第一話「たわむれ…」
引き締まった “彼女"の頭を撫でる
「かわいいなぁ…」
彼女は"頭"を水から半分出して、ずっとこちらを向いて立っている…異常につやとハリのある肌、おれの二倍近くある大きさと体重、白黒の体。かっこかわいいってこのことかな…。
「そういえば…」
最初に好きになったポケモンもシャチだったけか…
名前が出てこない。か、カイリュー
じゃなくて、えーと…。
“どうしたの?”
そう言ってるように、彼女はずっと見つめてくる…照れるだろ、そんな見られたら//
白い大きな楕円形の模様に目がいって、大抵の人は初見で彼女の"目"に気がつくことは無い…こんなかわいい瞳をしてるのに…
瞳に視線を合わせる。彼女は何事もなかったように水のなかへ
戻っていった 。おれが見つめても無視ですか…それか照れてんのか笑「ラプラス…。」呼んでも反応しない。やっぱり駄目かなぁ、この名前…。いい名前だと思うんだけどなぁ。彼女は一回もこの名前で反応したことがない。嫌われてんのかな…。
のんびり水のなかをただようように泳ぐ彼女…きれいだなぁ…
「ん、」…ふと時計が目に入る。午後一時…やべ、昼ごはん食べてない(汗)。食べてくるか……。
彼女の方を見る。我、関せずと言わんばかりに優雅に泳いでいる。"さびしいっ!"とか言ってもいいんだぜ?ラプちゃんよ。「……。(無視)」
試しに手を振ってみる。「………。(無視)」
ちぇっ、いいもんじゃあ、飯食ったらイルカのとこ行くもんね!
……悲しくなってきたわ泣
この水族館には四歳のときからよく訪れている。飼育員さんとは、顔見知り。たまにこうやって動物を触らせてもらってる。親父が「お前が動物好きなのは、小さいころからおれが水族館連れてきてやってるからだからな!」って言ってた。まあ、ありがたいですけど。
彼女がこの水族館に来たのは一ヶ月前。地元の人が言うには、水族館近くの海をゆうゆうと泳いでたとのこと(海のギャングが日本でなにやってんだ…)いろいろあってこの水族館が引き取ったらしい。そっからおれはたまに話相手になってもらってる。(とっ、友達いないとかじゃないもんね…。)
彼女がいる水槽は、大きなショースタジアムの脇にある。そこから離れるため、他のシャチたちがいるショー用の水槽の前を通る。バシャッ 「What!?」
見るとラプラスとは別のシャチたちが逆立ちしてしっぽをパタパタさせてる。"おれたちも撫でてー"っていう合図。しょうがないから近づくと歯が一本異様に光ってる。
こいつら飯(魚)食ったから遊べって、さっきまで静かだったのはそのためか!おれは飯食ってないんだよ!まあ、いつものことか…。