暗闇より


















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71〜80
77.綿飴
「じゃーん!」
「……なんなのですかこれ」
「綿飴メーカーだ!!」
「サニー!」

 ゴートシティ・スカイハイ。最上階の主は今日も睡眠タイム――と思いきや、珍しく起床している時間帯であった。起き抜け一番で「ヒナタ様がお待ちです」と部下から報告。5秒と待たずして飛び込んできた男は、サニーゴと共に輝く瞳で綿飴メーカーを見せてきた。しげしげと眺めるツキネのそばで、サニーゴが砂糖袋を頭に乗せてわくわくしている。

「作れと?」
「そう! 露天で売ってんの見たら懐かしくなってさぁ〜! 作ろうぜ!」
「仕事は?」

 ヒナタがざーっと砂糖を入れ、電源をつけた。「逃げた訳じゃない。これは――息抜きだ!!」「サニー!」サニーゴが頷いた。真面目なサニーゴが同意してるということは、本当に根を詰めていたのだろう。ツキネがくいっと指を動かす。綿飴メーカーが高速で回転し出した。「ま、今回は付き合ってやるのですよ」
 綿飴メーカーからもこもこと綿飴が生成され、急速に大きさを増していく。初めて作ったのは、自分もヒナタも9歳の時だったか――綿飴が大きくなるにつれ、砂糖がどんどん消費されていく。あの時は調子に乗って屋敷中の砂糖を使い切り、巨大綿飴が外へと飛び出した。エスパー能力で部屋の窓を全て開け放つと、窓から綿飴が広がっていく。それにつられてツキネもわくわくしてきた。「ヒナタ、砂糖はまだあるのですか?」「もちろんだ!」「サニー!」大きな綿飴が入道雲のように空へと浮き上がっていく。もっともっと大きく――

「ツキネ様」

 部下が部屋に入ってきた。二人とサニーゴが振り返る。「やはりお二人でしたか」「どうしたのです?」ツキネの顔を見て、部下は顎に手を当てた。鉄面皮が珍しく、一瞬だけ相好を崩す。
 
「――追加の砂糖をお持ちしましょう」

 後日。新聞記事の一面を、スカイハイを覆う巨大な綿飴の写真が占拠した。

■筆者メッセージ
800文字100日ノックも終わりが見えてきました。長かった〜……
終わったらシャンパンタワーでも準備しようと思います。
( 2021/08/08(日) 11:20 )