第09話 謎の目眩
前回トレジャータウンにやって来たカズヤとフィルミィ(とビッケ)は、二匹でトレジャータウンを廻る事にしたのだった…(ビッケはギルドに戻りました)
〜道具屋〜
「「いらっしゃ〜い!」」
フィルミィの希望通り、道具屋にやって来た二匹、店主と思われるカクレオン二匹が出迎えてくれた。
フィルミィが言った、『カクレオンの兄弟』とは、この二匹の事だろう。
「うわっ!片方は色ちがいだったのか!」
色違いとは、弟の方の事。
なんとも言えない不思議な色をしている。
「おや?もしかして貴方達、このお店は初めてですか?」
と、兄の方が尋ねる。
「はい。」
「では自己紹介しておきましょう。私は兄のショウです。」
「私は、弟のバイと申します。」
「(へえ〜…くっ付けると商売になるんだな……何これ?RPGの世界?)」
なんとなくRPGにありそうな名前の付け方に、そう疑問を抱いた。(実際本当にry)
「くっ付けると商売になるんだね!」
カズヤは心の中で思っただけだが、フィルミィは口に出した。
「はい、私達の両親はやはりこの仕事をしていたのですが……」
「両親はこの仕事に凄く誇りを持っていて……それで僕達に、ショウ、バイって名前を付けてくれたんです。」
と、ショウ、バイの順番に語る。
「(……う〜ん……でももうちょっと何か無かったのか……)」
と、カズヤは考える。まあ確かに安直な名前の付け方ではある。
「へえ〜!だからショウ、バイって名前なんだね!」
「そうなんですよ〜、それで……」
と、ショウが次の話題に入ろうとした時…?
「すいませ〜ん!」
「「「「?」」」」
誰かが走ってきた。
二匹のようだ。
「おお〜!リルダちゃんにリリちゃん!!いらっしゃ〜い♪」
ショウがそう呼んだ二匹はマリルにルリリ、マリルがリルダで、ルリリがリリらしい。
ちなみに両方♂。
「すみません、リンゴ六つください。」
リリはそう言ってショウにリンゴ六個分のポケを支払った。
「はいよ!」
ショウはリンゴが入った袋をリリに手渡す。
「ありがとう!ショウさん!」
リリはショウにお礼を言う。
「まいど〜!」
「いつも偉いね〜♪」
と、ショウとバイも返す。買い物を済ませた二匹は帰って行ったが……
「いやね、あの二匹は兄弟なんですけど…」
「最近お母さんの具合が悪いんで代わりにああやって買い物してるんですよ〜。」
と、ショウとバイは口々に言う。
「「いやホント、まだ幼いのに偉いですよね〜♪」」
「へえ〜!」
「頑張ってるんだな〜…」
フィルミィとカズヤは、感心したように反応する。
「「すいませーーん!!」」
「「「「?」」」」
今来たのは、またリルダとリリだった。
「どうしたんだい?慌てて戻って来て…」
と、ショウが尋ねると、
「リンゴが一つ多いです!」
と、リリが返す。
「僕達こんなに多く買ってないです。」
リルダも続けて言う。
「ああ、それは私達からのおまけだよ。
二匹で仲良く分けて、食べるんだよ?」
「ホントですか!?」
リルダが嬉しそうに聞き返す。
「わーい!ありがとう!」
リリも嬉しさでぴょんぴょんと跳ね回る。
「いやいや、気を付けて帰るんだよ〜♪」
と、ショウが言うと、二匹は帰ろうとするが…
「イテッ!」
『ドテッ!』
ぴょんぴょんと飛び回ってたせいか、リリが転び、その拍子にリンゴを落としてしまった。
リルダはまだ気付いていないようだ。
「あっ……」
リンゴがカズヤの目の前に転がって来た。カズヤはリンゴを拾い上げ、
「はい、落としたよ?」
リリに、笑顔で渡してあげる。
「す、すみません。
ありがとうございます。」
リリは申し訳無さそうに、ペコペコと謝る。
「リリ〜!!」
「あ、お兄ちゃん!!」
中々ついて来ないリリに気付き、リルダが様子を見に来た。
「よかった〜、心配したよ。
さ、後は落とし物を探すだけだ。」
「うん!」
こうして二匹はこんどこそ帰ったのだった。
「ふう。」
「フフッ♪可愛いね、あの二匹。」
「うん、そうだね…っ!?」
その時、突然カズヤを目眩が襲った。
「ぐっ!!」
目眩が激しいせいか、膝を落としてしまった。
「カズヤ!?」
「だ、大丈夫ですか?カズヤさん!?」
と、フィルミィとバイが口々に言う。
「しっかりしてください!?」
「カズヤあ!!」
(な…何だ?これは一体……?皆の声が遠く……目の前が暗くなってくる…!?)
