暗闇より


















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カジノの街
Box.31 Doubt―疑惑―
 じろりとエイパムが睨んできて、リクの手から5枚の手札を奪い取る。一瞬の早業だった。「返せ!」慌てて手を伸ばすが、するりするりと紙一重で避け、しまいには頭に登りだし、腕を振り上げた直後、ぴょいと背中の方へと飛び降りた。首が変な音を立て、リクが呻いた。

「リー!」

 リーシャンが眉を下げて呼びかけた。エイパムは手札を覗き込み厳しい顔をしていたが、リーシャンを見て表情を緩ませる。

「きき」
「リ……」
「うききっ!」

 エイパムは片目でウインクを返し、リクへと肩を竦めてみせた。「お前はなんなんだよ……」ジンジンとした痛みの揺れが収まるのを待ちながら言った。エイパムは尻尾でリクを指し、続いて自分を指し示す。通訳を求めて部下を見た。

「ゲイシャ様は、シャン太様との交代を望んでおられます」
「交代? でもこいつは、オレのポケモンじゃない」

 部下が首肯した。「その通り。名目上はツキネ様のポケモンとなっております」エイパムがモンスターボールをリクに放った。受け止める。これは、エイパムのモンスターボールだ。

「ゲイシャ様は一匹での参加登録が済んでいます。そしてトレーナー選択の権利を譲渡されている。ルールの穴のようなものですが、ゲイシャ様が望まれ、双方に同意があるのであれば、ゲイシャ様をリク様のポケモンとして交代することが出来ます」
「ききっ!」

 うんうんとエイパムが頷いた。驚異の読解力だ。迷う。確かにこれ以上リーシャンを戦わせることは気が引ける。「例えば、ソラのポケモンを借りることは出来ないの?」「トレーナーとポケモンのペアとして登録済みですから、認められません」ソラが嘆息した。「それが出来れば、とっくに貸してる」「フィ」
 エイパムを信じていいものだろうか? リーシャンの事を好いているのならば、助けたいと思った事は納得出来る。同時にリーシャンを賭けろと迫ったことも忘れられない。逡巡する。ざわざわと観衆は他人事であるが故の見世物に、自分だったらこうすると損益のない想像を楽しんでいる。「その前に」腕を組んだソラが、剣呑な眼差しをエイパムと老婦人に向けた。

「ゲイシャと貴女は、知り合いなのでは?」

 老婦人が目を細めた。

「そうねぇ。私はよくここに来るから、常連同士が顔見知りでも不思議ではないでしょう」

 ニヤニヤと観衆も同調する。嫌な笑いに囲まれて、老婦人だけは少女のようなあどけない微笑みを浮かべていた。小さな花が腐臭漂うゴミ溜めで咲いているような、違和感。ソラも微笑んだ。

「手を組んでもおかしくないですね」
「ふふ、そんなに仲良しに見えるなんて、とっても嬉しいわ――ねぇ、ゲイシャ」

 エイパムは返事をしなかった。手札を見つめたまま、聞こえていないかのように頑なに反応しない。老婦人は蕩けるような慈愛に満ちた顔で、両手を合せた。

「質に入れた私の事を、許してくれるのね」
(「ゲイシャ様はボールマーカーを消すことを拒否されました」)

 リクが零れんばかりに目を見開いた。リーシャンも呆然と老婦人を見つめる。エイパムは手札を一心に見つめていた。問いを投げたソラはというと、若干、嫌悪に眉根を寄せたとはいえ平然として追求する。

「貴方の財力があればゲイシャを取り戻すことは出来たはずですが」
「ごめんなさいね、ツキネちゃんが許してくれなかったのよ。でも、ゲイシャはずぅっと私の事を待っていてくれたのね。嬉しいわ」
「何故質に入れたのですか?」
「後悔しているのよ。ゲイシャに悲しい思いをさせたわ」

