36.自販機
ミナモデパートの屋上には自販機が設置されている。リクがいつも買うのはサイコソーダ。奮発するとミックスオレ。おいしい水はたまに。初めて見る自販機の周りをチョロチョロするアチャモを横目に、サイコソーダを開けた。「お前、サイコソーダ飲めるか?」「ちゃも?」サイコソーダが飲めない、炭酸が苦手な固体もいる。試しに、と水入れを鞄から取り出し、サイコソーダを注ぐ。しゅわしゅわと炭酸が上がってくる水入れに、アチャモが嘴を突っ込んだ。ペットボトルに残ったサイコソーダにリクも口をつける。嘴にサイコソーダを溜め、アチャモが上を向く。ゴクッと飲み込んだ直後、飛び上がった。
「ちゃ……ちゃぼっほちゃばほはば!!」
「うわちょっ!! えっ!!??」
サイコソーダを放り出し、アチャモを抱えあげる。もう飲み込んでしまったようで、アチャモはゲホゲホとむせていた。涙目でリクを見返す。「ちゃぼっ……ちゃもちゃも!!」
「あー……お前、炭酸苦手かぁ……」
アチャモはブルブルと震えながら、気泡が出ている水入れを見ている。落ち着いた頃合いでアチャモを下ろし、放り出したサイコソーダを片付ける。涙目で落ち込んでいるアチャモに、うーん、とリクは自販機を睨み、お金を入れた。
「――これはどうだ」
「ちゃも?」
「ミックスオレ。炭酸は入ってないよ」
サイコソーダを捨て、水入れに注ぐ。怖々と嘴をつけたアチャモだったが、飲み込むとキラッと目を輝かせた。「ちゃもー!」機嫌が直ったようだ。リクはほっと胸をなで下ろした。
――というのが、1ヶ月前の事。
「ちゃもちゃもちゃも!」
「だーかーらぁ!! 毎日は駄目だ!」
自販機を見るたびに、アチャモはミックスオレに熱い視線を送るようになっていた。
今日もリクは、ミックスオレを要求するアチャモと格闘する。
「駄目なもんは駄目!」
「ちゃもちゃも!!」