暗闇より


















小説トップ
91〜100
93.バスボール
 バトルアイドル大会参加者には個室が与えられる。部屋に風呂も備えつけで、どっと疲れたリクは浴槽にお湯を溜めて浸かることにした。「はぁ……」本当に色々あった。疲れが湯に溶けていくようだ。

「……ふーん」

 やたらと数の多いアニメティを眺める。丸い浴槽の傍らには多種多様な入浴剤が所狭しと並び、中にはバスボールの中にはポケモンフィギュア1個入り!≠ニ書かれたものもある。シークレットを含めて全10種類のようだが、ここには3つしか置いていない。壁際の棚ではシャンプーだのリンスだのヘアオイルだのトリートメントだのボディソープだの香りの良い石鹸だの洗顔ソープだのが私よ私と主張している。そういえば洗面所も、鏡が開く形式だったのでパカッと開いて裏側を覗き込んでみたが、数え切れない種類の化粧品が置いてあった。しかもご希望の商品があればスタッフまで≠ニ案内文まで。ここまでたくさん置いてあって足りないものなどあるのか? (同時刻、別の部屋でユキノがスタッフに「スノードロップ社のナイトケアセット置いてませんの?」と尋ねていた)
 それら全てをうっちゃって、リクは入浴剤で遊んだ。バスボールをひとつ溶かしてみる。しゅわしゅわと溶けるに従って片耳が出てきて体が出てきて……「プラスルか!」片耳にリボンを結んだプラスルのフィギュアが出てきた。どうせ好きに使って良いのだ。もう一つ溶かしてみた。今度は反対側にリボンをつけたマイナンが出てきた。3つ目のバスボールは何が出るのだろう。手のひらの中で溶かしてみると、ムキムキの片腕が出てきた。
 リクは反射的に湯に沈めたが、しばらくして、アイドルキングのフィギュアが浮かんできた。

「……シークレット、か?」

 無言でバスタブの端っこに、3体とも壁の方を向かせて置いた。

( 2021/09/17(金) 23:58 )