プロローグ
ここはポケットモンスター、縮めてポケモンという生き物達だけが暮らす地球によく似た星。
この星ではポケモンバトルというスポーツが大変人気で毎年さまざまなポケモン達が己を鍛え、ポケモンリーグという全国規模で開かれるバトル大会で誰がもっとも強いのかを競い合っていた。
そしてここ“オーステン”という1つの地方にあるフレイムシティという街で、1人のバトルが大好きなポケモンがポケモンリーグに挑戦すべく、故郷を飛び出して旅に出ようとしていた。
「えっとぉ〜、あれも入れてこれも入れて……だぁーっ、面倒だから適当に入れるっ!」
フサフサとした体毛を持ち、深緑色をした背中にクリーム色をしたお腹、三角形の小さな耳があり、顔は何処かネズミに近い。
そしてまるで炎みたいに赤い瞳を持っている――バクフーンという種族のポケモンが、フレイムシティの自宅でリュックに必要な道具などを入れて旅に出る準備をしていた。
しかし途中で面倒になったようで適当に道具をリュックに詰め込み始めてしまった。
アバウトなバクフーンである。
「よぉ〜し、準備完了!」
手当たり次第に道具をリュックに詰め、そしてそれを背中に背負うバクフーン。
「そんじゃ早速……っと、その前に」
出発しようとしたがすぐに立ち止まり、バクフーンは壁に掛けてある1枚の写真の前に立つ。
その写真には彼とは違う2人のバクフーンと小さなヒノアラシが写っていた。
「父さん、母さん、行ってくるぜ」
写真に写る2人のバクフーンにそう言うと、彼は家から出ていった。
「よぉ、もう出発すんのか?」
バクフーンが家から出ると、彼がよく知るポケモンが目の前に立っていた。
橙色を基調とした体色、竜を思わせるような顔をしており頭部には角が2本、首はやや長い。
背中には大きく立派な翼、そして長い尻尾もあり、尻尾の先端には炎が灯っている――リザードンという種族のポケモンだ。
リザードンはバクフーンの幼なじみである。
「おうよ。なぁリザードン、お前本当に俺と一緒に行かねぇのか?」
「前にも言ったろ? 俺は父さんと母さんと一緒に店の手伝いをしなきゃならねぇんだよ」
リザードンの両親はさまざまな道具や食品などを売るショップを経営しており、それの手伝いをしなきゃならないと言って彼は以前バクフーンから受けた誘いを断っていた。
本心ではバクフーンと一緒に旅に出てポケモンリーグに出場したいと思っているリザードンだが、親思いな彼は自分よりも親の事を優先したのだ。
「そっか……まぁ、お前が決めた事だからしょうがねぇよな。そんじゃ、俺は行くぜ」
「おう、頑張れよ」
リザードンに見送られ、バクフーンはフレイムシティを出発した。
「さて、ここから1番近いポケモンジムがある街はっと……フレイムシティのジムに挑戦出来ればよかったんだけど、バッジが2個以上ないとダメだって言われちゃったしなぁ……」
リュックから取り出したタウンマップを見つめながら目的地を探すバクフーン。
ポケモンジムとはポケモンリーグに挑戦する為には避けて通れない施設である。
ジムにはバトルのプロフェッショナルのポケモン達がおり、彼らにバトルを挑んで勝利してジムバッジを集める必要がある。
ジムバッジとはジムを勝ち抜いた証で、それを全部で8個集める事でポケモンリーグに挑戦出来るのだ。
「えっとぉ〜……おっ、ウォーターシティにジムあるじゃんか」
タウンマップと睨めっこする事数分、バクフーンはウォーターシティという街にジムがある事を知る。
「よっし、んじゃまずはウォーターシティに……ん?」
目的地をウォーターシティに決め早速向かおうとしたバクフーンだが、近くにある海岸で何かを発見する。
「あれは……えっ、ちょっ!?」
バクフーンは慌てながら急いで海岸へ向かう。
彼が発見したのは1人の倒れたポケモンだった。
赤と白を基調とした体色、竜を思わせるような顔をしていて姿は戦闘機に近い形をしている――ラティアスという種族のポケモンだ。
ラティアスは頭に怪我をしていて出血しており気を失っている。
「おい君! 大丈夫か!?」
バクフーンが呼び掛けるが、ラティアスは気を失ったままだ。
「と、とにかくこのままじゃマズいな……そうだ、リザードンの所なら!」
バクフーンは気を失ったラティアスをお姫様抱っこをするように両手でしっかりと彼女を持ち上げ、急いでフレイムシティへと引き返していった。