 言葉は真実だろうか。嘘だろうか。ソラは冷徹な目で老婦人の物言いを聞いている。老婦人は本当に嘆いているように見えた。しかし彼にとって重要なのは、ゲイシャの反応≠セった。エイパムの反応いかんで確実に状況が変わる。ソラはエイパムとリクの間に起きた事件を知らなかったが、何らか事情があることは察していた。
 だがリクにとって重要なのは老婦人の言動≠フ方だった。エイパムの尻尾を掴む。老婦人に気を取られていたエイパムがぴゃっと飛び上がった。振り向く。炎が――黒の双眸に、灼けつくほどの炎が、爛々と盛っていた。その奥に、強ばった顔の小猿が映っている。

「今の話、本当か?」

 エイパムがサッと目を逸らした。それだけで十分だった。リクは顔を上げ、老婦人を睨んだ。彼女は、そよとの風も感じていないようだった。

「あんた、なんで質に入れたんだよ」

 以前にも似た問いかけを、した。怒りの片隅に浮かび上がってくる姿があった。艶然と微笑む少女、いや、少年が口元に弧を描く。

「ええ……悪いことをしたわ。軽蔑するでしょう?」(「もしかしてリクさん。あの時にようやくソラさんだって気がついたんですの?」)
「どうしてそんな事したんだ。オレは理由を訊いてるんだ、答えろ」
「そうねぇ。きっと、本当に切羽詰まっていたのね」(「そんなことありませんわ。だってその方が、よっぽど面白いですもの」)
「切羽詰まって……質に入れたのか……そうか……」
「でも嬉しいわ。ゲイシャが、こんな私を許してくれるっていうんだもの」(「それまでの人だったというだけでしょう?」)

 少年の全身を、逆巻く激情が駆け巡っている。許してくれて嬉しい、と? (でもそれで、傷ついた奴はどうなるんだ?)

「オレは許さない」

 きっぱりと告げた。彼女は悲しそうに目を伏せて、「そう」と言った。

「ゲイシャが許したって、誰が許したって、みんなが忘れたって、オレは、絶対に忘れるもんか。あんたがやったことを死ぬまで忘れない」

 いつか許してしまうかもしれない。いつか忘れてしまうかもしれない。瞬間瞬間の約束は、その時の感情でしかない。初めて人生をかけて許さないと誓った感情でも、時と共に意志に反して薄らいでいってしまうことをリクは知っていた。
 だとしても。掴んだ尻尾を離して、リクは唸るように言った。

「ゲイシャ、手札返せ。ゲームを続けるぞ」
「――き」

 かつてのトレーナーは何も言わない。エイパムは手札をリクに渡した。

「ゲイシャを、パートナーに指名します」





 お前がいいなら、それでいい。ソラの表情がそう語っていた。彼としては、いまだエイパムへの疑惑が払えないようだった。エイパムの事情は同情に値するが、迷いや不安につけこまれれば、寝返る可能性は十分にあると懸念していた。

「……残念だけど、仕方ないわね。ゲイシャが選んだことだもの」

 罪を許す聖母のような顔をして、老婦人はカードを持ち直した。ソラにはそれが全ての答えのような気がした――ゲーム再開だ。リクはリーシャンをキルリアに預け、まだ心残りがありそうな彼女の頭を撫でた。

「ごめん」
「リ」

 最後まで一緒に戦って欲しいと言っておきながら、結局また待たせる事になった。リーシャンは目を伏せ、身を揺らした。癒やしの鈴の音が響いた。リクはぽんぽんとリーシャンの頭を叩いて手を離した。信じている≠ニ、リーシャンに言われた気がした。
 最後にリクは1のカードを出した。手札はあと5枚。老婦人は3枚。ダウトを危惧していたが、彼女は宣言しなかった。警戒も十分かつ、体力気力ともに充実しているエイパムを相手に、様子を見たのだろう。