その時、カズヤの頭の中に光のような物が走った。
『た…助けてっ!!』
その声が聞こえたあと、再び視界が戻ってきた。
(な…なんだ?今の声……助けてって……)
「カズヤ!!カズヤあ!!」
「………はっ…!」
「カズヤ…!良かった……気付いてくれた……」
「フィルミィ…?(泣いてる…?)」
フィルミィは目から出た涙を拭いてカズヤに尋ねた。
「どうしたの?突然。」
「分からない……急に目眩が……………っ!そうだ!今助けてって…!」
「え?」
きょとん、とするフィルミィ。
「あ……いや、何でもない……」
そんなフィルミィの顔を見て、カズヤは気のせいだという事にした……
「……?」
「大丈夫ですか?」
ショウが声を掛ける。
「はい。」
「それは良かった。」
バイも安心した様子だ。
「カズヤ、そろそろ帰ろ?ビッケも待ってるよ。」
「そうだね。
じゃあショウさん、バイさん、僕達もう帰ります。」
「何か買って行かなくていいんですか?」
「あっ、そうだった…」
「忘れる所だったよ…」
見事に忘れていた二匹。
「え〜と、それじゃあ…」
カズヤとフィルミィは、探検に取りあえず必要そうな物(オレンの実や、ピーピーマックス、あなぬけの玉など)を買う。
「「毎度あり!」」
「それじゃ!」
こうして二匹は道具屋を後にし、ギルドへ帰ろうとしたが、その途中……
「あっ!あれは…?」
フィルミィが見付けたのは、どうやらさっきの二匹のようだ。
そして、そこにはもう一匹……?
「わーい!」
「ありがとうございます!」
「いやいや、お安いごようですよ。」
フィルミィは何があったのか気になり、話し掛けてみる。
「どうしたの?」
「あっ!さっきの!」
と、リリが反応する。
「僕達前に大切な物を落としちゃって……それでずっと探してたんですが……なかなか見付からなくて……でも!そしたらこのエゾロさんがその落とし物ならどこかで見た事があるかもしれないって!」
エゾロとは一緒に話していたスリープの事の様だ。
「それで一緒に探してくれるって言うんです!僕達もう嬉しくって!」
「そっか!それは良かったね!!」
フィルミィは、笑顔でそう答える。
「ありがとう!エゾロさん!」
「いやいや、君達みたいな幼い子等が困ってるのを見たらほっとけないですよ。早く探しに行きましょう!」
と、エゾロは意気込んだ様子で言う。
「うん!」
こうして三匹が去っていこうとした、その時……
『ドンっ!!』
「うわっ!」
「おっと、これは失礼。大丈夫ですか?」
カズヤとエゾロの肩がぶつかってしまった。
「僕は大丈夫。
それより早くあの二匹を手伝ってあげてよ。」
そう言い、カズヤは笑い掛けた。
「そうですね、では。」
エゾロも丁寧に御辞儀をした後、去って行った。
「エゾロって親切なポケモンだよね……感心しちゃうなあ…世の中悪いポケモンが増えてるってのに……なかなか出来ないよね。」
フィルミィは、うんうん、と頷く。
「そうだね…」
と、話している時、
「っ!?」
再びカズヤを目眩が襲う。
「ぐぅ…!」
「…!!また…!!カズヤ!しっかりして!!」
再び起こったカズヤの目眩に、フィルミィは取り乱す。
(ま、またか………また目の前が暗く………)
カズヤの頭の中に、再び光が走る。
今度は声だけでなく映像が流れて来た。
岩山のような場所にポケモンが二匹……
「(あ、あれは………エゾロとリリ……?)」
『言う事を聞かないと……痛い目にあわせるぞっ!』
『た…助けてっ!!』
