」
「どうした?って、何とも思わなかったの?『意気地無し』とか『弱虫』とか……。」
「別に。性格は人、いやポケモンそれぞれで違うんだから、それを否定するなんて事はしねーよ。それに、マヒルは素性もわからないわたしを探険隊に誘ってくれたんだ。それにはちゃんと応えるつもりだ。」
「………!ありがとう!アカツキ。改めて、よろしく!」
「ああ、こちらこそよろしくな。マヒル。」
~~~
「ことがプクリンのギルドか……。」
わたし達が居た海岸から丁度反対側、長い石段の階段を登った先にその建物はあった。もう辺りはすっかり暗くなっていて、建物の両端に二つだけ置かれたかがり火の光で周辺の光景が見えている。
「うん。一人前の探険隊になるためにはここみたいなギルドに登録して修行を積む必要があるんだ。だけどギルドに入るためにはあの見張り穴に乗らないといけないんだ………。」
そう言った瞬間マヒルの足が震えだした。
なるほど、これがマヒルがこのギルドに弟子入りできなかった原因か……。まあ確かに穴から落ちないように穴の上に細かい格子が張ってあるけれど、この上に乗るって考えるとちょっと怖いな……。
「けど、今はアカツキも一緒なんだ。勇気を出さないと。」
マヒルはそう自分に言い聞かせながら、恐る恐る見張り穴の上に乗った。
すると穴の中から声が聞こえてきた。
「ポケモン発見!ポケモン発見!」
「誰の足形?誰の足形?」
「足形はリオル!!足形はリオル!!」
「………よし。良いぞ。」
「やったなマヒル!」
そう声をかけてもマヒルは一切万能せず黙ったまま格子の上で立っている。
「……マヒル?」
「…………や、やった!出来た!出来たよ!」
そんなに喜ぶくらいマヒルはここで失敗していたのか………。
けど、いくらなんでも喜びすぎじゃないか……?
「ん?もう一匹いるな?お前も格子の上に乗ってくれ。」
「よし、次はわたしの番だな。」
そう言ってわたしも穴の上に乗った。
「ポケモン発見!ポケモン発見!」
「誰の足形?誰の足形?」」
「足形は……エート……。」
そう言って穴の下から聞こえる声が途切れる。
うん?どうしたんだ??さっきはマヒルの種族をすぐに言い当てていたのに……。
そして、少しの間をおいてからまた穴の下から声が聞こえてきた。
「足形は……多分イーブイです……。」
自信の無さそうな声で声はわたしの種族を言い当てる。
けど、多分って……。
「なんだ!多分って!?グラド、ポケモンの足形を見て、どのポケモンなのか見分けるのがお前の仕事だろう?」
「だ…だってぇ……。この辺では見かけない足形なんですもん……。」
そんな声が下からずっと聞こえてくる。
ってかイーブイってそんなに見かけないポケモンなのか
「……まあ確かにイーブイはこの辺だとあまり見かけないが……。怪しいやつでも無さそうだしな……まあいい、入れ。」
「と、とにかく入ろっか……。」
「そ、そうだな……。」
中に入るとそこには何か文字の書かれた看板と地下に続く梯子があった。
なるほど、ギルドって言う割には建物が小さいと思ったが地下にあったのか。
「アカツキ。降りてみようよ!」
「ああ、そうだな!」
「わあ~!ここがプクリンのギルドかぁ!ポケモン達がたくさんいるよ!」
「そうだな。」
梯子を降りるとそこにはたくさんのポケモン(探険隊だと思われる)がいた。
「おい!」
「うん?」
「何だ?」
声のした方を振り返るとそこには頭が音符のような鳥のポケモン。ペラップがいた。
「さっき入ってきたのはお前達だな?」
「ああ。そうだが……。」
「私はヒビキ・ラドスト、ここらで一番の情報通でサギリ・クルスタ親方一の子分である♪勧誘やアンケートはお断りだよ。さあ。帰った帰った。」
なんだこのポケモン、いきなり帰れって……。
それにわたし達はそんな理由でここに来たわけじゃ無いんだけれども。
それはマヒルも同じだったのか、慌ててヒビキに言い返す。
「ちょ、ちょっと待って!僕達は探険隊になりたくてここに来たんだよ!」
「え!た、探険隊!?」
マヒルがそう言った瞬間ヒビキはとても驚いた。
てかそんなに驚くもんなのか?
「今時珍しい子だよ。このギルドに弟子入りしたいとは……。修行が厳しくて脱走するポケモンも多いってのに……。」
「ねえ。探険隊の修行ってそんなに厳しいの?」
「い、いやいや!?そんなことないよ!探険隊の修行はとーっても楽チン!」
「いや、さっきと言ってることが真逆なんだが……。」
「そっかー♪そういうことなら早く言ってくれれは良かったのにー♪じゃあチーム登録をするからついてきてくれ♪」
「う、うん……。」
~~~
「ここがギルドの地下二階。主に弟子達が働く場所だ。」
「あ!見てアカツキ。ここ地下二階のはずなのに外が見えるよ!」
「あ、本当だな。」
「このギルドは崖の上に建っているからな。さ、行くぞ。」
ヒビキはマヒルに説明すると、わたし達を大きな扉の前へ案内した。
「さあ、ここが親方様のお部屋だ。くれぐれもそそうが無いようにな。」
「はーい。」
~~~
「親方様。ヒビキです♪こんど新しく弟子入りを希望する者を連れて来ました。」
そうヒビキが言った先には一匹のプクリンがわたし達に背を向けて立っている。
恐らくあのプクリンがヒビキの言っていた親方様だろう。ただ、ヒビキが話しかけても何も言わないが……何かあったのか?
「……?親方様?」
「やあ!僕はボクらサギリ・クルスタ。君達だね?探険隊になりたいのは。」
「は、はい!」
「それじゃあ。君達のチーム名を教えてくれないかな?」
チーム名か……そういえば考えていなかったな……。
そう思っているとマヒルが小声でわたしに話してきた。
「……ねえ。アカツキ何かいいチーム名ってある?」
「そうだなぁ……ってお前も考えていなかったのかよ!」
「ごめん!」
そう言ってマヒルは両手をあわせてわたしに謝る。
ずっと探険隊に憧れていたパートナーが肝心のチームを全く考えていなかったことが判明した、まあそれはいいとしてチーム名か……何かいい名前あるか……?
そう考えていると、ふと、ひとつの言葉が思い浮かんだ。
「……ならリビルドって言うのははどうだ?。」
「リビルドか…………。うん!じゃあリビルドで!」
「了解。じゃあリビルドで登録するよ。登録♪登録♪……」
そう言いながらサギリは大きく息を吸い始めた。
「お前達!早く耳を塞げ!」
「え、何で?」
「いいから早く!」
ヒビキに言われて耳を塞ぐ。
そして……、
「たぁーーーーーーーーーーーっ!!」
「「うわぁ!?」」
体が吹き飛ばされそうなほど大きな音が部屋中に響く。
「おめでとう!これで今日から君達も探険隊だよ!」