第08話 頼ろうビッケさん!
昨日は、依頼主に見つけてくれと頼まれた真珠を、見事見つけて依頼主に渡す事が出来たウィングズ。
そんな彼らの一日がまた始まるのだった………
「起きろーーーっ!!朝だぞーーーーっ!!」
「ぎゃあああああああああ!!」
「いやあああああああ!!」
「早く来いよ!!」
ゴンドはやる事やって、朝礼へと急ぐのであった。
「うぐぅ……二回目でもキツイ……」
「耳が壊れちゃうよ…」
今回でゴンドの目覚まし(そんな目覚ましは嫌だ)は二回目だが、慣れないものは慣れない。
フィルミィに至っては、ちょっと涙目になっている。
「えっと……朝礼か、早く行かなきゃ。」
「うん……そうだね……」
とりあえず足早に、朝礼へと向かった二匹であった。
〜ギルド地下二階広場〜
「「「「「みっつー!皆笑顔で明るいギルド!!」」」」」
「さあみんなっ♪仕事に掛かるよ♪」
「「「「「おおーーーーっ!!」」」」」
いつもの流れが終わり、各自仕事へと取り掛かり始める。
「……」
「……今日は何すればいいんだろう?」
「おい、お前達、そんな所でウロウロしてないで、こっちにきなさい。」
(ウロウロはしてないんだけど……)
ペリクがそう言うので、ウィングズの二匹はペリクの後を付いていった。
〜ギルド地下一階〜
「さあ、ここだ。」
彼らが案内されたのは、昨日とは反対側の掲示板だ。
「…?あれ?今日はこっちなの?」
フィルミィは、昨日と掲示板が違う事に疑問を持つ。
「ああ♪今日はこっちの仕事をやってもらうよ♪」
「あっちとなんか違うの?」
カズヤが昨日の掲示板と何が違うのか聞くと、
「よく見てみろ♪」
「「……?」」
二匹は言われた通り掲示板を覗いてみた。
「あれ?こっちに貼ってある依頼書……いろんなポケモンの絵とか写真が貼ってあるよ?」
「本当だ。」
二匹が見てみるとそこには、昨日の掲示板に貼ってあった依頼書とは違って、色々なポケモンの写真や絵が貼ってあった。
「ペリク、このポケモン達はなんなの?」
フィルミィは訪ねる。
「ここにあるのは……全員お尋ね者。
皆悪い事をして指名手配されてる奴等だ。」
「お、お尋ね者だったの!?」
予想外の返答に驚きを隠せないフィルミィ。
「そう、だから彼らには賞金が懸けられているのだ♪だから捕まえればお金が貰えるんだけど……でも凶悪なポケモンが多いんだよねえ……おかげで皆手を焼いてるんだよ。」
「も、もしかして…………そいつらを捕まえるのが今回の仕事!?」
「そうだ♪」
ペリクは何故か高いテンションで言う。
「そんな……私にはそんな事出来ないよお!!」
本日二回目の涙目である。
「……プッ♪」
「ん?」
ペリクが少し笑ったのにカズヤが気付く。
「あっはっはっはっは♪ジョーダンだよ♪ジョーダン♪」
「……え?」
フィルミィがペリクに顔を向ける。
「悪いポケモンって言っても色々いるからね♪世紀の極悪ポケモンもいれば……ちょっとしたこそ泥もいるって感じでほんとピンキリだよ♪極悪ポケモンを捕まえて来いなんて、お前達に頼める訳無いじゃないか♪ハハハハハ♪まあこの中から弱そうな奴を選んで懲らしめてくれ♪」
「……………でも、弱いと言っても…………悪いポケモンには変わり無いんだよね…?」
「まあそうだな。」
そりゃ確かに、弱かろうが強かろうが、お尋ね者なのだから悪いポケモンには違いないのである。
「うぅ………やっぱり怖いよう……」
(………お尋ね者を怖がってちゃ、探検隊なんて出来ないんだけどねえ……)
ペリクは、『困ったなあ』と言わんばかりの表情になる。
「………フィルミィ、昨日の夜僕が言った事、覚えてる?」
「え…?」
フィルミィは、昨日の夜を思い返してみる。
………………
「大丈夫……なんとかなるよ……それに、自分で選んだ道でしょ?頑張らないと…!」
