暗闇より


















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41〜50
42.駄菓子
 金茶の髪の少女――ツキネとダンバルは、ほぉ〜という顔で並べられた駄菓子を眺めた。
 花柄のテーブルクロスの上には、ヒナタが持ってきた駄菓子がごちゃごちゃと載せられている。ふ菓子、蒲焼きもどき、スナック、チーズあられ、ラムネ、フ−センガム、キャラメル、ポケモンビスケット、グミ、粉末ジュースなど。とりあえず駄菓子屋で売ってるものを片っ端から買ってきてみました、という感じである。ツキネは面白そうに駄菓子を手に取り、水に溶けていく粉末ジュースの泡を見つめた。

「どういう原理なのです?」
「分かんね」
「このカツっぽい何かはなんなのです?」
「カツだ」
「……衣だけで意味はあるのですか?」
「身もちゃんとあるぞ!」

 磨き抜かれたナイフで、ヒナタがカツもどきを解体した。向こう側が透けてみえる魚のすり身に、ツキネはなんとも言えない顔をした。「俺は好きだけど」ヒナタが口にすると、ツキネも習った。食べ終わると「濃い……」と呟く。

「サニサニ!」

 ポケモンビスケットから、サニーゴがメタングを手にとった。「ギギギ」メタングの赤い目が光り、サニーゴのビスケットが浮かび上がる。

「よく出来ているのですね」
「全種類いるって噂だぜ!」
「……確か800種類以上いなかったのですか?」

 ビスケットを並べてみた。リーシャン、マリルリ、タマザラシ、ムシャーナ、エイパム……一袋に全部はいない。

「知らないポケモンもいるなー」
「見た目だけじゃなくて、バターが利いていて悪くないのです」
「だろ!? おっこいつは――えっと」

 ヒナタが6枚の羽根のポケモンを手にとり、ツキネがチラリと見た。「サザンドラなのですね」「そう! それ!」

「動くもの全てを敵と見なし、倒れるまで攻撃の手を止めないポケモン……らしいのです」
「こ、こえええ!」
「トレーナー次第だと思うのですがね」

 ヒナタの手からビスケットを浮かばせ、ツキネは口に放り込んだ。


( 2021/07/04(日) 18:47 )