暗闇より


















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 カザアナタウン、ジムリーダー・キプカ。
 元々仲が悪いというか、結束力のあまりないラチナ地方のジムリーダー勢ではあったが、彼の結婚の知らせには脅威の結束力を見せた。以下コメント一部抜粋。
 「困ったことがあればいつでも相談するように」「本当に良いの?」「ほう。こんないい女もったいないなぁ」「……ふむ」「本気の本気の本気!? いやでもそうよね愛は正義……!」
 やってきてはキプカのゴーストポケモン達に追い出されを繰り返し、落ち着いてきた頃――キプカの奥さんが出産した。

「あー! あぅあ!」
「……オムツか」

 先日ようやく1歳の誕生日を迎えた息子、リマルカを降ろす。ゴーストポケモン達が我先にとオムツ交換の場所を準備しだした。昨日はゴースト、今日はヨノワール、明日はロトム。オムツ持ちなどリマルカの世話をメインでサポートするポケモンは、日ごとに担当が決まっている。ヨノワールはにこにことオムツを手渡し、リマルカをあやし始めた。

「……うぅ」
「ビブバ?」
「あー!!!!!!」
「ビヴァ!?」

 リマルカが泣き出し、おたおたとするヨノワール。テキパキとキプカはオムツを交換している。「……落ち着け」「ビバー!!」ヨノワールも泣き出した。
 
「だから……落ち着けと……」

 お前は顔が怖いだの声がでかかったからだの他のゴーストポケモン達が罵る。その後ろから、ジュペッタがリマルカに近づいた。「きー」「……あぅ?」

「ききー」
「あうあ」

 リマルカが泣き止んだ。「……よし、いいぞ」オムツ交換を終えたキプカが服のボタンを閉じ、抱き上げる。

「あうあ! あう!」
「……ジュペッタ」
「き?」
「ご指名だ」

 しきりにジュペッタに手を伸ばすリマルカ。他のゴーストポケモン達が振り返った。嫉妬の視線をひしひしと感じつつも、ジュペッタはリマルカの手を握った。

「あうあ!」

 ――それ以来、リマルカのお気に入りはジュペッタである。

( 2021/09/18(土) 23:29 )