初めてのポケモン捕獲
「さてと…何を捕まえようかなー…」
メイはキョウヘイを引っ張り、ポケモンを探していた。
「メイちゃん…もしかしてポケモンの捕まえ方を知らない…?」
「そんな事ない!ベルさんに教えてもらってるもん!…確かに、もう二回も失敗してるけど…」
メイは先ほどまでに二回捕獲に失敗している。一回目は倒してしまい、二回目は逃げられた。
「じゃあ落ち着いて、そのベルさんの言っていた事をもう一度思い出すんだ。それから、ポケモンの体力を減らすときに大事な事は、技の威力とタイプ、それから方式だよ。相手の体力が減ってきたら弱くて、そのポケモンがあまり得意じゃない技を出すんだ…だから」
キョウヘイがそこまで言った時、近くの草むらから青いポケモン、ルリリが飛び出してきた。
「あ、キョウヘイ、ポケモン!」
「…まって、ボクが捕まえる。メイちゃんはそこで見てて」
キョウヘイはモンスターボールを構える。
「ゆけっ、もえぎ!」
ボールから飛び出したツタージャは軽やかに地面に着地し、腕を組んで相手を見下すように睨みつけた。
「もえぎ、つるのムチ!」
ツタージャ、もえぎはその場から動く事もなしに、腕を組んだまま腕の付け根から蔓を出し、ルリリに叩きつけた。ルリリは地面に倒れこむ。キョウヘイは図鑑の画面を覗きこみ、「半分以上減ったか…」と呟いた。
「これなら…もえぎ、巻きつく!」
もえぎはその蔓をひっこめることなく、そのままルリリの体にまとわせて締め上げた。ルリリは泡を吐き出して抵抗するが、もえぎはそれをものともしない。
「さて、これなら大丈夫かな。巻きついてて体力削ってくから早く捕まえないと…それっ!」
キョウヘイはルリリにモンスターボールを投げる。ボールは何回か揺れた後、動きを止めた。
「よし…っと。捕獲完了!名前は…るりにしよう」
「すっごーい、キョウヘイ、すごいじゃん!」
「えへへ…ボクも編集長に教えてもらったんだけどね。あ、あと野生のポケモンの体力はポケモン図鑑向けてみると大体分かるから、それを参考にするといいと思うよ」
「うん、分かった。ありがとう!あ、また!」
再び草むらからポケモンが飛び出す。再び青いポケモンが飛び出したが、今回はリオルだった。
「メイちゃん!」
「うん、あたしが行く!行け、ジンジャー!」
鼻から炎を吹き出しつつ、ポカブ、ジンジャーが地面へととびおりた。
リオルはメイがジンジャーに指示を出す前にポカブに攻撃を加えた。
「リオルのでんこうせっかか!」
「負けないで、ジンジャー!ひのこ!」
ジンジャーは鼻から炎を吹き出し、リオルにぶつける。メイは図鑑を覗き込み、リオルの体力を確認した。
「よし、弱ってる…でもこれならもう一回打っても大丈夫かも。ジンジャー、もう一度ひのこよ!」
リオルの素早い攻撃に耐え、ポカブは再び炎を鼻から噴き出した。リオルは火傷を負い、苦しげな表情を見せる。
「メイちゃん、あのリオル、火傷してる!チャンスだよ!」
「うん!行け、モンスターボール!」
メイはリオルに向かって力いっぱいボールを投げた。ボールはリオルに命中し、リオルを閉じ込めた。
「つかまって…つかまって…!!」
祈るメイ。ボールは数回揺れた後、動きを止めた。
「や…やった、やったよキョウヘイ!メイ、初めてポケモンを捕まえたんだ!!やったやった!!!」
「おめでとう、メイちゃん。さ、キミは名前をつけるの?」
「うん!えーっと…フェネル!リオルのフェネル!」
「よかったね。じゃあ、ポケモンを回復してあげよう。頑張ってくれたポカブと、捕まえたそのリオルを…」
メイとキョウヘイは牧場管理者の夫婦のもとへ向かい、ポケモンの体力を回復してもらうことにした。
「さて、ポケモンも回復した事だし…やるわよ、ポケモンバトル!」
「え…いや、ボクはポケモンバトルは…」
「いいの!記者さんって言ってもバトルは出来るんでしょ?さっきだってポケモンの扱い方、とてもうまかったもん!ねぇ、バトルしてよ!」
