67.水葬
おじいちゃんが死にました。
「ジムリーダーの手を決して離しては駄目よ。きちんと言うことを聞くのよ。分かった?」
「はい」
お母さんが何度も何度も、わたしに言いました。おじいちゃんは生きている間から、わたしに見送って欲しいと言っていました。「お爺ちゃんの事好きか? ……なら、必ず見送っておくれ」おじいちゃんは しわくちゃの手で わたしの手をにぎって、くり返し言いました。わたしは、いいよと言いました。そうして、おじいちゃんが死んで、ゆいごん にも きちんと書いてありました。ジムリーダーも、おじいちゃんに話は聞いている、と言っていました。
わたしは、ジムリーダーはあまり好きではありません。せなかが すごく曲がっていて、あんまり笑いません。変な声で話すから、こわいです。おじいちゃんのお見送りに、お母さんはついてきてくれません。それを知って、わたしはおじいちゃんのお見送りをしたくないな、と思いました。いやだ と言いましたが、しきたり だから しょうがないの、と言われました。お見送りする人はジムリーダーの他に、一人だけしか入っちゃいけないんだそうです。
「……そら、行くぞ」
ジムリーダーと手をつないで、反対のお母さんの手がはなれると、すごく心細くなりました。ヤミラミ達がおじいちゃんを かついで、しめ縄をくぐります。ジムリーダーといっしょに、しめ縄をくぐりました。ヒトモシが案内してくれるので、それを目印に進みます。
「……どうしてお前だったと思う」
ジムリーダーが言いました。ちゃんとお話ししたのは初めてです。分かんない、と答えました。
「お前が一番、幼いからだ」
わたしは、おじいちゃんが よく、覚えていておくれ、と言っていたのを思い出しました。おじいちゃんは、死んじゃうまで言っていました。
――でも、どんな声で言っていたか、もう思い出せません。