第10話 お尋ね者を追え!
前回お尋ね者退治を言いつけられ、それにそなえ準備した二匹。そして掲示板からお尋ね者を選ぼうとした時、情報の更新が。そして更新された掲示板を見た二匹の目に写った者とは…!?
「こ、こいつは…!?」
「エ、エゾロだよ!!あのスリープ!お尋ね者だったんだ!!」
そこには紛れも無いエゾロの指名手配書があった。
「あの映像はやっぱり本当の事だったって事か…!!フィルミィ!早くしないとリリが危ない!!」
「うん!!」
二匹は大急ぎでギルドを出ていった。
「わわっ!?急にどうしたんでゲスか!?どこにいくんでゲスか!?」
と、訳も分からず残されるビッケであった…
〜交差点〜
「そういえば、助けなきゃいけないと言っても、どこに行けばいいんだ!?くっそ!!」
焦るカズヤ。
「えーと、えーと、あっ!あそこにリルダがいるよ!!」
交差点にリルダを見付けるフィルミィ。
「リルダ!」
「え…?……あ!あなた達はさっきの!」
リルダはカズヤ達に気付く。
「どうしたの?もしかしてリリに何かあったとか!?」
と、フィルミィが聞くと、
「そう!そうなんです!!あの後三匹で落とし物を探してたんだけど……気が付いたらエゾロさんがリリをどこかに連れてって行っちゃって……呼んでも戻って来ないし……!」
と、かなり切羽詰まった様子で話すリルダ。
「それで!二匹はどこに!?」
「はい!不安になって探したら、トゲトゲ山に入って行くのを見ました!」
「案内してくれ!!」
やはりカズヤは焦った様子で言う。
「え!?で、でもあそこは不思議のダンジョンで、普通のポケモンには危険な場所で…」
カズヤ達を心配するように、そう言うリルダ。
「大丈夫、僕達これでも探検隊だからさ。」
そう言い、リルダに探検隊の証とも言える、探検隊バッジを見せる。
「……!探検隊の方だったんですか…!分かりました!こっちです!!」
リルダも、今はカズヤ達に頼るしか無いと、二匹を案内する事にした……
〜トゲトゲ山前〜
「エゾロとリリはこっちの方に行ったんだよね?」
「はい……」
フィルミィの問いに、元気が無さそうに答えるリルダ。
やはりリリが心配なのだろう。
「岩山って所も僕が映像で見た通りだな……」
トゲトゲ山は、分かりやすい程の岩山。
カズヤが映像で見た通り。
「っていう事は、やっぱり…」
「…ちょっと危険そうな場所だけど、行くしか無い!!行こう!フィルミィ!」
「うん…!」
二匹は危険を承知で、行く事を決意する。
「……カズヤさん!フィルミィさん!」
「「ん?」」
「……リリを……リリを、お願いします!!」
そう言い、出来るだけ頭を下げるリルダ。
そんなリルダを見て、カズヤ達は一度顔を見合わせ頷くと、
「「探検隊ウィングズの名に懸けて!」」
「…お願いします!!」
リルダは、山の内部に入る二匹の後ろ姿を見送った……頭を下げる事しか出来ない、自分を悔やみながら………
〜トゲトゲ山〜
「ふう……結構険しい山だね……」
フィルミィは、前足で額の汗を拭いながらそう言う。
「…羽でもあればな…」
「羽は、まああったら中の不思議のダンジョンを無視して外から登れるけど……とにかく登るしかないよ、なんとしてもリリを助けなきゃ………」
そう言い、フィルミィは
再び足を進め始める。
「(……初めて会った時は、あんなに臆病だったのに……誰かの為になると、こんなに頑張れるものなんだな……)」
そう思いつつ、カズヤはフィルミィに付いていく。
「ん?あれはムックルか…?」
「二体……」
二体のムックルが向かってきていた。
「取りあえず、片方ずつね。行くよ!フィルミィ!」
「うん!」
その声を合図とするかのように、片方がフィルミィに『でんこうせっか』を仕掛けて来た。
「えっ!?」
『ドガッ!!』
スピードに反応出来ず、『でんこうせっか』はフィルミィに直撃し、吹っ飛ばされる。
「フィルミィ!」
カズヤがフィルミィに気を取られている間にもう一体の方がカズヤに『たいあたり』を仕掛けるが……
「させるか!!」
『ドゴッ!!』
カズヤはムックルに渾身の蹴りを入れる。
そしてそのムックルは倒れる。
カズヤはすぐにフィルミィに駆け寄った。
「フィルミィ!大丈夫!?」
「う、うん…何とか…」
ムックルの攻撃力の高さがあったせいか、かなり効いてるようだ。
「それより今の蹴り……『いわくだき』かな…?」
そうフィルミィが呟く。
「今のが『いわくだき』?『いわくだき』って手でやるイメージがあるんだけど……」
「体のどこを使っても岩を砕く威力があったら『いわくだき』だよ。」
