第一話 夕暮れの海岸で
「…やっぱり、今日も駄目だったなぁ……。」
僕は暗い気持ちで道を歩いて行く。
…いつだってそうだ。僕はいつも肝心な時に勇気を出せなくなってしまう。
今日だって、今日こそは!って気持ちで僕の宝物を持って行ったけれど結局、いつもと変わらずあの声に怯えて……。
「どうして僕はこんなんなんだろう……。このままだと何も変わらないって分かってるのに。」
そんなことを考えながら歩いていると海岸にたどり着いた。
「うわぁ!やっぱりここはいつ見ても綺麗だなぁ!」
何か悩みがあったら僕はいつもこの海岸に来る。どこまでも続く海と夕日を反射するクラブの泡の景色はいつも僕に元気をくれる。そして、明日も頑張ろうって気持ちにしてくれる。
……最近ではここにくるのが習慣になりかけているけど。
「ん?……なんだろうあれ……?」
ふと、浜辺の方を見てみると、奥に何かがあった。気になって近づいて見ると、そこにはイーブイの女の子が倒れていた。
「ねぇ!君、大丈夫?」
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「ん………。ここは?」
目が覚めるとわたしは浜辺に倒れていた。流されてきたのか、体が濡れていて気持ち悪い。
……というよりもここはどこだ?
「あ!目が覚めたんだね、良かった!」
うん?誰かいたのか。…もしかしてわたしを助けてくれたのかも、ならお礼を言わないとな。
「ああ、ダイジョブだ、ありが……!?」
「うん?どうしたの?……!?やっぱり何か怪我とかが!?」
わたしの目の前にいる、青と黒のポケモン、リオルはわたしのことを心配そうに見ている。
わたしのことを本気で心配してくれているんだな……。ってそうじゃなくて!
「何でリオルが、ポケモンが喋ってるんだ!!?」
「え、何で、ってポケモン同士だから当たり前でしょ?」
「何を言ってるんだ?わたしは人間だぞ?」
「けど、君はどこから見てもイーブイだよ?」
リオルに言われて体を見てみる。
茶色い体と大きな耳、モフモフの尻尾と首回りの毛。わたしはどこからどう見てもイーブイになっていた。
「どうしてイーブイに……。」
「……ねぇ、君、名前は?」
「……アカツキ。アカツキ・ムンストラだ。」
「アカツキだね。僕はマヒル。マヒル・サンストル。よろしく!」
わたしがリオル……マヒルに自分の名前を言うとマヒルもわたしに自分の名前を言ってくれた。
「それじゃ、アカツキ。アカツキは自分が人間だったこと以外で何か覚えていることはない?」
何か覚えていることか……。
……駄目だ。思いだそうとしてもまるで記憶に靄がかかったみたいに何も思い出せない。
「……いや。何も覚えていない。」
「そっか……。じゃあ………」
マヒルがそう言いかけた時。マヒルの背後から二匹のポケモンがぶつかってくる。そして、二匹がマヒルにぶつかった時にマヒルの首にかけていた石?が首から外れて砂浜に落ちる。
「イタッ!」
「おっと、ごめんよ。」
ぶつかってきた二匹のポケモン……確かドガースとズバットだったか?
とにかくあの態度から見ても申し訳ないって感じは一切無さそうな感じだ。
「なんなのさ!いきなりぶつかってきて!」
「ヘヘッ、分からないかい?お前に絡みたくてちょっかい出してるのさ。」
「えっ!」
「それ、お前のだろ? 」
そう言うとズバットはさっき落ちた石を拾い上げる。
「これはもらってくぜ。」
「あっ!それは……。」
あいつらの目的はマヒルにちょっかいを出すことじゃなくて、マヒルが持っていた物を盗むことだったのか……。
「ケッ、取り返しにこないのか。意気地無しなんだなお前。行こうぜヴァン。」
「クククッ、ああ、そうだなモック。じゃあな、弱虫クン。」
ヴァンとモックの二匹はマヒルにそう言って奥の洞窟へと入って行った。
マヒルの方を見ると、大切な物が奪われたためか、うなだれていた。
「………どうしよう……。僕の大切な宝物なのに……。」
「……行くぞ、マヒル。」
「……行くってどこに?」
「どこって決まってるだろ?おまえがあいつらに盗られた物を取り返しに行くぞ。」
「けど、いいの?アカツキには関係ないことなのに……。」
マヒルの顔は嬉しさや、申し訳なさとかの感情が混ざったような表情をしていた。
「ああ、わたしもあいつらのことが許せないしな。それに、あれはマヒルの宝物なんたろ?だったらマヒルが取り返さないといけないだろ?」
「……!うん!マヒル。お願い、僕の宝物を取り返すのを手伝って!」
「ああ、もちろんだ!」
そして、わたし達はヴァンとモックが行った洞窟へと進んで行った。