7.運の悪い男
眠らない街、ゴートシティ。
今じゃ四天王のゴルトが統治していた頃、俺様は旅立った。天才足る俺様は当時からずば抜けた実力を発揮していて、はっきり言って、そんじょそこらの雑魚トレーナーもジムリーダーもメじゃなかった。――あ゛? なんでゴートジムに最初に挑まなかったのかって? あの野郎がニヤニヤしながら言ったのよ。(「よう、そろそろオムツはとれたか?」)これはもう、旅の最後にギタギタのぼこぼこにするしかないと俺様はココロに決めた。あの野郎がビビってションベン漏らしちまうくらいにな。
ジム巡りは順調だった。ムカつく奴をボコったり、腹立つ奴を蹴落としたり、腰抜けからカツアゲしたりだったから、ちっと時間はかかったが。まぁ、仕方ない。俺様はとにかくカネがなかったし、よく喧嘩を売られた。当然、全員潰した。ケケケ、二度とトレーナーになろうと思わないだろうよ。
しばらく経った頃、1つ下にやたら強い奴がいると聞いた。サニーゴを連れた赤毛のガキで、同年代を軒並みぶっこ抜いてるってな。他にも強い奴はいたが、そいつの噂が一番派手だった。なにより腹が立ったのは、ボコった奴らが似たような捨て台詞を吐くようになったことだ。
お前はオレより強いが、ヒナタの方がもっと強かった
こんなデマがまかり通って良いワケがねぇ。俺様はガキを探し回り、とうとう見つけた。脳天気なツラした、ちんちくりんの赤毛だった。
「おい、そこの赤毛。ちょっとツラか――」
「ん?」
ガキが振り返ろうとした瞬間のことだ。
俺様は何故か、通りすがりのケンタウロスの群れに牽かれた。
◇
「その後もことあるごとに、やれケムッソの大量発生やら、急ぎだからまた今度だの、乱闘だの……忌々しい……」
「結局まともに名乗れたのはいつだったんスか」
「13回目だ」
マジすか、とイミビは哀れみの目を向ける。憎悪を募らせるノロシに、どっかのチャンピオンがくしゃみをした。