58.モテモテ3
下卑たヤジにアルコール、煙草の臭いにチップにカードが踊る音。
目が覚めたらカジノで天井から吊されていた。
「また夢か……」
がっくしと肩を落とす。今度は誰が出てくるのか。胡乱な目で見下ろした。眼下のカジノテーブルの両端で、リーシャンとエイパムがそれぞれチップを積んでいる。
「リクは渡さないわ!」
「君もろとも頂くとしよう、レディ」
「なんでお前ら喋ってるんだよ」
冷静な突っ込みを入れるが誰も聞いちゃいない。リクの背中に、ドカッと何か落ちてきた。「重っ!?」「お助けするー」目をパチクリさせたリクの肩に、見覚えのある球体ボディがよじ登る。「タマザラシ?」「うんしょ、うんしょ……とれない……」タマザラシが紐を解こうと四苦八苦する。
「無理するなよ、その手じゃ無理だ」
「じゃあでっかくなる!」
「えっ」
むくむくと大きくなり、トドクラーへと進化した。「え嘘重……ッ!?」吊るし紐がブチンと切れ、テーブルへと一直線に落下する。「わー!」「嘘だろぉおおおおおおおおお!?」分かっていても目をつむってしまう。夢で目を瞑るというのも変な話だが――そっと目を開いた。
リクは、波打ち際にずぶ濡れで座り込んでいた。
「なん……へくしっ!」
「ちゃもっ!」
元気よくアチャモが駆け寄ってきて、炎を噴きだした。影が差す。視線をあげると、ハンカチが差し出された。
「顔拭きなよ」
◆
「リクちゃん」
コダチに揺り起こされ、目を覚ました。「カザアナに着いたよ」トラックの揺れは収まっていた。
「良い夢見れた?」
「夢?」
何かたくさん見たような気がしたが――霞がかったように思い出せない。そのうちにトラックの出入口からソラが呼んだので、リクは立ち上がった。コダチが笑って言う。「リクちゃん、ニコニコしてたよ」
「良い夢だったのかな」
「きっとそうだよ。ね、シャン太ちゃん」
「リ」