71.わくわく☆クッキング
「ポフィン作ろう!」
大量のきのみを手に、コダチが言い出したのが始まりだった。
暇そうなレンジャー勢で厨房に集まる。本来は小鍋で少量ずつ作っていくのだが、「そんなに味も変わらんだろ」という雑な意見が採用され、大鍋を火にかける。
事件は、かき混ぜ始めて10分が経過した頃に発生した。
「ッうぁち!」
「先輩!!」
「あつあつあつあつ!! はっ跳ねた!!」
鍋をかき混ぜていたレンジャーが木べらを放り出し、慌てて水道へ走った。「まったく情けないわね」女性レンジャーが木べらを代わりにかき混ぜ始める。
ボッ! と激しい音と共に、液体が顔面に跳ねた。
「あっづあああああアアアアアア!! パス!!」
「はぇ!?」
顔面を抑えて走り去っていった女性レンジャーを、コダチは木べらを持ってぽかんと見送った。「コダチ、混ぜないと」「あ、う、うん!!」ずぶ、と重たい液体をかき混ぜる。地獄のような熱気が立ち上り、ぼごん! と液体が跳ねた。慌てて回避するが、弾丸のように液体が次々跳ねて襲いかかる。「まだ火から降ろしたら駄目!?」別の女性レンジャーが神妙な顔で答える。「まだね」「ひぇええ!」半泣きでかき混ぜつつ、驚異的反射神経で跳ねる液体を避け続ける。遠巻きにレンジャー達がおお……、と感嘆する。
と、そこへ、厨房の外からツカツカと規則的で力強い靴音が近づく。コダチもレンジャー達も、どんどん危険度が上がっていくポフィンの鍋を注視していて気がつかない。靴音が止まり、ドアノブが回った瞬間、とうとうコダチの腕に跳ねた液体がぶつかった。
「う――あっついよおおおおおおおお!!!」
ぶん、と勢いよく放り出された木べらが放物線を描き、入ってきた人物を直撃しかけ――寸前で叩き落とされる。レンジャー達が真っ青な顔で、「リ、リーダー……」と震え声を上げた瞬間、
「――コダチ!!!!!!」
凄まじい怒号が、レンジャー施設に響き渡った。