………………
「……………カズヤ…………」
フィルミィは思い出した。
昨夜、カズヤに言われた事を。
そう、探検隊になった事は、フィルミィ自身が選んだ道なのだ。
「………そう、だよね………私が選んだんだもん………怖いけど、頑張るよ!」
フィルミィは、自分が決めた事だと、覚悟を決めた。
「うん!頑張ろう!僕も精一杯協力するよ!」
そう言い、カズヤはフィルミィに微笑みかける。
「あ、ありがとう…カズヤ…!」
少し赤面しながらも、フィルミィはカズヤから瞳は逸らさなかった。
「(……成る程……良いチームだな……)」
ペリクは、そんな二匹の様子を微笑まし気に見ていたが、すぐに表情を元に戻す。
「さて、とりあえず……戦うにはそれなりの準備が必要だよな……誰かに施設を案内させるか。」
確かに、ペリクの言う通り、戦うには準備が必要だ。
なんの用意も無しにお尋ね者に挑もうなど、よっぽど圧倒的な強さを持ってない限り、自殺行為と言ってもいいかもしれない。
大袈裟と思うかもしれないが、相手はお尋ね者。
凶悪な奴になると、死なない様に手加減なんてしてくれないのだ。
「誰かって……誰を呼ぶの?」
「そうだな……よし、あいつにしよう。
おーい!!ビッケ!!ビッケ!?」
と、やかまs…大きな声でビッケを呼ぶ。
「おい、誰がやかましいだ、誰が!」
「ペリク、誰に向かって話してるの?」
「はっ…いや、何でもない……(おかしいな……今やかましいとか言われたような気がするんだが……)」
とか彼らがやってる内に、地下の方から声が聞こえた。
「はいーーーっ!」
梯子を上ってきたのは、昨日自己紹介された、ビッパのビッケだった。
「はあ……はあ…はあ………」
「(あ、昨日ゲスゲス言ってたビッパだ……)」
「(あ、口癖が『ゲス』だったビッパさんだ……)」
カズヤフィルミィ共に失礼な事を考えているが、大体あってる。
「お呼びでしょうかー!」
「ああ♪こいつらに施設とかを紹介して欲しいんだ♪」
「はいーーーっ!了解でゲス!!」
ビッケは無駄に大きい声で答える。
「じゃあウィングズ、ビッケの言う事をきちんと聞いて行動するんだぞ♪じゃあな♪」
そう言うとペリクは再び地下二階へと帰って行った。
「……ううっ。」
「(あれ?何か涙目になってない?)」
何故かビッケは涙目になっていた。
「う、嬉しいでゲス……」
「ど……どうしたの?」
フィルミィが心配になって、話し掛けてみる。
「ああ、こりゃ失礼でゲス。
後輩が出来たんで感動してるんでゲス……」
「「(そんなに!?)」」
カズヤとフィルミィが、心の中で同じ突っ込みを入れる。
「君達がここに来る前は自分が一番の新入り立ったでゲスよ……」
「(何だかこのポケモンよく分からないな……)」
「(きっと感情の起伏が激しい人なんだな……)」
上からカズヤ、フィルミィの順に、ビッケにたいして心の中で、各々の感想を述べるのだった……
「………願い事、って叶うものでゲスな……」
「「え?」」
「あ、いや、なんでも無いでゲス……ただの独り言でゲスよ。」
謎の独り言に、頭に『?』マークを浮かべるカズヤとフィルミィ。
「じゃあ早速案内するでゲス。
ついてくるでゲスよ。」
「……行こうか……」
「うん……」
独り言に疑問を持ちつつも、カズヤとフィルミィは言われた通りにビッケについていった。
〜ギルド地下二階〜
「ほら、あそこを見てでゲス。」
「(やっぱり『ゲス』は言わなきゃいけないんだな……)」
未だにビッケの『ゲス』に慣れないカズヤ。
だが、取り合えず今は言われた方向を見てみる。
「あれは……」
そこには、朝礼の時にいたあのグレッグルが……
「……えっと、グレイクだっけ……………何やってんの?」
グレッグルのグレイクに近付き、そう訊ねるカズヤ。
「あぁ、今は準備中だがなぁ、ちょっと面白い事をやろうと思ってるんだぁ。」