そう言い、えへへ、とフィルミィは笑う。
「そっか……まあ今はそれよりもう一体を片ずけないと。」
「……よし!私だって!『たいあたり』!」
フィルミィは『たいあたり』を放とうとするが、『たいあたり』にしてはスピードが速かった。
「もしかして、でんこうせっか!?」
『ドガッ!!』
「おお〜!…って、攻撃しなきゃ!くらえ!!」
カズヤは、でんこうせっかで怯んだ隙を攻撃する。カズヤはムックルに『いわくだき』を放ち、見事ヒット、ムックルは倒れた。
「よし!」
「先に進もう!」
そう言い、二匹は歩みを進める。
一方、その頃……
〜トゲトゲ山頂上〜
トゲトゲ山の頂上には、二匹のポケモンが……
「……あれ?行き止まり…ねえエゾロさん、落とし物は?」
二匹の内の片方…エゾロは、悪人のように笑いながら……
「ごめんな、落とし物は……ここには無いんだよ。」
と、言う。
「えっ?」
するとリリは少し慌てた様子で、
「お兄ちゃんは?お兄ちゃんは後からすぐ来るんでしょ?」
しかし、
「い〜や、お兄ちゃんも来ないんだ。
ククッ……実はお前の事を、騙してたのさ。」
「え…ええっ!?」
驚くリリを他所に、エゾロは話を続ける。
「それよりちょ〜っと頼みがあるんだ。
お前の真後ろに小さな穴があるだろう?」
リリは後ろを見てみた。すると、確かにエゾロの言う通り小さな穴があった。
「あの穴の奥には……実はある盗賊団が財宝を隠したんじゃないかという噂があるんだ。
ただな、ここからが重要だ。
俺の体じゃどうにも俺が大きすぎて入れねえ。
だから、小さなお前をここに連れてきたって言う訳さ。」
「っ!!」
リリには恐怖という感情が生まれてきていた。
幼いせいか、リリにはエゾロが言ってる事が分からないのだろう。
ただ騙されて連れて来られたというだけでリリは充分怖かったのだ。
「大丈夫、言う事さえ聞いてくれれば……ちゃんと帰してやるからよ。」
「うぅ…」
「さあ行くんだ!穴の中に入って……財宝を取って来い!!」
「うぅ………お、お兄ちゃ〜〜ん!!」
リリは逃げたい気持ちが押さえられなくなり、走って逃げ出したが、
「こっ、こら!待て!!」
すぐにエゾロに止められてしまった。
「ったく!ちゃんと帰してやるって言ってるだろーが!!」
そして……
「言う事を聞かないと……痛い目に合わせるぞっ!」
「た…助けてっ!!」
正にカズヤが見た映像そのままだった……その時。
「待て!!エゾロ!!」
「見つけた……お尋ね者エゾロ!!」
やって来た。
カズヤ、フィルミィは、探検隊ウィングズとして、エゾロを捕まえに来たのだ。
「なっ!?お前達、確か俺がトレジャータウンでぶつかった…!」
「僕達はウィングズ!!探検隊だ!!」
「探検隊だとっ!?じゃあ俺を捕まえに…!」
「…っ!」
「……フィルミィ?」
フィルミィの様子がおかしい事に、カズヤは気付く。
「…ん?もしかしてそっちのイーブイ、震えてる?」
そう、フィルミィは震えていたのだ。
お尋ね者を前にして。
「フィ、フィルミィ……どうしたの?」
フィルミィは、突然その場に座り込んでしまう。
「フィルミィ!?」
「うぅ……ごめんカズヤ…今になってちょっと怖くなってきちゃった……」
目をつぶって、ビクビクと震えるフィルミィ。
「……そうか!分かったぞ。
お前達、探検隊と言っても、まだ新米って所だろ?」
「ううっ……」
否定しない二匹、そして怯えるフィルミィを見て、エゾロは確信する。
「ふん!確かに俺はお尋ね者だよ。
でもお前達に出来るのか?そのお尋ね者を捕まえる事が!」
急に強気になるエゾロ。
「………そっちこそ、大したお尋ね者には見えないけど?」
心配そうにフィルミィを見ていたカズヤは、エゾロのいる方向に向き直り、皮肉を込めてそう言う。
「何…?」
「だから、僕らみたいな新米探検隊でも捕まえられると思ってるんだよ、ギルドは。」
本当は自分達の意思で捕まえに来たのだが、どうせエゾロが分かる事では無いので、関係無い。
「言わせておけば…!」
エゾロは少しイラッと来たのか、臨戦態勢に入る。
「俺がお前達みたいなのに負けると思ってるのか?」
「試してみる?」
カズヤも臨戦態勢へ。
「カ、カズヤ…」
相手を挑発するカズヤを、不安そうに見つめるフィルミィ。
「フィルミィ、無理はしないで。
僕がなんとかやってみる。」
「えっ…一匹で…!?」
「ちょっとキツイかもしれないけどね。」
そう言い、フィルミィに苦笑いを見せる。
そして、
「でも、僕は……」
「え…?」
「君の事、『信じてる』。」
「……!」
そう言い、カズヤはエゾロに向かって走り出した…