「2よ」

 カードを2枚伏せる。残りの手札3枚中、2枚が本当に同じカードとは考えにくいが、苦い失敗の記憶に躊躇ってしまう。(「うふふ。ちゃあんと、13を出したのよ」)老婦人はニコニコしている。

「きぃっ!」

 エイパムが鋭く鳴いた。だったら――。

「ダウト!」

 エイパムがスピードスターを放つ。ゴチミルの周囲に十数個の光球が出現するが、肉薄する流れ星の方が速い。衝突。撃墜しきれなかった星々がゴチミルの身を裂いた。ふつっと光球が弾けて消える。「あらあら」と言って、老婦人がカードをめくった。悔しそうなそぶりは一切ない。10が2枚。ダウトだ。

「ふふふ、バレちゃった。ね、リクちゃん。ドキドキした?」
「……どういう意味だよ」

 いたずらっ子のように彼女は両手で頬を挟んだ。内緒話をする女の子の顔をしていた。

「だってさっきとおんなじだったもの。私ねぇ、リクちゃんはダウトって言えるのかしらって思ってたのよ。ゲイシャも、スピードスターを使ってくれるなんて嬉しいわ。一緒にいたときによく使っていた技よね」
「っきき!」

 バシン! とエイパムが尻尾をテーブルに叩きつけ、途端に老婦人は悲しそうな顔になった。「ごめんなさいね、つい、懐かしくなって……駄目ね」リクが口を挟んだ。

「ゲイシャに話しかけんな」
「どうして?」
「絶対許さないっていっただろ。お前はゲイシャを質に入れたんだ」
「……そうねぇ」

 リクは真っ直ぐに老婦人を見据えていた。怒りが血管中を駆け巡っている。エイパムも睨みつけるが、微かに瞳が揺れていた。

「リクちゃんは何かを後悔した事ってない?」

 それこそ数え切れないほどに。それを言う義理はない、と口を閉ざす。ころころと彼女は笑った。穏やかに、孫に昔話を語る老婆のようでありながら、少女のような微笑みを見せる。

「この歳になると、後悔することばかり増えていくの。……でもねぇ、貴方も同じ。生きていると、後悔ばかりが募る。そうでしょう?」
「だからなんだっていうんだよ。許せって?」
「許されない事って辛い事だと思うわ。せっかくならまた笑い合いたいじゃない?」
「アンタがそれを言うのか?」
「寂しい老人の我儘。駄目かしら」

 唇を噛んだ。(その目を止めろ)許してしまいそうになる。(その言い方を止めろ)憐れだと思ってしまう。(その口を閉じろ)もういいと、言ってしまいそうになる。
 揺さぶってくる。寂しげな瞳は、いかにもそう′ゥえる。あるいはそう考えてしまうのは、(オレの考えがおかしいのか?)、こちらが狂っているからかもしれない。後悔している事なんてたくさんある。許されたいことなんて数え切れないほどある。ウミをあの場所に誘った、あの日から。

「2だ」

 リクが手札を出す。実際には、3を2枚、5を2枚と計4枚。隠すつもりすらない。これだけ堂々と、「ダウトと言ってくれ」と言わんばかりの伏せ札なら、老婦人は必ず攻撃してくる筈だと踏んでいた。(さぁ、正体を現せ!)どうせお前だって、許し欲しいと嘯きながら、本当はすぐに忘れ去っていって、そんなことがあったなんて忘れて、笑って日常へ帰るのだろう! ――仮面を剥ぎ取るつもりだったリクの目の前で、老婦人の瞳から透明な滴が静かに流れ落ちた。
 