「はぁ…分かったよ。じゃあ行くよ!」
キョウヘイとメイは互いにポケモンを繰り出した。
「さ、行くわよ!フェネル!」
「行け、るり!」
「フェネル!でんこうせっかよ!」
リオル、フェネルは目にも止まらぬ速さで動き、ルリリのるりに攻撃した。体勢を何とか立て直し、泡でフェネルを攻撃するるり。が、あまり効いている様子がない。
「やっぱり捕まえたばかりじゃ強くないか…。もどれ、るり!行け、もみじ!」
キョウヘイはるりを戻しガーディ、もみじを繰り出した。
「もみじ、ひのこ!」
「あ、キョウヘイずるい!」
「う…ず、ずるくなんかない!ポケモン交代は戦術の一つです!」
「負けないでフェネル!でんこうせっか!」
素早く動き回り、もみじに攻撃を加えていくフェネル。しかし大したダメージを与えられず、もみじの火炎攻撃で体力を削られていた。
「もみじ、とどめのでんこうせっか!」
「ダメよフェネル!こらえて!」
その言葉にフェネルが反応し、胸の前で手を交叉させ、もみじの攻撃に身構えた。攻撃が当たったフェネルだが、ギリギリという感じで持ちこたえた。
「こらえるか…」
「な…なんだか知らないけれどチャンスね!行けフェネル、でんこうせっか!」
「こっちもでんこうせっかだ、もみじ!」
フェネルは懸命に攻撃を繰り出そうとしたが、その攻撃は届かずに終わった。
「フェネル…大丈夫?ゆっくり休んでね…。 頑張って、ジンジャー!」
ジンジャーは鼻からやる気たっぷりと言ったように炎を吹き出しつつボールから飛び出した。
「ジンジャー、たいあたり!」
もみじにジンジャーのたいあたりが炸裂する。蓄積していたダメージもあり、その一撃でもみじは倒れてしまった。
「もみじ…お疲れ様。行け、るり!」
先ほど戻したルリリを繰り出すキョウヘイ。
「ジンジャー、あなたなら勝てるわ!ひのこ!」
「るり、あわだ!」
るりの体力も削られたが、ジンジャーの体力も削られた。あわが当たったジンジャーは少し苦しげである。
「そんなに強そうなわざじゃないのに…」
「ポカブは炎タイプ…水タイプの技には弱いよ!」
「そうなのね!…でも威力自体はそんなに強くないのね、助かったわ。ポカブ、もう一発ひのこ!」
ジンジャーの火の粉が当たり、るりは戦闘不能になった。
「残るはもえぎか…行け、もえぎ!」
キョウヘイは最後のポケモン、ツタージャのもえぎを繰り出した。もえぎは自信満々、といったふうに軽く息を吐き出し、ジンジャーを軽く睨みつける。
「お互い最後のポケモンね…行くわよジンジャー!たいあたり!」
「もえぎ、たいあたり!」
もえぎは素早く動き、ジンジャーよりも先に攻撃を繰り出す。追いかけるように動くジンジャーだが、もえぎの動きについて行ききれていない。
「もえぎ、巻きつく!」
「ジンジャー、ひのこ!」
もえぎが技を繰り出した隙を狙い、攻撃を当てるジンジャー。ひのこはもえぎの体に燃え移り、もえぎに大ダメージを与えた。
「効いてるみたいね!」
「もえぎ、つるのムチ!」
もえぎの繰り出したつるのムチが当たりジンジャーは吹き飛ぶ。しかしそれはジンジャーを倒すまでには至らなかった。キョウヘイの顔が悔しげに歪む。
「いっけぇ!ひのこ!!」
とどめの一撃が決まり、もえぎは力を失って地面に倒れこんだ。
「…もえぎ、ごめんね。お疲れ様」
キョウヘイはもえぎを優しく撫で、ボールへと戻した。その顔は何もないふうを装いつつも悔しさがにじみ出ている。
「負けちゃった…」
「キョウヘイ!今の勝負、すごくギリギリだったね!!メイ、とても楽しかったよ!キョウヘイもとても強いじゃない!!」
「でもボクは負けた…力不足だったんだ」
「そんな事ないよ!!…あ、そうだ、あたし、これからサンギタウンへ戻ってアデクって人に会うんだ。その人、とても強そうだったからキョウヘイも一緒に鍛えてもらおうよ!」
「…うん…」
「じゃあ、いっきましょー!!」
メイは落ち込むキョウヘイを引き連れサンギタウンへと進み始めた。