なんで!?なんでなの!?
私は今、驚きの体験をした。
それは ニートがボディーガードになってお嬢様を守るって話よりも信じられなくて、有り得ない上に、大好きな幼馴染みが目の前でトラックに轢かれるって話よりもショッキングなのだ。
いやいや!別にショックなんかじゃないし!
でも有り得なくない!?学校一の美貌を誇るこの私が地味で冴えなくてガキなブイゼルにふられるなんて!!
◇ ◇ ◇
「なんで!?なんでなの!?」
気が付けば、口癖になっていたその台詞もソイツは耳にタコができるほど聞いたに違いない。だから私がそう叫ぶ度に耳を押さえるのね。
「だから、性格が駄目なんだよ。せ・い・か・く」
指を振りながらチッチッチと舌打ちをする姿は実に腹立たしい。
しかし、コイツの『性格が駄目なんだよ』という言葉は何百回も聞いたが、まだ肝心の“コイツ好みの性格”を聞き出せていない。
「もっと具体的に言ってくれないと分からないんだよー」
「だから、今の性格じゃないのが、良いの」
それしか言えないのかお前は!!ちょっと心配になってきちゃったよ。
「じゃあ、私も今のアンタの性格嫌いよ」
ツンとした口調でそう言っても
「ん。じゃあなんでオイラに告白してきたの?」
「っ…!もう知らないからっ!!」
この有り様。もう何週間もこのやり取りが続いている。自分の性格さえもよく分からなくなってきた。といっても、私のファン一人一人に合わせてコロコロ性格を変えるから、性格は固定していないのだった。
『今の性格じゃないのが良い』
…馬鹿。分かりにくいのよ。
大好きだから。