第04話 ギルド入門
奪われた遺跡の欠片を、エアードとイズンから見事取り返したカズヤとフィルミィ。
その後探検隊ウィングズを結成した彼らだが、正式に探検隊として活動するにはまだ足りない事が……
〜海岸〜
「……ところでカズヤ?」
「うん?」
「実は……これじゃまだ正式に探検隊とは言えないの。」
「……どういう事?」
てっきりもうこれで探検隊ウィングズが結成されたものだと思っていたカズヤは、疑問の声を挙げる。
「私達みたいに、初めて探検隊になるポケモンはね、各地方にある、【ギルド】って所に弟子入りして修行しなくちゃいけないんだ。」
「へぇ〜……ギルド、か……」
カズヤはしばらく考え込む。
「(ギルド…?一体どんな所なんだ?)」
そう思ったカズヤだが、とりあえず今は一旦ギルドがどんな所なのかは置いておく事にし、フィルミィに訊ねてみる。
「この辺りにはギルドってあるの?」
「うん。プクリンのギルドっていう所が。」
「……何だか地味な名前だね……」
ただ種族名の後ろに『ギルド』と付けただけの名前。
どうもカズヤには不安が過る。
「それは、私も……思ったけれど…でもギルドの親方のレイリンってポケモンはすっごく強いんだって!それに色んなギルドの中でも有名みたいだしね。」
「レイリンってプクリンなの?」
「そりゃまあプクリンのギルドだしね。」
フィルミィは、当然そうな顔でそう答えた。
それもそうだ。
親方がプクリンでなければ、何故プクリンのギルドなのか、まったく意味が分からない。
「ふ〜ん……まっ、とりあえず行ってみようか!」
考えるよりは行ってみよう、という事らしい。
「うん、そうだね!」
こうして二匹は夕暮れの中丘の上に位置する、プクリンのギルドへと向かった。
〜プクリンのギルド前〜
「ここか。」
「うん。」
二匹は辿り着いた。
ギルドの前に。
カズヤは早速と、入ろうとするが……
「……?入口の門が閉まってるけど?」
そう。
どう見てもそこ以外には入口は無いのに、門が閉まっているのだ。
「えっとね、門の前に穴があるでしょ?」
「ああ、なんか金網みたいなのが張ってある奴か。」
フィルミィが言っているのは、見張り穴の事だ。
ちなみに、正確には鉄格子
「(金網よりは頑丈だと思うけど……)う、うん。それそれ。見張り穴って言うんだけど。」
「で、どうすればいいの?」
「この上に乗って足形を見てもらうの。」
「見てもらってどうするの?」
「足形で誰かを判断して、怪しい者じゃないかを調べるんだ。」
「なるほどねえ……」
カズヤが妙な納得をする一方、フィルミィは見張り穴へと一歩を踏み出そうとする。
「そ、それじゃあ……わ、私から乗るね……」
そう言うと、フィルミィは少し怯えながらもゆっくりと見張り穴の上に足を進めた。
「ポケモン発見!!ポケモン発見!!」
「誰の足形?誰の足形?」
「(うぅ……!いや、駄目だ!ここでどいたら…!今はカズヤもいっしょにいるから……だから大丈夫…!!)」
フィルミィは、ひたすら耐え続けた。
「足形はイーブイ!足形はイーブイ!」
「……!」
種族名を言われ、一瞬ビクッ、となるが、フィルミィはなんとか耐えきる。
…………
中が静かになった。
どうやら確認が終わったようだ。
「…よし、そばにもう一匹いるな。お前も乗れ。」
「ふう……終わった、んだ…」
フィルミィは安心し、見張り穴の上から降りる。
「…………」
カズヤはボーッと見張り穴を見つめる。
「……あの、多分カズヤの事を言ってるんだと思うけど……ここに乗れって。」
「(……何だか…あそこの上に立ったら足の裏がこそばゆそう………)」
なんかどうでもいい事考えていた。
「おい!そこのもう一匹!早く乗れ!」
「はーい。(何で見えてないのにもう一匹いるって解るんだろう?)」
カズヤが突っ込んではいけないところを心の中で突っ込んでいると、穴の中からお決まりのやり取りが聞こえてきた。
「ポケモン発見!!ポケモン発見!!」
「誰の足形?誰の足形?」
「(一応それはやるんだな…)」
「足形は……足形は………え〜と…………」
「どうした!?見張り番!ん?見張り番!?見張り番のディル!どうしたんだ!?応答せよ!」
どうやら見張り番はディルと言うらしいが、見えないので種族は分からない。
「ん〜と………え〜と………足形はぁ……………」
「何をしてんだ…?」
穴の中のもう片方の見張り番は、疑問の声を上げる。
「多分ヒトカゲ!多分ヒトカゲ!」
「……はあ!?何だ!多分って!?。」
『多分』と言う曖昧な答えに、当然ながらもう一匹の見張り番は怒る。
「だ、だってぇ……この辺じゃ見かけない足形なんだもん……」
弱々しい声を挙げるディル。
そう、この辺りにはヒトカゲは住んでいないのだ。
「ああもう情けないな!足の裏の形を見て、どのポケモンか見分けるのが……ディル、お前の仕事だろ?」
