プロローグ
どこまでも深く生い茂る森、どこまでも大きく広がる海、どこまでも高く聳える山。そんな自然豊かな世界に住む者達は、この世界を「アナザー」と呼ぶ。そう、貴方達にとって「別世界」とも呼べる場所。
人間は一切存在せず、代わりに「ポケモン」と呼ばれる不思議な生き物達が暮らしている。ある者は自慢の脚で大地を駆け、ある者は深い海を優雅に泳ぎ、ある者は果てしなく広がる空を飛び回り、またある者は、誰にも知られることのない「神域」とも呼べるような地で、ひっそりと生を営む。さらに、ごく少数だが、ある一か所の土地に集まり、町を興して賑やかに暮らす者もいる。
余程のことが無い限り、争い事もなく、ポケモン達は平和な時間を享受し続けていた。―――つい最近までは。
朝、いつものように目を覚まし、ふと目に飛び込んでくるニュースの大半が、台風や山火事などといった自然災害の話題で占められているという生活が毎日続くなんて、想像できるだろうか。現在「アナザー」では、今述べたことが実際に現実となって起こっているのだ。この瞬間にも、「アナザー」のどこかでは大竜巻、またどこかでは落雷、また別の場所では地割れが発生し、連日多くのポケモンが傷つき、命を落としている。
さらに猛威を振るっているのは、災害の起こった後に出現する「不思議のダンジョン」と呼ばれるもの。一見無害そうな名称、しかも見た目は洞窟や森と変わらないが、災害から逃れてそこに避難しようと思ったが最後、そこに元から住んでいたポケモン達が災害に慄き我を忘れて襲いかかってくる。この二つの事象が「アナザー」全土で頻繁に起こり、皆、生きた心地がしないまま時を過ごしているのだ。
しかし最近、災害の被害に遭うヒトびとが、少しずつだが減り始めてきていた。「救助隊」という存在によって。
災害がいつ起きてもおかしくない世の中となってしまった今、ポケモン達だってただ怯えているだけではない。その災害から少しでもヒトの命を救いたいという願いから始まったのが、救助隊という職業なのだ。災害の規模拡大を食い止めるチームもあれば、被害にあったポケモンからの要請を受け、現場や「不思議のダンジョン」へ救助に行くチームもある。いずれにせよ、救助隊は誰もが憧れる存在なのだ。
これは、絶え間なく続く自然災害に立ち向かう、とある救助隊の物語―――