47.武者修行(?)
『らぶらぶっ☆ポケモンカッフェへようこそ!』
木目を基調とした店内は木漏れ日のような温かさがあるが――穏やかとはほど遠い賑やかさに満ちていた。
「ニューラくーん!! 今日も可愛いよぉ〜!」「ミミロップちゃん毛艶がピカピカ!」「ぽっけぽっけらぶきゅんっ!」「はぁ〜磨き抜かれたかぎ爪が素敵……はぅっ!」「お尻のぽんぽんこっち向けて〜!」
黙々と、メイド服のニューラが飲み物を運んでいた。シンプルかつタイトなエプロンスカート。お揃いのメイド服を着たユキノが耳打ちした。
「顔がカタい」
「……ニャ」
「ステージも同じですわよ――あれをご覧なさい」
同じホールのミミロップとそのトレーナーを示した。ミミロップはふわっとしたフリル多めのエプロンスカートに、白のヘッドドレス。トレーナーは長いブロンドの少女で、同じく揃いのメイド服を着ていた。
『バトルアイドル大会に出るなら、メイド喫茶で一度は働くべきさ!』という誘い文句に興味を惹かれ、ユキノ達は短期アルバイトとして働いていた。着慣れない服での動作、一挙一動が注目を受けているという緊張感――先輩の中にはプロのバトルアイドルもおり、時折バトルもしてくれる。先日の大会で敗れたばかりの二人には、いい勉強場所だった。
ミミロップの所作は優雅で完璧だ。こちらを鼻で笑う姿さえ気品がある。ユキノは笑顔で青筋を立てた。目敏いブロンドが気づき、笑顔で手を軽く振ってくる。ブロンドはユキノの4つ年上で、本職のバトルアイドルだけあって、いまだに勝てていない。
「だいじょうぶ〜? ユキノちゃん」
「なんでもありませんわ、お姉様」
「そぉーお? 頑張ってね、駆け出しさん♪」
火花が散った。「おい。今日こそアイツ負かすぞ」ユキノが笑顔のまま青筋を増やし、了解、とニューラが鳴いた。