「お、面白い事?」
グレイクの独特な雰囲気に少し腰が引けつつも、後ろにある壺が気になる事もあり、フィルミィはそう訊ねる。
「ああ、それはなぁ………グヘ、グヘヘへ……」
「「………(汗)」」
「あ〜、グレイクはこんな感じのポケモンだから、あまり気にしないで欲しいでゲス。」
グレイクの笑い方に完全に引いているカズヤとフィルミィに対して、フォローを入れるビッケ。
「(このギルドのポケモンはこんなんばっか…って事は無いよな…)」
そう思うカズヤであった……
「さて、食堂と弟子部屋がどこにあるかは分かるでゲスよね?」
「うん、大丈夫。」
「だったら、次はトレジャータウンでゲス!」
フィルミィの返答を聞いたビッケはそう言い、梯子を登って行くので、カズヤ達もそれに付いていく。
〜トレジャータウン〜
「おお〜…!」
ギルドを出て、その先の交差点を右(方角で言うと西)に曲がり、辿り着いたのは……
「ここはポケモン達の広場、トレジャータウンでゲス。」
「ここに来るのは初めてだな……」
沢山のポケモン達が活気に溢れながら活動している様子を見て、地味に感動しているカズヤ。
「そういえばカズヤはここに来た事なかったよね。」
「来た事無いんでゲスか!?という事はカズヤは結構遠くから来たんでゲスか?」
「ああ…まあ、ね……」
本当は分からないのだが、とりあえずカズヤは適当に流しておいた。
「それで……」
「ビッケ、トレジャータウンの事なら私わかるよ。」
「あれ?そうでゲスか?」
「うん。
私ここのすぐ近くに住んでたんだもん。」
と、少しフィルミィは得意気な表情をする。
「まずあそこが、ヨマワルのメジマが営んでいる銀行。」
そう言って彼女が指(ゆび)…は難しいので尻尾で指したのは、ヨマワルの姿をモチーフ…というかそのまんまにして作ったと思われる建物がある。
「何か怪しそうだな……」
「う〜ん、私も最初はそう思ってたんだけど……メジマさんはああ見えてね、とことん真面目だから大丈夫だよ。」
「(親の名前の付け方のせいか…?)」
実は『メジマ』を逆から読むと、『マジメ』である。
親のネーミングセンスを疑いたくなる名前である……
「それであそこが、エレキブルのエーレントが営んでいる連結店。」
次にフィルミィが尻尾で指したのは、先程の銀行のエレキブルバージョンの建物だ。
「連結店?」
元人間のカズヤにとっては連結店という言葉はまったく聞いた事が無い言葉だった。
「うん、技に関しての事が色々出来るんだけど…今はいないみたいだね、詳しい説明はまた今度するよ。」
「ふ〜ん…」
「(今時連結店を知らないなんて、珍しい事もあるんでゲスね〜。)」
と、密かにビッケは思っていた……
「それで向こうの方にも、カクレオンの兄弟が営んでいる道具屋とか他にも色々あるけど……」
「まあ習うより慣れた方がいいかな。」
「そうだね、その方がいいかも。…ねえ、ビッケ?」
「ん?どうしたでゲスか?」
「何かこれ以上付き合わせると悪いかな、って……」
「ああ、色々と見ていくんでゲスね。
じゃああっしは先にギルドに戻ってるから、また後でお尋ね者選びでゲス。」
「うん。
じゃあまた後でね!」
「しっかりと準備してくるでゲスよ〜……」
こうしてビッケは一足先にギルドへと戻って行った。
「(…ビッケが来た意味はあったのかな…)」
カズヤはそんな事を疑問に思ってたりした……
「……じゃ、どうする?」
カズヤはフィルミィに聞く。
「う〜ん……」
「どこか行きたい所とかある?」
「え?カズヤはいいの?」
「まあ特別行きたい所がある訳じゃ無いし。
っていうか分かんないしね。」
「そ、そっか、じゃあ私道具屋に行ってみたいな。」
「分かったよ、じゃあ行こうか。」
「うん!」
こうして二匹はデーt…買い出しに行くのだった……