63.気になる子・裏
俺とニューラのバイト先、ポケモンカッフェ。他にも似たような喫茶店はちらほらあったが、ここが一番店員のレベルが高かったのがバイトの決め手だ。特に看板張ってるミミロップがトップクラスに強い。トレーナーはバトルアイドルを目指しているらしく、ちょこちょこバトルの練習に付き合ってくれる。
ムカつくことに毎度負ける。
「あらら〜ごめんネ。次があるよ駆け出しちゃん♪」
「ブッコロス」
「目がこわぁ〜い!」
まったくもって怖いと思っていない顔で、ブロンドは高さがエグいハイヒールでステップを踏む。ポケモンもヤバいが、トレーナーもヤバい。
だがいつもこちらを追いかけてくる視線は――自信からほど遠い。今日も今日とて視線を感じ、なんとも言えない気持ちになった。相手は分かっているので振り向くと、真っ赤になって目を逸らした。歳は同じくらいで、背は低く、綿飴のような髪の奴だ。
「わたくしに、何かご用ですの?」
「……ゆっ……ゆきのくんは……いつも自信満々で……凄いなって……思って……見てました……」
「貴女はいつも、自信がなさそうですわよね」
「うっ……うぅ……」
ふるふると肩を震わせ、綿飴は真っ赤な顔で下を向いた。トレーナーの背後から、パートナーのボスゴドラがこちらを睨みつけた。磨き抜かれた装甲をメイド服に押し込み、二対の角にはリボンがかかっている。だが瞳は、武士かよ、と思うくらいに鋭い。
ブロンドが、ぽつりと言った言葉を思い出した。
――綿飴ちゃんは本番に弱いんだよね〜。ほんとはミミちゃんの次に強いのに〜。
トレーナーの不安はポケモンに予想以上に影響する。ポケモンが強いだけでは、ポケモンバトル≠ノ勝てない。
「……可愛いんだから、自信を持った方がいいですわよ」
埋もれる才能をもったいないとは思いたくないが(それだけライバルが減れば万々歳だ)、なんとはなしに言い捨て、踵を返した。