「そんな事言われてもぅ…分からないものは分からないよ〜。」
一方、外は……
「…………何かもめてるみたいなんだけど……」
「あはははははは…」
フィルミィもその様子に、苦笑いするしか無かった……と、その時、
「……またせたな。」
「「!」」
見張り穴の中から、ディルでは無い方の声がした。
「まあ確かに、ここらじゃヒトカゲは見かけないが……でも怪しい者でもなさそうだしな…。よし!いいだろう!入れ!!」
何を根拠に、怪しい者では無いと言っているのかは分からないが、扉を開けてくれるようだ。
『ガララララ……』
「うわっ!?開いたよ!」
「入ってもいいって事だね。入れって言ってたし。」
「そ、それじゃあ行ってみようか…」
と、言いながらもカズヤの後ろに隠れてびくびくしているフィルミィ。
カズヤは苦笑いしながらも、フィルミィを連れて入口へと入っていった。
〜ギルド内部〜
「こ、これっ!!こんなとこに地下への入口があるなんて……」
ギルドの中は、小さな部屋になっていると思いきや、地下に繋がっていた。
梯子があるので、それで降りるのだろう。
「じゃ、降りてみようか。」
「う、うん……」
降りていくカズヤに、相変わらずびくびくしながら付いていくフィルミィだった……
〜ギルド地下一階〜
「わあ〜!!」
二匹が降りていった先に広がっていたのは、沢山のポケモン達が集まる賑やかな場所。
壁を見ると掲示板のようなものが二つあるのが分かる。
「ここがプクリンのギルドなんだね!!ポケモン達がいっぱいいるけど、もしかして…みんな探検隊かなぁ?」
「まあ多分そうじゃないかな。」
と、そこへ……?
「おい!」
「「?」」
一匹のポケモンが話し掛けてきた。
「さっき入ってきたのはお前達だな?」
「は、はい!」
フィルミィは思わず畏まる。
「私はペリク♪種族は見ての通りペラップだ♪ここらでは一番の情報通であり……」
「自分で一番って言ったよ…」「そこ!うるさいぞ!え〜、そしてレイリン親方の一の子分だ♪勧誘やアンケートならお断りだよ。さあ帰った帰った。」
カズヤのツッコミを退けてそう言うペラップ……ペリクは、ギルドの関係者らしい。
カズヤ達を、勧誘やアンケートと勘違いしたらしく、さっさと追い返そうとする。
「ええっ!?ち、違うよ!!そんな事できたんじゃなくって…その…えっと……」
探検隊になりたいと言えばいいのに、ここに来て急に口が止まってしまうフィルミィ。
やはり、少し臆病な所があるようだ……
「えと…その……あの………」
「……」
カズヤは、黙ってフィルミィの肩の辺りを手で軽く叩いて、前に出る。
「……?」
「………僕達、探検隊になりたくて、ここに弟子入りしに来たんです!!」
「カ、カズヤ……」
フィルミィがなかなか言えなくて困っていたので、カズヤは代わりに言ってあげた。
フィルミィは少し顔が赤くなっているようだが……
「ええっ!?た、た、探検隊っ!?」
ペリクは、驚愕の表情でそう言った。
ペリクは何故か驚き、二匹に背を向け小さい声で……
「うわぁ……今時珍しい子達だよ……このギルドに弟子入りしたいとは………あんな厳しい修行はもうとても耐えられないと言って、脱走ポケモンも後を絶たないと言うのに………」
と、ブツブツと聞こえないように言っていたが……
「そんなに厳しいの…?」
残念、聞かれていた。
「はっ!?(やばっ!!聞こえてた!?)」
ペリクは慌てて振り返り、
「いやいやいやいやいやいや!!そ、そんな事無いよ!?探検隊の修行はとーっても楽チン!!」
と、焦った様子でそう言った。
「(言ってる事ぐちゃぐちゃだなこのポケモンは……)」
と、カズヤは思ったが、弟子入りがパーになってもまずいので、黙っておく事にした。
そして、急に笑顔になるペリク。
「そっかー♪探検隊になりたいなら早く言ってくれなきゃー♪フッフッフッフ♪」
「……」
フィルミィは、なんかこう…微妙な顔をしていた……
「急に態度かわったな〜……」
「じゃ、さっそくチームを登録するから付いてきてね〜♪」
ペリクは一匹でさっさと歩き始めてしまった。
「ほら♪何してんの?こっちだよ♪さあ早く早く♪」
物凄くご機嫌な様子でカズヤ達に言い、ずんずんと進んでいく。
「…行こうか……」
「う、うん。」
二匹も呆れながらもついていった……
〜ギルド地下二階〜
「ここはギルドの地下二階。主に弟子達が働く場所なんだ。チームの登録はこっちだよ、さあ。」
「どこに行くんだろう?」
二匹が案内されたのは……
「さあ、ここがレイリン親方のお部屋だ。くれぐれも……くれぐれも粗相が無いようにな。」
二匹が連れて来られたのは、いわゆる親方様の部屋。
「はーい。」
「うん。」
上から、カズヤ、フィルミィの順に返事をした。
「よし、入るぞ、…親方様、ペリクです♪入ります。」
果たして、親方レイリンとは…?