66.ポケモントレーナーファンクラブ
どのポケモントレーナーが最強か。それはポケモンバトルを行うものならば、一度は考えることだ。ここポケモントレーナーファンクラブでは、日夜激しい議論が行われている。
――というのは建前で、実態は好きなポケモントレーナーについてのお喋り場である。
「私はなんといっても、ムロのトウキ様が好き!」
若い女性が瞳を輝かせて言った。「ハリテヤマの気合いパンチの威力ったら! 痺れる〜!!」隣に座っている親父が頷く。「あれは見事だ。だがわしは、ナギさんのチルタリスが一番だと思う。紙一重で鋼の翼を避けた後、袈裟懸けのようなツバメ返し! 忘れられない一瞬の美技だ!」
「ちょっと待ちたまえ! 美技とは聞き捨てならないね!」
青年が首を突っ込んだ。「美技といえばミクリさんだろう! ミロカロスの水の波動を見たことがないのか!?」親父がハハハと笑って返す。「見たことはあるけど、やっぱりわしはナギさんの方が……」「はぁ〜あの美しさを理解出来ないとは……」困った親父は矛先を別の方へ投げた。「リク君、君はどのトレーナーが一番だと思う?」
「オレ?」
リクは、クッキーを食べる手を止めた。膝の上ではアチャモがお昼寝している。
「センリさん!」
「ほう」と親父が顎を撫で、青年が「センリぃ?」と顔を顰めた。
「センリなんて最近来たばっかりのジムリーダーだろ。どこがいいんだか……」
「昨日のテレビ見てないのか? ジム戦やってて、すっげぇ強かったんだぞ!」
べー、とリクが青年に舌を出した。女性が「これから楽しみな人よね〜」と同意する。
「こっちが落ち着いたら、ご家族をジョウトから呼ぶんですってね」
「子供もいるらしいんだ。同い年だと良いなぁ!」
ポンポンと膝上のアチャモを撫でた。女性がくすくす笑う。
「君はそれより、お友達のリーシャンに勝たないとね〜」
「う゛っ」