3.ヒナタとフライト練習
オニキス――サザンドラが、先日、とうとう最終進化を果たした。目が見えるようになり、翼が生えた。本能が働くのか、最初は怖々していた飛行も数日もせず、悠々とこなすようになった。
そうなればトレーナーたるヒナタの考えることはひとつだ。「背中に乗せてくれ! 空! 空飛びたい!!」サザンドラが抱えて飛ぶと、今度はこう言った。「なんか……違う……そう……分かった!! 背中に乗ったら格好いいよな!!」
閃いた! という笑顔に、サザンドラは、ハァ? という顔を返した。
背中に乗るには技術が要る。万全を期して練習は海で行われ、落下時のフォローにサニーゴが波間で待機している。3匹目の仲間はモンスターボールの中、ヒナタの腰元で静かにフライト練習を見守っていた。
「うひょー!」
何度か失敗して海に落下し、ギャラリーの船乗りや釣り人が手を叩く。ヒナタは海から這い上がり、背中に飛び乗った。「もう一回だ! もっと高く!」サザンドラは呆れつつ、それが望みなら、と高く舞い上がる。街が小さくなり、手を振る人々が豆粒のようになり、広い海が、地下への入り口や街道が見える。ぐんぐん高くなる。チャンピオンリーグのある山が見え、盆地まで臨もうとした時――「あ」ぽろっとヒナタが墜ちた。
興奮して手を離してしまったらしい。「うおおおおおおおおおおお!? お、オニキスー!」落下の悲鳴をあげるヒナタを、急降下して追いかける。ヒナタを空中で引っ掴み、サザンドラはほっと胸をなで下ろした。ヒナタは肩で息をしていたが、すぐに明るい顔で言った。「次はチャンピオンリーグが見えるくらい飛ぼうぜ!」
サザンドラが怒りの咆哮を返した。ヒナタがへらへらと手を振る。
「だぁーいじょーぶだって。お前も、みんなもいるんだからさ」
な、と海上のサニーゴを指し、腰のモンスターボールを叩いた。
「もっともっと、高くまで行こうぜ! オニキス!」