第二話 小さな勇気の戦い
わたし達はヴァンとモックを追って海岸の洞窟を進んでいた。
海の近くにある洞窟だからか、ジメジメしていて、洞窟のあちこちから海水が入って来ている。
「そういえば、この洞窟って以外と広いんだな。外からだとあまり広くは無さそうだったが。」
「多分それはここが不思議のダンジョンだからだと思うよ。」
「不思議のダンジョン?」
「うん。細かいことは省くけど、不思議のダンジョンは入る度に形が変わったり、何故かお金や道具が落ちていたりするとか……。まあ、
とにかく不思議な場所なんだ。」
「へぇ、なるほどな。」
「後、気をつけ…アカツキ、後ろ!」
「え?」
マヒルに言われて後ろを見たが、もう遅くわたしの後ろに居たシェルダーの体当たりを食らってしまった。
「くっ、いきなり何すんだ、よ!」
そう言ってシェルダーに体当たりを返すとそのままシェルダーは逃げて行った。
「大丈夫?アカツキ。」
「ああ。けど、どうしてあのポケモンはいきなり攻撃してきたんだ?あいつになんかした訳でもないのにな…」
「ああそれは、ダンジョンにいるポケモンはダンジョンに入ってきたポケモンを攻撃するんだ」
「そんな事があるなら先に言ってくれ……」
「……ゴメン」
そんな事もありながらも洞窟を進んで行くと奥に見覚えのあるポケモンが見えた。おそらくヴァンとモックだろう。
「おっ、居たなあいつら。マヒルあいつらに言ってやれ!」
「う…うん。」
「うん?」
「なんだ、誰かと思ったら弱虫クンじゃないか。」
話し声に気がついたのかヴァンとモックはわたしとマヒルの方を向いた。
そんな二匹を睨みながらマヒル震える声で言った。
「ぼ…僕から盗んだ物を返してよ。あれは僕にとって大切な宝物なんだ!」
「へへっ。やっぱり宝物だったか。なら、ますます返せなくなったな。」
「え……!?」
「ああ、売れば高値が付くかもな。」
二匹はマヒルにわざと聞こえるようにあの欠片をどうするか話している。
あいつら……!ますますって事は最初からマヒルに返すつもりは無いってことか!……なら。
「……電光石火」
「うぐっ!なんだ、いきなり!」
わたしはヴァンに攻撃してあいつが体勢を崩した隙に欠片を掠めとる。
「……!お前、いつの間に。返しやがれ!」
「返すも何もこれは元々マヒルの物だろ?それに、お前らも同じようなことしてただろが。」
「う…うるせえ!」
そう言ってヴァンは牙を出して突撃してきた。
……完全に逆ギレだなこれ…。
「よっと、危ない危ない。」
「モック!」
「おう、体当たり。」
ヴァンの合図でモックがわたしに攻撃してくる。わたしはヴァンの攻撃を避けたばかりで避けられない。
「くっ……!」
「アカツキ危ない!……真空波!」
ヴァンの攻撃を避けた瞬間体当たりをしようとしたモックが、マヒルが放った真空の波によって吹き飛ばされる。
あいつ、あんな事ができるのか……。
「大丈夫?アカツキ。」
「ああ、助かった。…と今度はこっちからだ!電光石火」
「へっ、何度も当たるかよ。」
「なら、これでどうだ!」
そう言ってわたしはここに来る途中で拾った種を投げつける。そして、投げられた種はヴァンに当たった瞬間に爆発した。
「ヴァン!」
「よ…よし、僕も……真空波!から……。」
「ぐっ……」
「これでどうだ!」
「なっ……!」
マヒルが真空波を放ち、それを食らってバランスを崩したモックを蹴り飛ばす。
あいつ、割りと戦えるじゃないか、なのにどうしてあの時怯えたたんだ?……まあ今はどうでもいいからいいが。
「うっ……グッ……。」
「どうだ?まだやるつもりか?」
「ヴァン、こうなったら……。」
「ああ……ずらかるぜ!」
そう言って二匹は洞窟から一目散に逃げて行った。
「………逃げたね。」
「……そうだな。まあ、こいつはあいつらから取り戻せたからな。ほらっ。」
そう言ってわたしはマヒルに欠片を返した。そして、わたし達も洞窟を出た。
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わたし達が洞窟を出ると洞窟に入るよりも日が傾いていた。より辺りがオレンジ色に染まっている。
「アカツキ、今日は本当にありがとう!」
「ああ、どういたしまして。」
「そういえば、アカツキってこれからどうするの?人間だったことしか覚えてないんだよね?」
そうだ。さっきはマヒルのことを成り行きで助けたが、わたしはこの先どうすればいいんだ?この世界のこともよく知らないし、それに行くあてなんてもちろん無いしな……。
「…………。」
「……ねえ。もし、アカツキが良かったら……僕と一緒に探険隊になってくれないかな?」