34.課題図書
父が出した宿題は、1週間以内に課題図書の要約文を提出すること。頭に入っているのかいないのかも分からない状態で、繰り返し読む。提出期限は明後日に迫っていた。関連書籍を参照しながら、ウミは鉛筆を走らせた。なんとか文章をまとめる作業を行いながら、内容を何度も何度も確認する。
「リ」
ブツブツと呟きながらページをめくっていると、リーシャンが時計を持ってきた。午前0時。もう寝た方が良い、と言いたいのだろう。「ごめん、先に寝てて」「リリリ!」リーシャンが自分も起きている、と耳をぴんと持ち上げた。だが小さな瞳はいかにも眠そうだ。その頭を軽く撫で、ウミはもう一度言った。「もう少ししたら僕も寝るから、大丈夫だよ」「リー……」目を伏せ、リーシャンはふよふよとベッドまで飛んでいく。それを見送り、机に向かい直した。
――それからしばらくして、ウミは目を覚ました。
「え……あ、寝て……っ」
慌てて体を起こし、机上の時計を見る。するりと肩から毛布が滑り落ちた。午前5時。「つづ……っ続き……」そこで、はた、と気がつく。
机上でリーシャンが、本を開いたまま眠っていた。参考書籍はいくつも開いたままで、散らばったルーズリーフに、図解、らしきものが描いてある。数枚に渡っているそれを手に取った。(……ポケモンは、字が書けない)図解から、なんとなく言いたいことが分かるような気がした。
ウミが起きた気配に気がつき、リーシャンも目を覚ました。慌てて周囲を見渡し、ウミとばっちり目が合う。手にしているルーズリーフへと視線が移った。心配そうに、小さな瞳が揺れる。
「……あと少しだ。一緒にやろうか、シャン太」
困ったように笑うと、リーシャンがぱっと顔を明るくした。