ここで映像は途切れた。
「(……!?い…今のはっ!?)」
「カズヤあ!!」
「…はっ!」
「よ、良かったあ……」
フィルミィは心底ホッとしたような声で言う。
「今のは一体……」
「どうしたの?本当に大丈夫?」
「(……今のではっきり分かった……さっきの目眩の時の助けてって声は………リリのものだ!!)」
そう、先程カズヤが見た光景は、エゾロがリリを脅迫しているところだったのだ。
怯えるリリが、『助けて』と言ったのも、はっきり見えたし聞こえた。
「……フィルミィ、話があるんだけど…」
「えっ!?な、何?そんな改まって……」
急に真剣な眼差しになるカズヤに、一瞬ドキッ、とするフィルミィだが、無論そう言う話では無い。
「今目眩がした時……見えたんだ。」
「見えた?」
「岩山みたいな場所で………」
カズヤは、目眩の時に見た事をありのまま話した。
………………………
「ええっ!?リリがエゾロに襲われてた!?」
「うん!早くリリを助けに行こう!!」
「大変だよ!!……大変だけど………う〜ん、でも………」
何か言いたげにしているフィルミィに、カズヤは何を思うのか言うよう促す。
「……カズヤが言ってるから信じたいけど……でもあんなに親切そうだったエゾロがそんな事するのかな……」
「そ、それは……」
確かに一見すると、エゾロは相当優しそうなポケモンだ。
カズヤにもよく考えると、エゾロがそんなポケモンだとは思えない。
「カズヤ、もしかして疲れてるんじゃ…?」
「う〜ん……」
「悪い夢でも見たのかもしれないよ?」
「(悪い夢、か……確かに考えてみれば突拍子も無い話だ……白昼夢でも見たのかもしれない。)」
フィルミィの、『悪い夢説』に納得するカズヤ。
「ビッケが待ってるよ。
早く戻ろ?」
「…そうだね、そうしようか……」
こうして二匹はギルドへと帰って行った。
〜ギルド地下一階〜
「おっ、お帰りでゲス〜。」
「ごめんね、遅くなって。」
「いや、大丈夫でゲスよ。それじゃあ一緒にお尋ね者を選ぶでゲス。」
そう言い、三匹は掲示板に目を向ける。
「う〜ん…」
「どれにすればいいんだろう……」
「コホン。
じゃ、ここは先輩としてひとつ、あっしが選んであげるでゲス。」
「あまり怖そうなの選ばないでね!!」
と、大きな声で、『怖そう』を強調して言うフィルミィ。
「わかってるでゲスよ。
ええと…どれに…」
と、その時、突然サイレンが鳴った。
「うわあ!!」
「なっ、何!?」
カズヤとフィルミィは、その音に驚く。
『情報を更新します!危ないので下がってください!』
「ビッケ!これは一体…!?」
「これは情報の入れ替えでゲスよ。」
と、その時、掲示板が突然回転して引っくり返った。
「きゃっ!!」
フィルミィは短く悲鳴を上げる。
「な、なんだこれ…」
「掲示板はみんなこんな風に回転式になってるんでゲス。
壁を引っくり返している間にドルディが情報を書き換えているんでゲスよ。」
「(あのダグトリオの事か…)」
『更新終了!危ないので下がってください!』
「あ、終わったみたい。」
掲示板が、もう一度回転する。
「さあ、情報が新しくなったでゲス。
お尋ね者も新しくなったんで選び直すでゲスよ。」
と、その時、フィルミィが何かに気付いた。
「…!?」
「…どうしたの?フィルミィ。」
疑問に思ったカズヤが聞いてみると、
「カズヤ……一番左上の所見てみて……」
「…?うん。」
言われた通りに左上を見てみるカズヤ。そこには…!
「…なっ!?こいつは…!?」