第二章 『修行 〜挫けそうになっても側にいる〜』
第06話 自己紹介
前回、レイリンのハイパーボイスの洗礼を受け、ギルドに弟子入りした二匹。
ここから二匹の修行生活は始まるのだった。






次の朝………




「う〜ん…」

「ムニャムニャ……」

日が射し込んで、とてもいい朝なのだが、ウィングズの二匹は、そう簡単には起きそうに無い。
フィルミィに至っては、なんだか幸せそうな顔だ。
何かいい夢でも見ているのだろうか。

「……うわぁ…食べ物がいっぱい……ムニャムニャ……」

食べ物の夢だった。
と、その時……

「おいっ!!おおおいぃっっっっっ!!起きろおおおおおおお〜〜〜〜!!!朝だぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉー!!!!」

(なっ!なんだこれ〜!?)

(嫌〜〜〜!!あ…頭が痛いよお〜〜!)

心の中で、悲痛な叫びを上げる二匹。
突然彼らの部屋で轟音とも言える声が鳴り響いた。

(な、なんだこのバカでかい声はあ〜〜!!)

(こ、鼓膜破れちゃうよ〜!)

その声は、レイリンのハイパーボイス程では無いが、寝ている二匹には充分すぎる威力だった。

「いつまで寝てんだよおおおお!!!!早く起きろおおおおおおお!!!!」

(ぎゃああああっ!!)

(きゃああああああっ!!)

再び怒声が鳴り響く。

「あ、あふぅ……耳がぁ……」

フィルミィが耳を押さえながらそう言う。

「寝ぼけてんじゃねーよっ!いいから起きろ!」

「う……うぅ……」

「あうぅ…耳が痛いよ…」

ようやく起きた二匹だが、まだかなりくらくらしているようだ。

「………ん?あれ……?君は………」

目を擦りながらポケモンの姿を確認すると、どうやらドゴームのようだ。

「自己紹介は朝礼の時にしてやる!急げ!集合に遅れるととんでもない事になるっ!!もしもレイリン親方を怒らせてみろ……あれを喰らう事に……」

「『あれ』……?」

「とにかーっく!お前らが遅れたせいでこっちまでとばっちり喰うのは御免だ!!さっさと来い!!いいな!!」

そう相変わらずうるさい声っ言うと、そのポケモンは急いだ様子で去って行った。

「はぅ……まだ耳がキーンとしてるような気がする……」

「もしかしてあのポケモン……もっと深い眠りにつかせるつもりじゃ……」

などと、カズヤが恐ろしい事を考えている内に、フィルミィは思い出した。

「……って、そうだっ!!朝礼!!急がなきゃ!!」

フィルミィが慌てて行こうとした所をカズヤが制止する。

「ちょっ、ちょっと待ってよ!」

「え?」

「フィルミィ、頭の毛がボサボサだよ…?」

「えっ!嘘っ!」

フィルミィは自分の持っていた手鏡で自分の頭を見てみた。
この辺を見ると、やはりフィルミィも女の子だ。

(そういうのってポケモンも使うんだ…)

と、密かに思うカズヤであった……この世界、何でもありなのである。


「きゃあっ!?こんなんじゃ皆の前に出れないよっ!?」

(意外とポケモンと人間って違うようで似てるんだな……)

人間から見たら、ポケモンは動物、な部分もあるが、カズヤはこれを見て、人間とポケモンは考えてる事は同じなんだと思った。

「は、早く整えないと……」

フィルミィは自分の持っていた、くしを取り出した。

(そういうのも持ってるんだ…)

「……………………………………これでいいかな……………よしっ!」

と、フィルミィは言うが……

「あっ!ちょっとそれ貸して?」

「え?うん。」

フィルミィはカズヤにくしを手渡した。するとカズヤは、

「よっと。」

急にフィルミィの頭の後ろの方の毛を整え始めた。
実は、後ろの方は全然大丈夫じゃ無かったりする。

「…!?」

「後ろもちゃんと整えないとね………これでいいかな?」

「あ、あり…がとう………////」

フィルミィはカズヤには見えなかったが、かなり赤面しながらそう言った。
何故カズヤが女の子の髪?を整えられるのかは謎だ。

「どういたしましてっと。それじゃ、朝礼に行こっか!」

「そ、そうだ!急がないと!!」

こうして二匹は朝礼の集合場所の地下二階の広場に急いで向かった。




〜ギルド地下二階広場〜


「「遅れました〜!!」」

朝礼所には知ってる顔も合わせて九匹のポケモンがいた。
八匹が並んでおり、その面子は、『ドゴーム、キマワリ、チリーン、ダグトリオ、ディグダ、ビッパ、グレッグル、ヘイガニ』と、様々。
その前にペリクが出ている、と言った構図だった。
二匹揃って遅れましたと言うと、

「遅いぞっ!新入り!!」

と、先程のドゴームに怒鳴られるが、

「おだまり!ゴンド!!お前の声は相変わらずうるさい!!」

と、さらにペリクに怒られた。

(あのドゴームはゴンドって名前だったんだなあ。)