「……そうねぇ。取り戻せないものは、きっとあるのね……そう……ごめんなさい」

 リクは顔を歪めた。(止めてくれ)許すな。そうでないと、どうしたらいいのかと途方に暮れてしまう。嘘だ嘘だと繰り返し唱えながらも、涙に心がざわつく。(許すな。許せばきっと、繰り返す)許してしまえば……最初の一回は、もっとも難しい。穴が空けば、そこから、広がっていくように。(二度と元には戻らない)自分の過去の罪を、決して。(許してはならない約束だ)
 だが、その涙に意味があるのならば、剥がそうとした仮面は偽物だったということだ。生身の顔面を引き剥がそうと躍起になっていたことになる。老婦人はダウトを宣言しなかった。手札の数は逆転する。リクが1枚。老婦人が3枚。追い詰めているのは、リクの方になる。(どうしてダウトを宣言しないんだ。状況が分かっていないはずがない。まだそのフリを続けるのか?)彼女という人格はふわりふわりと掴めずに、全てを受け入れてしまいそうになる。全ては許されてしかるべきだと、自身の誓いさえも置いていってしまいたくなる。

「私の番ね。どうしようかしら……ねぇディーラーさん。今の金額って、どんなもの?」
「ざっと1000万ちょっとですね」
「あら凄い。ツキネちゃんへの挑戦権にあと少しってところかしら」

 バッと顔を交換所の方へ向けた。(あと少し!)今のチップの金額、リーシャンの貯めていたチップにソラのチップを足せば、軽々と届く。あれほど遠いと思っていたツキネへの挑戦権に手が届く!

「リクちゃんはツキネちゃんに会って、その後ここを出て行くの?」
「当たり前だ」
「寂しいけど、仕方ないわねぇ。ゲイシャはやっぱり、一緒に連れていくのかしら」
「それは……」

 当たり前だ≠ニは、続けられなかった。エイパムはリクと一緒に戦ってくれているがそれは成り行きで、本当に望んでいるのか分からない。彼だってリーシャンを助けたい、守りたいという願いがあるから共闘しているのであり、それがなければ自分など好いてはいない。態度を見ればよく分かる。一度はトレーナーに売られたとあればなおさらだ。

「リーシャンを賭けろってゲイシャが迫ったって聞いて、まだ怒ってるんじゃないかって。私、心配していたのよ」

 その言葉は槍のように思考を切り裂き、突き立った。(……そうだ、こいつは)一度は、この老婦人と同じ事を迫ったのだ。トレーナーから容赦なく毟り取り、潰していく厄介なポケモンだともソラが言っていた。手放しで信頼できる相手ではない。
 仮に今は味方だとしても、いつまた老婦人とのゲームのように、裏切るともしれない相手だ。
 
「……許した訳じゃない」
「じゃあ置いていくの?」
「うるさいな、アンタに関係ない」
「ふふ。そうよね、リクちゃん。心配なんでしょう? ……一度でも敵対した相手を、信頼なんて出来ないわよねぇ」
「関係ないって言ってるだろ!」

 自身が考えていたことそのものズバリだった。心臓が跳ね上がり、そのような思考をしたことを責められているような気持ちになった。
 信頼。友情。愛情。それらがもう一度戻ってくることを願うなんて綺麗事だ。一度壊れたものは決して元には戻らないし、失われた信頼は返ってこないし、そうでないとまた傷ついてしまう。

「もしものお話をしましょうか」

 老婦人が微笑む。始まりと変わりない笑みで。

「リクちゃんが負けたら、私のものになる。そうしたらずっと、みんな一緒にいられるわ」
「シャン太は賭けないって言ってるだろ!」
「そうよ、賭けない――だから、着いてきてくれるのよ」

 賭けの対象じゃなかったとしても、傍に。リクがポケモンを売らないからこそ着いてきてくれる。
 言外の意味を理解し、絶句した。(悪魔だ)少女のような笑顔で、悪魔のような事を口にして、聖母のように涙を流す。仮面はくるくる変わる。考えていることが読めない。どれが本心か分からない。かき乱すだけこちらの気持ちをかき乱して、微笑むだけ。

