第一話 落ちてきた少女
[side レイド]
レイド「…ふう、今日の木の実も収穫だったな。」
俺はリオルの
レイド・アトス。父さんと一緒に暮らす
オル・ナレアという村で平和に暮らしているポケモンだ。今日もいつものように木の実の収穫を終え、村へ帰る時間である午後。森の中で村へと帰る道を歩いていた。
レイド「しかし、このあたりでも最近
不思議のダンジョンが出現し始めてるよな…。父さんによると不思議のダンジョンは世界の各地で発生していてどんどん増えているという話だし…。」
俺はさっき通った不思議のダンジョンについてつぶやいていた。不思議のダンジョンとは世界各地で次々と発見されていてどんどん増えているという天然の迷路だ。その不思議のダンジョンに迷い込んでしまい、行方不明になるポケモンも多いという。その不思議のダンジョンがつい最近木の実畑へ向かう道にも出現したようだ。
レイド「俺は父さんと一緒に鍛えているから大丈夫だけど、そのうちここに迷い込むというポケモンも出てきそうだな…。」
と、俺がつぶやき終えると当初の目的を思い出し、やや急ぎ足になった。
レイド「…っと、早く村に帰らなくちゃ。父さんも心配するだろうし。」
…と思ったその時、かすかに感じた別の気配を空から感じた。
レイド「…ん?何だ…?あれは…。空から…?」
俺は思わず空を見上げると…。
遠くて姿が見えなかったが、何らかのポケモンが空から落ちてきた!
レイド「…っ!?あれは!?大丈夫なのか…!?」
俺は落ちてきたポケモンの方へ向かって走った。本来帰る道から外れて…。
道なき道を進んでいると、森の木々で生い茂ってはいるものの少し開けた場所にやってきた。そこには先ほど落ちてきたと思われる一匹のポケモンが倒れていた!
レイド「っ!?あれは!?さっき落ちてきたのってあのポケモンか…!?」
俺は急いでそのポケモンに駆け寄る。種類はアシマリ、呼吸はしているが意識がなく目も閉じている。だが不思議とケガらしきケガがどこにもなかった。
レイド「ねえ君、大丈夫か!?」
俺は大声でそのポケモン―――あしかポケモンのアシマリに呼びかける。
「…う、うーん…。」
するとアシマリから声が発せられ、目がゆっくりと開いていく。声の感じはどうやら女の子のようだった。
「…こ…ここは…?」
レイド「…ふぅ、よかった。気が付いたみたいだね。」
「…え…?リオルが…喋ってる…?…う、うわあっ!?」
【ガンッ!!】
…鈍い音があたりに響いた。それは俺とアシマリの彼女の頭がぶつかり合った音だった。俺たちは思わず頭を押さえる。
レイド「いててててて…君、おかしなこと言うな…。」
「あ…当たり前だよ…。私、人間のはずなのに…。」
と、ここで彼女から
人間という言葉を聞くことに。俺は思わずこう言った。
レイド「に、人間…?人間って、おとぎ話に登場する生き物って聞いたんだけど…それに君の姿、どこからどう見たって
アシマリだぞ…?」
「えっ…?アシマリ…?」
それを聞いた彼女は「そんなはずは…!?」と思ったのか、自分の姿を確認し始めた。人間だと思っていた彼女は驚きの声を上げていた。
「嘘!?私、こんな姿じゃないのに…!?…でも、なんでこうなったのか…思い出せない…。」
レイド「思い、出せない…?つまり記憶喪失ってこと…?」
「そう、みたいだね…。」
…どうも彼女は突然の出来事のようで戸惑っていた。そこで俺はこんなことを聞いてみた。
レイド「…じゃあ、名前は?名前はわかるか…?」
「名前…?ええと…
ネール・アルティナ…。うん、それはわかったよ…。」
レイド「…うん、名前ともともとは人間だったってことはわかるみたいだな…。」
俺はアシマリの彼女の名前がネール・アルティナであることと、彼女がもともとは人間であるということを整理し納得した。
レイド「…うん、君の言うことを信じてみるよ。」
ネール「え…?うん、ありがとう…。」
それを聞いた彼女は緊張がほぐれたのか笑ってくれた。
レイド「あっ、自己紹介がまだだったね。俺はレイド・アトス。レイドって呼んでくれて構わないよ。」
ネール「うん、ありがとう。レイド。」
だんだんと彼女の緊張がほぐれてきているのがわかった。続けて俺はこんなことを聞いてみる。
レイド「それで、ネールは自分が人間だって言っていたけど、行く当てはあるのか?」
ネール「…うーん…どうなんだろう…。」
すると彼女はしばらく悩んだ後、こう言ってきた。
ネール「…当てもないし、もし迷惑じゃなかったら…レイドについて行ってもいいかな…?」
レイド「え…?いいのか?」
ネール「うん!私自身、ここはどこなのか、ここからどこに行けばいいのかもわからないからね…。」
レイド「ありがとう…!じゃあ、俺の暮らしている村、オル・ナレアに案内するよ!」
ネール「うん!」
…とここで俺は周囲の状況を思い出す。ここは生い茂った森の中。無我夢中に中へ入ったものだから、村への道がどこかわからなくなってしまった。
ネール「…どうしたの?」
レイド「ごめん、ネール…。ここは普段通らない場所だから、村への道がどこかわからなくなってしまったんだ…。」
ネール「えっ…!?じゃあ、道に迷っちゃってるってこと!?」
レイド「そうなるね…。やっちゃったな…。」
気が付けば午後の時間から大分すぎちゃってるだろうな…。そう思った俺は周囲に道があるかをあちこち調べて確かめる。
レイド「…うん、この方角に進んでみようかな…。」
それは茂みの先に見える一本の道だった。ただそこは不思議のダンジョン…。
ネール「この先に行けば、いつも通る帰り道にたどり着けるかもしれないの?」
レイド「うん。そうかもしれない。ただ注意して。この先はたぶん不思議のダンジョンっていう空間が広がっているかもしれない。」
ネール「不思議の…ダンジョン…?」
レイド「うん、説明すると長くなるから簡単に言うと、敵のポケモンが多く生息していて危険な迷路なんだ。だから注意してついてきてね…。」
ネール「う、うん。わかったよ…。」
そして俺たちは不思議のダンジョンへと突入していく…。