第01話 二つの命、出逢う時
『ドンッ!』
「きゃっ!!」
「うおっ!?」
走っていたポケモンと、歩いていたポケモンがぶつかった。
「おいこら!!
てめっ、気を付けろ!!」
歩いていた方のポケモンが怒った様子でそう言うともう片方は、
「はっ、はい!!
あのっ、そのっ、えっと、その……す…すいません……!!」
と、その走っていたイーブイの女の子、フィルミィが泣きそうになりながらそう言う。
「え、ええっ!?
なんで泣くんだよ……って言うか泣くなよ!」
やりすぎな謝り方に、焦ってそう言う。
「あっ、……すいません………」
フィルミィは、取りあえず泣き止んだ。
「(何だったんだ…?)」
そのポケモンが去ると、彼女は再び走り出した。
「この宝物を持って行けば…!」
……ここは、有名なプクリンのギルドの前。
フィルミィは、ここの前へと来ていた。
「…いつも思うけどどうしてプクリンのギルド…?
種族名じゃなくて名前にすればいいのにな……」
と独り言を言いながら例の見張り穴の前に立つ。
例の見張り穴とは、ギルドに入ろうとするものを、誰なのか足形で見極める為に、プクリンのギルドが設置した穴である。
ちなみに、フィルミィは探検隊になりたいのだが、この穴が怖くていつもギリギリで入れないのだ。
「…………大丈夫……今日は宝物も一緒なんだから、絶対行ける…!!」
彼女は見張り穴の上に勇気を出して立った。
「ポケモン発見!!ポケモン発見!!」
「!!」
ビクッと体を震えさせるフィルミィ。
「誰の足形?誰の足形?」
「足形は…」
「…っ!だめっ……!!」
フィルミィは見張り穴から飛び退いてしまった。
「……足形見失いました……」
「やれやれ……またか………」
「どうなってるんでしょうね…?」
「はあ……またやっちゃった……ギルドのポケモン達もいい加減迷惑だよね……この宝物を持って行けば入れると思ったんだけどなあ………」
そう、フィルミィはここが怖くていつもギルドに入れないのだ。
「はあ……」
そう溜め息をつきながら彼女が取り出したのは、不思議な模様が書いてある石だった。
「私ってほんと駄目だなあ……自分が情けない………探検隊……向いてない、のかな……そうなんだろうな…………いや、やっぱり頑張ろう!!だって探検隊に入ってこれの謎を解明するのが夢だもん!!」
彼女は、その石を見ながらそう断言する。
「(それに………探検隊に入って、こんな私を変えるって決めたんだから!!)」
そしてフィルミィはある場所に向かって歩き始めた。
「おい、今の聞いたかよエアード。」
物陰から出てきた二匹の片方がもう片方のズバットにそう言った。
「ああ……ばっちり聞いてたぜイズン。」
エアードがもう片方のドガースにそう答える。
「宝物とか言ってたよな……」
「ああ…つまり高く売れる物……」
「狙うか?」
「ああ、もちろん狙うさ……」
そう言い、イズンとエアードは、フィルミィを追い掛けて行った……
〜海岸〜
「うわあ……やっぱり綺麗だな……」
フィルミィがやって来たのは、フィルミィが住んでる町、トレジャータウンのすぐ近くにある海岸。
フィルミィは夕方いつもここに来て、クラブ達が吐いた泡を夕日が照らしている光景を見て元気を出すのだ。
「………………」
フィルミィはしばらくこの光景を見ていたが、ふと横を見た途端、とんでもない光景が彼女の目に飛び込んできた。
「っ!!誰か倒れてる!?」
フィルミィはその倒れているポケモンに急いで駆け寄る。
「ちょっと!?ねえ!!大丈夫!?ねえ!!」
その声で目を覚ましたのか、顔を上げてくれた。
「っ……う〜ん……ここは…?」
その“ポケモン”は、なんとか目を覚ます。
「あっ!気が付いた?良かった〜!あなたここで倒れてたんだよ?」
「倒れてた…?僕が…?」
「うん。大丈夫なの?どこか痛んだりしないかな?」
「あれっ……………なんで僕ポケモンの言葉が分かるんだ?」
と、フィルミィからしたら、いきなり意味不明な事を言い出すそのポケモン。
「えっ…?
……そりゃあポケモン同士だし………」
首を傾げながら言うフィルミィに、こちらも首を傾げて、
「え………何言ってるの?僕は人間だよ?」
と、言う。彼は真顔で言うが、フィルミィにはとても本当の事を言っているとは、思えなかった。
何故なら……
「ええっ!?でも……どうみてもヒトカゲ…だよ…?」
「へっ?」
彼は自分の手を見てみた。
その時彼の目に映ったのはとても人間の手とは思えない。
どう見ても、ヒトカゲのものだ。
「!?」
彼は今度は海を覗いてみたが…そこに光が反射して映ったのは……
「…!!、ヒ、ヒヒ、ヒ、ヒトカゲえええええええっ!?」
「(なんか……怪しいなぁ……)」
フィルミィは、呆れた表情をしながらそう思い、ある事を聞いてみる事にした。
「あの〜……」
「ん?何?」
たったさっきまでパニックになっていたわりには、結構あっさりと返事をするヒトカゲ。
「あなた…名前、何て言うの?」
「名前……」
彼は、暫く悩んだ様子を見せた後、こう言った。
「僕の名前は………カズヤ………」
「カズヤ………」
これが、この二匹の出逢いだった……この時はこの出会いがフィルミィの事を変えるなんて、まったく彼女は思って無かった……二匹の物語はここから始まる……