「寂しいわね、ゲイシャ。……私も、貴方も」

 肌が粟立った。(さっきから、何を狙って……)閃くように目的が降ってきて、ようよう理解できた――ゲイシャだ! いつの間にか、逸らしていた視線をエイパムは老婦人に当てていた。穏やかな老婦人の瞳は親愛と悲嘆と母性とにゴテゴテに塗れていて胸焼けがするほどの愛情が籠もっている。末恐ろしくなるほどのそれから、エイパムは魅入られている。
 揺れる。揺れる。揺れる――迷う。

「悲しいけれど、ゲームを続けましょう……終わりの近いゲームを」

 老婦人が2枚手札を伏せた。本来であれば3が伏せられるはずだ。判断はつかないが、指摘する必要もないだろう。リクの手札は後1枚。次は、4。リクの手札は5が1枚。4ではないが、伏せた。

「ダウト」

 ゴチミルの周囲に十数個の光球が出現し、一拍後に光の矢が射出される。エイパムは何もしなかった。ハッと顔を上げたときには、無数の輝く光が身を貫き、もんどりを打ってテーブルから落下した。

「ッゲイシャ!?」

 席を立ち上がった。カジノテーブルから強制退去させられたエイパムは辛うじて意識を保っていたが、目を回している。抱え上げ、繰り返し名前を呼んだ。目が合った。大きな瞳に一瞬だけリクを映したが、逸らされる。「なんでお前、避けなかったんだよ!」答えない。

「そう。貴方もそうなのね、ゲイシャ」
「やめろ!」

 耳を塞ぎたくなる。悲鳴のように拒絶した。白いハンカチが囁く。(「なぁ、もう良いだろう。忘れてしまおう。許してしまおう。……許されないことが、自分で自分を許さない事が、辛い」)首を横に振る。(「許さない。許すな!!」)
 エイパムの目が老婦人へと張りついている。陽炎のような理想を映していた。(どっちが狂っている?)老婦人か、自分か? 分からないし分かりたくもない。どうしたらいい。勝たなくてはならない。自分自身も、エイパムも。
 老婦人の言葉は、許されたいという欲求を鏡のように映し出す。彼女は自分自身なのだろうか? だったらエイパムはウミなのだろうか? エイパムが老婦人を許すのであれば、自分もまた許されるのか?
 ――違う。首を振る。(関係ない)リクは老婦人ではない。エイパムもウミではない。だからエイパムが老婦人を許すか許さないかの話でしかない。本来、そこにリクが許さない≠ニいう感情は関係ない。振り払って見るべきものを。重なる影ではなく、今ここにいるエイパムを見つめる。(「寂しいわね、ゲイシャ……私も、貴方も」)

(「バトルは、ひとりぼっちではできません」)

 不意に思い出される。共に戦っている筈の自分もエイパムも、一人ずつでフィールドに立っていると思った。どう信じたら良いのか、リクには分からなかった。言葉が届くのかも、自分自身が裏切りへの恐怖を拭いきれるのかも。(ヒナタなら――)

(「オニキス!」)

 迷わずに、濃霧を切り裂くようにその名を喚んだ彼なら。

(「来い!」)

 どう言うだろう。

「ゲイシャ」

 ぐいっと、リクはエイパムの両頬を手のひらで挟んだ。エイパムの目がようやくリクを映した。
 
「今、オレと一緒に戦ってくれてるのは、お前だ。他の誰でもないんだ」

 一度は敵対した相手。それは自分だって同じ事だ。彼の理由がリーシャンを助ける為であったとしても、モンスターボールをトレーナーに預ける意味が分からないわけではない。――命を預けるのと同義だ。
 信じろ、と最後に叫んだヒナタを思い出す。暗闇で、サザンドラが咆哮した事を思い出す。あのステージで、タマザラシが小さな手で顔を引っ張ってみせた事を思い出す。
 自分に確信できるものなんて、ほんの僅かだと全部承知の上で、それでもリクは言葉を紡いだ。

「オレはお前を信じる。……オレを、信じてくれないか」

( 2021/02/14(日) 16:09 )