カズヤは、ドゴームの名前が『ゴンド』だと言う事を頭の中で確認しつつ、自分も列の一番右側に並び、フィルミィもそれを見てカズヤの後ろに付く。

「うー……」

ゴンドはペリクに反論出来ないのか、声が小さくなる。

「え〜、ウィングズ、まあ初日だし今回の遅刻は大目に見てやる。
次からは気を付けるんだよ。
(ま、逆に言えば初日から遅刻もどうかと思うけどね……)」

心の中で正論を述べつつ、とりあえず今回は許す事にしたペリク。

「はーい。」

「はいっ!」

カズヤの返事が緩い気がしたが、ペリクはスルーする事にした。

「では全員集まったので朝礼を始める。
親方様ー♪全員揃いました♪」

その声を合図に、親方の部屋の中からレイリンが出てくる。

「それでは親方様♪一言お願いします。」

「……………」

「「「…………?」」」

皆は、いつまで経っても喋り始めないレイリンに、疑問の表情を浮かべる。

「………ぐうぐう…ぐうぐう………」

レイリンは何故か『ぐうぐう』、という音を出している。
すると弟子達は小声でヒソヒソと話し始めた。

「レイリン親方って相変わらず凄いよな……」

「ああ。ホントそうだよな……」

「ああやって朝は起きてる様に見えて……」

「実は目を開けながら寝てるんだもんな……」

と、弟子達が口々に言う。(説明乙である)

「……ねえ、レイリンって本当に強いの…?」

カズヤは呆れた様子で、フィルミィにそう訊く。

「あはははは……多分………」

そしてフィルミィは苦笑い……

「ありがたいお言葉、ありがとうございましたあ♪」

「(ええええっ!?)」

「(何も言ってないのに!?)」

ペリクの発言に、心の中で驚きを見せるカズヤとフィルミィだが、そんな事どこ吹く風とペリクは続ける。

「さあ、みんな♪親方様の忠告を肝にめいじるんだよ♪」

「(どうやって…?)」

もっともである。

「では、今日は誓いの言葉の前に、新入りが入ったので紹介するよ♪ウィングズ、前に出てきてくれ。」

ペリクに言われ、前にでてくる二匹。

「じゃ、自己紹介をするんだよ。」

「えっと、一応ウィングズのリーダーのカズヤです。
種族は見ての通りヒトカゲで、分かると思うけど♂だよ。
こっちは副リーダーの…」

そう言いながら、フィルミィに目で振るカズヤ。

「(えっ!?副リーダー!?き、聞いてないよそんなの!?)え、えっと……その……フィルミィ、です。
種族は、イーブイで、♀です。
よ、宜しくお願いします。」

緊張しているせいで途切れ途切れになっているが、最後にはお辞儀もして、しっかりと自己紹介出来たフィルミィ。

「よし、じゃあお前達も。」

ペリクが言うお前達とは、弟子達の事である。

「じゃあまずは……ビッケ!」

「あ、あっしからでゲスか!あっしはビッパのビッケでゲス!!宜しくでゲス!!」

「(ゲス……?)」

「(口癖なのかな…?)」

ビッケの言葉の語尾に付いている『ゲス』に、少々疑問を抱く二匹だが、そこは流す事にした二匹。

「次はゴンド!」

「おう!!ワシはドゴームのゴンドだ!!探検隊としての活動も勿論だが、朝、弟子達を起こす仕事と、見張り番のディルのサポートもしている!!宜しくな!!」

「(普段もうるさいんだな……)」

あまりカズヤは今の所ゴンドにいい印象は持っていないようだ……

「次はディル!」

「はい。
ディグダのディルです。
主に見張り番担当です。
宜しくお願いします。」

「見張り穴の中から聞こえた声はゴンドとディルだったんだ。」

と、フィルミィは確認するように言う。

「次はドルディ!」

「よし、私はダグトリオのドルディだ。
ディルは私の息子でな、私は情報を集めては掲示板の更新をしている。
では宜しく頼む。」

「親子で同じギルドに所属してるんだ。」

「次!フラン!」

「はいですわ!私(ワタクシ)はキマワリのフランと言いますわ!宜しくですわ!!」

「じゃあ次は……リン!」

「は〜い!私はチリーンのリンです。
主に夕食作成担当です。
宜しくお願いします!」

「(二匹とも♀みたい……♀もいたんだ…ホッ………)」

自分が♀で、今まで自己紹介してきたのが♂ばかりだったので、♀もいて少し安心したフィルミィ。

「よし、次はヘイルだ。」

「ヘイヘイ♪オイラはヘイガニのヘイルだ。
宜しく頼むぜヘイヘイ!!」

「最後に…グレイク!!」

「俺はグレイク。
種族はグレッグルだぁ。
まあ見れば分かるよなぁ?
宜しく頼むぜぃ。」

こうして、弟子達の自己紹介は終わった。

「よし♪これで全員終わったな。
ウィングズ、今からやる事しっかり覚えておけよ♪」
「「?」」

「それじゃあ、朝の誓いの言葉!始めっ♪」

「「「「せえ〜〜のっ!ひとーつ!仕事は絶対サボらなーい!ふたーつ!脱走したらお仕置きだ!みっつー!皆笑顔で明るいギルド!」」」」

「さあ皆っ♪仕事に掛かるよ♪」

「「「「おおーーーーーっ!!」」」」

そして、これで朝礼が終わったのか、各自仕事に取り掛かりに行った。

「なるほど、こういう事をやるのか。」

「何だか楽しそうだね!!」
カズヤとフィルミィは、各々の感想を述べた。

「さて、お前達はこっちだよ♪」

そうペリクが言うと、彼は地下一階へと向かったので、彼らもそれに付いていった。




炎翼龍 ( 2013/01/01(火) 07:33 )