暗闇より


















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81〜90
83.頼れるお兄ちゃん
 ラチナ地方マシロタウンを旅立って、数ヶ月が経過した。手にしたバッジと仲間も増え、ついでに荷物も増えたヒナタは里帰りに町に寄っていた。荷物を実家の部屋に適当に放り込み、かつて自分がリーダーとして率いた子供達の元へ顔を出した矢先、くいくいと服を引っ張る小さな腕。「ん?」振り返ると、決意の眼差しの女の子が、頭にスバメを乗せて立っていた。

「……えーっと……そう……ここまで……名前が……よし、待て! あと少しで思い出す!」
「ツバクロだよ、ヒナタお兄ちゃん」
「そうそれ! 元気だったか?」

 あきれ顔で女の子――ツバクロは頷いた。ツバクロはマシロレンジャー(マシロの平和を守る活動を主にする子供達の事である。加入条件は勇気があること。以上)のメンバーの一人の妹である。頭上のスバメを見て、「まだ捕まえたばっかりか?」と問いかける。ツバクロは頷き、事情を話した。
 スバメは2ヶ月ほど前、オニドリルに襲われているのを助けてから一緒にいるらしい。ヒナタへの相談とは、スバメがオニドリルにリベンジするために、ポケモンバトルのやり方を教えて欲しいというものだった。スバメはやる気満々だが、ツバクロは妙に落ち着かない様子だ。ピンときたヒナタは、スバメを飛び立たせて問いかけた。
 
「スバメが怪我するのが心配か?」

 ツバクロが、ぎゅっと拳を握る。「そうか。だったら――」俺に任せろ、と言いかけたヒナタを遮り、ツバクロが言った。

「……でも、スーちゃんがまた飛びたいなら、一緒に戦いたい」

 ヒナタは目を見開き、にかっと笑った。ツバクロの頭をかき回す。「よし!! なら特訓だ!! 任せろ!!」スバメに負けないくらいのやる気を見せたヒナタに、ツバクロはぺこっと頭を下げた。その頭にスバメが降り立つ。気合い十分の眼孔でヒナタを見据えた。

「よ――よろしくお願いします!」
「ぴょろろ!」

( 2021/09/17(金) 23:30 )